表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

4.主人公は改変する。

「···っ!!!」

パチッと目が開いた。ガバッと跳ね起きるようにベッドを起きると、辺りはいつもの部屋だった。背中は熱くないし、痛くもない。

「···ゆ、夢か。···いや、うん、そりゃそうだよな」

(···めっちゃ綺麗で、びっくりした。夢···夢だよな?あんなに生々しい夢ってどうなんだよ)

「はぁ···。」

でも、リディア様に火傷の跡が残らなくてよかった。

しかしせっかくなら、もっと話ができる救い方はなかったのだろうか。彼女を庇って気絶してそのままって。しかもあれじゃあ、あの後彼女がどうなったか分からないじゃないか。

そんなことを考えて、夢なんだから考えても仕方がないかと溜息を付いた。

その時、ふとスマホがメールの存在を知らせていた。なんだろうと思いメールを開くと、「魅了魔法にかけられた私生児の彼女は、王太子に溺愛される」の作者からの返信のメールだった。

「···え、返信!?なんで?」


『イラストを送っていただき、ありがとうございます。サイトに掲載させていただいてもよろしいでしょうか?リネットではなくリディアを好きだと言っていただいたのは初めてなのでとても驚きました。』


「初めて···」

なんだか、その言葉に違和感を覚えた。これだけたくさんの人が見ているのだから自分以外にもリディアが推しだと言う人が一人ぐらいいてもおかしくないだろうに。

(いやまぁ、いても単に言わないだけっていう可能性もあるけどさ) 

勿論大丈夫です、と返信をして再びサイトを覗いて小説を見ると、エピローグのところが本日付けで修正されていることに気が付いた。

なんの気無しにその部分を読んでみると、俺の目は点になった。 


「···えっ!?」


小説の内容が、まったく違うものになっていたからだ。

エマというメイドが転んで、リディアに熱湯をかけたというところまでは同じだったのだが、そのリディアを飛び込んできた執事が守ったと書かれている。当然そのメイドはクビになり、拷問にかけられてーリディアは自分を守った執事を側に起き、今は回復を待っていると書かれていて、オークションに行ったとは書かれていないのだ。

「なんで···?」

さっき見た夢と、まったく同じ内容になっている。理由なんて分からない。分からない、が。 

「これ···上手くすれば、リディア様を救える···?」

少なくとも、自分を庇ってぶっ倒れた執事を放置してオークションに行くような人ではなかったようだ。だとすれば今、あちらの世界はどうなっているのだろう?

彼女がオークションに行かなかったのだとすれば、そもそもあの宝石を誰が競り落としたかなんて分からないはずだ。が、問題は次の日だ。わざわざ屋敷まできて、リネットに渡すバカ王子を見てしまえばやっぱり魅了魔法をかけてしまうかもしれない。

(背中に火傷までしたのに結局何も変わらないのはちょっと!!)

あと何か使える情報は無かったか。必死に考えて思い出したのは、あのバカ王子が競り落としたくっそ高い宝石は偽物だったということだった。 


(あれがイミテーションって分かれば、少しは違ってくる···か?)


確かリネットに、「この宝石は偽物だったのですね。私に対する気持ちも偽物だったということですか」とバカ王子に魔法を使って言わせたのがリディア様だったはずだ。

たしかあの宝石が偽物だと知ったとき、少しだけほっとしたんじゃなかったっけ?もしもそれで怒りが静まって、魔法をリネットにかけなければ、話の前提が変わってくる···はず?


「もう一度、リディア様に会いに行かないと」


だが、どうやって?自分は何を意味不明な事を言っているのだろう。自分はおかしくなってしまったのだろうか。変にリアルな夢をみたせいで、こんな馬鹿な事を考えてしまっているのだろうか?

ありえない。こんなのはおかしい。わかってはいるが、実際に小説が変わっているのだから信じるしかないだろう。


「待ってて下さい、リディア様」


今、何としてでもあなたの事を助けに行きますから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ