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8話 正しく使う

 結局あれよあれよと言っているうちにギルドの修繕が終わった。

 掛かった日数は3日、費用は最初に行っていた通りの10万ゲルドで済んだ。もう少し人件費や材料費で嵩むと思っていたのだが『お前が気に入った』との一言で、きっちりと此方が提示した予算で完璧に仕上げてくれた。そのうえで何かあれば呼んでくれと、豪快に笑いながら仕事を終えた。


「サービス精神なのか、ただの気まぐれなのか……どちらにせよ助かりました」


 ギルドの広間にある丸テーブルの一つに座り、現状の予算を改めて確認する。元手の50万は現時点では約35万残っている。ここから更に傷んだ家具等を入れ替えと本格的な掃除をして、漸く運営開始……なのだが、勝手に事業を始めて良い物なのだろうか?現代だって勝手に商売をしていたら普通に法に触れるわけだし、勝手にこういう事をするのはまずいのではなかろうか。


「……勝手にギルドの運営と言うのは出来るのですか?」

「運営権に関しては、父……国王から頂いております」

「此方に」


 セバスチャンが懐から一枚の羊皮紙を取り出すと、それを渡してくる。が、思い切り現地語なので何が書いてあるかわからないので翻訳してもらう。……かいつまんで言えば、此処のギルドを運営する権利を一任するというもので、しっかりとした商業権利、さらに言えばギルド周辺の土地の権利も保有している。幾ら野に放ったとはいえ、余計な争いが起きるのはやはり悪手になるだろうから、きっちりと対策していたという事だろう。


「流石にこの手の権利関係はしっかりと持っていたと言う事ですね……王位継承にかこつけて国の安定化でも図ってるのでしょうね」


 この手の事は利権関係が面倒になるだろうけど、こういうのは全部一番上の国王が持っていたりするからあまり考えなくても良いか?何かしら問題が起きた時にはそちらの方を頼るって事になる……と、思うが、どうもそんな簡単にはいかないだろうし、そこの問題は自分で解決しろ。そんな風に言われる気がする。


「そうなのですか?」

「責任についてはそれぞれ運営をしている人物や組織に丸投げ、国王は自分の子が育ち、国力も増強……失敗しても自分は何も痛くないし、優秀な子だけが残る」

「……そこまで、考えていませんでした」

「気にする必要もないかと、私がただただ気にする性質ですから」


 次にやる事を確かめながらボードに据えた紙にあれこれいつものように書き込みを続ける。持っていたA4紙もあまり数がないのでそろそろ大切に使っていきたい所、ノートはあるがあれはあれで管理したいので使えない、本当にタブレットとノートが此処まで貴重なものになるとは。


「さて、ギルドの修繕も終わり、ドワーフ達に手伝ってもらい掃除と不用品の撤去も終わり……足りない家具等を買いに行ってきます」

「私たちは?」

「この間のチンピラ騒ぎもあります、ローザリンデとセバスチャンは引き続きギルドの清掃と点検、ギルド周辺の状況を事細か調べてください」


 そういうと二人揃って分かりましたと言うので、早速とばかりにギルドを出て買い物へ、この三日程でこの国の地理は調べ教えてもらい何があるかを把握した。中々に広く大変ではあったが、いずれ必要になる事。


「さて、必要なものはと……」


 ボードに書いてある必要なものを見ながら目的の家具屋、正確には木工職人の所にだがそちらに行く……途中。



「お、この間の姉ちゃんじゃねえか」

「会った記憶はありませんので」


 いつか出会ったチンピラ連中、それが私の目の前を塞ぐ。全く持って理解に苦しむ。何故無駄なことに時間と労力を割くのか。これだから非効率で非合理的な相手をするのは好きじゃない。


「なあ、いいじゃないか、ちょっと付き合ってくれよ」

「私の時間の邪魔をしないのであればどうぞご自由に」


 そういいながら横に反れ、目的地に行こうとしたところをまた回り込んでくる。


「邪魔ですね」

「そんなこと言わずさ」


 目の前にいるチンピラ共、何度も私の前に塞がってくるのだが、周りは全く持って我関せずと言った感じにこちらを見てくる。


「……どけ」


 ボードに向けていた目線を相手に向けながらぎろっと見つめる。

 冷たく鋭い目線にたじろいだチンピラだが、すぐに立ち直りぱっと此方の手を掴む。それを振り払うと、顎のあたりを掠める。と、同時にかくんとチンピラの一人が倒れる。


「……おや、だいぶ貧弱のようで」

「おい!何をやったんだ!」

「脳震盪ごときで喚かないでほしいですね」


 自分が思っている以上に力が付いている?何かしら特殊な事じゃなくて肉体的に強くなってるのは……。


「想像とは違います」


 ため息を吐き、倒れたチンピラの周りにいるほかの有象無象を睨みつける。

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