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2話 ざっくりとした事業計画

 大きめの家、この場合屋敷と言うのが正しいのでしょうか。大通りから1本中に入った所にあるこの屋敷、入り口を一つ抜ければ、大きい広間に丸いテーブルが何個かそれに合わせて椅子がある。その奥にはカウンター、更には二階に上がれる階段が目に入る。


「思っている以上に酷い有様で」


 鞄の中からハンカチを取り出して口に当てつつ、テーブルに指を這わせてみるとしっかりと埃を拭った跡が付く。しっかりとした仕事は整理整頓、そして清潔な職場じゃないと出来ないというのに、人がいないからと言って掃除すらも諦めたと言う事なのが伺い知れる。


「よくもまあ、此処まで放置しておいて助けてほしいとは、身の程知らずと言うか、一周回って愚かですね。こんなボロ小屋から立て直すなんて合理的ではありませんね」


 手に付いた埃を払い、床や壁、天井を隅々まで見ながら一番マシであろう椅子に座る……のも憚られる。とりあえずと言い、二階へと上がり、そちらの部屋も確認する。一度踏むたびに嫌に軋む音がするので、これも直さないといけないポイント。二階に上がれば数部屋あり、その中で一番まともなのが執務室と思える。現状では此処で事務仕事なんてしようとも思わないくらいには小汚い。


「何故こんな状態のギルドを再建したいと?」

「それは……」

「良い、私が話すわ」


 私を召還した二人、改めて見るが、60前後の老人と20も行っていない女性。恰好から見るにそれなりな身分はありそうだ。


「このギルド再建は、王位継承の一端で……」

「自分の子が如何に使えるかをあの手この手で証明させるための一環ですか、金さえかければバカでも政治に絡める現代よりもマシですね」


 眼鏡をかけ直し、もう一度考え込む。

 目の前の女性が王になろうがならまいが、私の選択肢はイエスと言うしかない現状ではある。此処で断り、ふらふらとどこかへ……と言うのも、私としてはあまり趣味ではない。そもそも良くわからない世界にどんな危険があり、どういう世界なのかを把握しないのに順応するのは頭がおかしいか、よっぽどの能天気しかいないだろう。現代ですら一つ間違えれば最悪死罪、重罪が課されるという国としてのルールすらあると言うのに、世界単位で違うとなると慎重にならざるを得ない。


「とりあえず手元にあるものは?」

「このギルドと資金が50万ゲルドほど」

「1ゲルドの価値は?」

「ええと……」

「1日500~1000ゲルド程で生活ができる程度、ですが」


 日本円換算で大体50~100万程度と考えられるが、通貨価値が違う時点で此方の方に合わせる思考をしなければならない。どちらにせよ、そこまで多い資金力と言う訳でもないというのは良くわかる。


「まずはギルド内部の環境を改善、設備投資、そこから人員を補充し運営をする準備を整えて、暫くは赤字運営で認知活動をし……」

「あの、私たちは何をしたら」

「働いてもらうに決まっています、出資だけして何もしないなんて虫のいい話はありません」


 これだから素人で甘い考えは、と内心思いながら埃が舞っているギルドの外に出て、口からハンカチを外して少し大きく深呼吸。現代のビル街よりは空気がおいしい……訳もなく、外も外であまり環境がよろしくはない。活気が無いという訳ではないが、雑多だと感じられる。


「一大事業をする割には、安い賃金で」


 眼鏡をまた掛け直してからボロ屋敷のギルドを見上げる。



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