不安定な関係と自分の気持ち2
昨日二話投稿しております。
まだお読みでない方は、ひとつ前からお読み下さい(・∀・)
「……遠くから見ているだけ、想うだけのヤツもいるってこと、マリアンナは思いつきはしないんだね」
「あれ、ルーク。ポーション屋に来るなんて珍しいね」
そこへ突然ルークまでやって来た。
ちなみに今は犬姿だが、実は精霊で話もできるということがみんなにバレている。
「……っていうか、今のどういう意味?」
「なんでもないよ。言わずに後悔することのないようにねって意味」
うっ、確かに……!
ルークの真理をつく言葉に、ぐっと後ずさりをする。
素直に寂しいとか一緒にいてほしいとか言えずに、かわいげがないとフラれてきた前世の私を思い出す!
がっくりと肩を落とす私を、まあまあとオーナーが慰めてくれた。
「まあでもね、ウィルフリード様の気持ちも分からなくはないんだよ?」
少しだけオーナーが目を伏せ、どう説明したら良いかなぁと迷いながら口を開いた。
「彼の生い立ちと立場を考えたら、そうそう簡単に女性に気持ちを伝えられないと思うんだ。それが心から大切に思う女性なら、なおさら」
辺境伯爵家の跡取りとして生まれ、その生まれ持ったスキルに失望された幼い頃のフリード様。
母である前辺境伯夫人は、どんな気持ちで彼と向き合ってきたのだろうか。
まだ存命とは聞いているが、心を病んだという話を聞いたこともある。
「勝手に期待されて、勝手に失望されて。彼自身ももちろん大変だったが、母君もなかなかだったみたいだよ。でもね、それが高位貴族の妻になるということだ」
家のために我慢することも多いし、自由などないに等しい。
貴族に嫁ぐなんて面倒くさいことばかりだと、以前から私も思っていた。
「マリアンナちゃんは今、とても生き生きと過ごしているからね。君のその自由な強さに惹かれたのだとしたら、そりゃあ迷うんじゃないかな。鳥籠に閉じ込めるようなものだからね」
……確かに前世と違って、ここは付き合ったり別れたりが自由に行われる世界ではない。
遊びの関係ならともかく、互いの将来を考えなくてはいけないのだ。
「だからといって、こんなに女性を悩ませるものではないと思うけどね。無理だと思うなら、最初から近付かなければ良いんだ」
「まあ、そうですよね。でも辺境伯様もマリアンナのことを色々と考えているのね。もしかしてヘタレ?って思っちゃったけど、そうじゃなかったみたい」
オーナーもだが、アーニャもなかなか辛辣だ。
本人が聞いていたら泣いてしまうのではないだろうか。
でも、そっか。
逆に考えれば、私のことを真剣に考えてくれているってことでもあるのね。
不器用で優しい彼のことだ、私のために身を引いた方がと思っているのかもしれない。
それにしてもふたりの言葉になんと反応して良いものかと苦笑いをしていると、また休憩室の扉が開いた。
「おや? なんじゃ皆で集まって」
ヨーゼフ先生だ。
なんだろう、今日はお悩み相談室の日だったかしら?
もちろんそんなわけがなく、ヨーゼフ先生は硬い表情で一通の封筒を取り出した。
「マリアンナちゃん、閣下からの手紙は読んだか?」
「あ、そういえばさっきアーニャが……」
忘れていた。
どうせまたどこかの街に出張して薬作りを教えてほしいとか、そんな内容だと思っていたのだが。
アーニャから手紙を受け取ると、手早く封を開けて中身を確認していく。
え、これって……。
「“医師ヨーゼフと共に登城せよとの通達”……って、王宮からの直々のお呼び出しってことね」
「新種の病、か。確かにあの辺境伯とマリアンナのスキルがあれば、治せそうだね。王族の誰かが罹患したのかな?」
「おやおや、マリアンナちゃんをクビにしておいて、随分と都合の良いことを言ってくるねぇ」
背後から手紙を覗いていたアーニャ、ルーク、オーナーが呆れた顔をしている。
そう思うのは私だけじゃないってことね。
「まあでもフリード様のためでもあるし」
やれやれと立ち上がり、ヨーゼフ先生の方を向く。
「一緒に来てくれるかの?」
「はい。先生とフリード様と一緒なら、心強いです!」
それに、フリード様に会ってもう一度ちゃんと自分の気持ちと向き合いたい。
今度こそ、ちゃんと話をしよう。
あの時ああすれば良かったと後悔するのは、前世だけで十分。
それに、突然の別れが来ることだってあるのだと、もう私は骨身に沁みて知っているじゃないか。
あの陰険眼鏡と再会する可能性があるのはすっっっごく嫌だけど。
「病気で苦しんでいる人を見捨てるわけには行きませんからね」
私は私の誇りをかけて、王宮に戻ってやろうじゃないか。
ということで、ラストまであと少しになります。
今日も夜にもう一話投稿したいなと思っておりまして、今週中に終わるかな??というところです。
最後までお付き合い頂けると嬉しいです(*^^*)




