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【書籍化・コミカライズ】万能薬師はざまぁを企てない 〜辺境の地で新薬作りに励んでいるので、あなたたちを相手にする暇などありません!〜  作者: 沙夜
本編

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ヒーローのピンチを救うのはヒロイン!?5

ひとっ飛び、という表現は本当にそのままで、跳び上がったルークはひょいひょいと難なく森の中に降り立った。


数十秒くらい?


あっという間だった。


しかし、一刻も早く!とカッコつけて飛び乗ったのは良いけど、そういえば私、絶叫マシーンは苦手だったのよおぉぉぉ!と叫んだ。


それくらいものすごい勢いで上昇するし、下降する。


できればもうルークには乗りたくない。


「マリアンナ、大丈夫?着いたよ」


「あ、ありがとうルーク……」


ルークから降りてふらっとよろめいたが、そんなこと言っていられない。


フリード様と、傷を負ったみんなを助けないと。


ぐっと足に力を込めて立ち上がると、突然現れたフェンリルらしき獣と一緒にいる私に、隊員達が驚愕の表情をしていた。


中には剣を構えている者もいる。


あ、これはまずい。


「ストップ!攻撃は止めてください!この子は魔物とかじゃなくて、えーっと……友達!そう、友達なんです!」


慌てて隊員達を落ち着かせようとするが、今は時間が惜しい。


「詳しい説明は後でしますから!私は怪我人の治療をするために来たんです!」


だから早くそこを通してくれと伝えれば、うしろにいるルークを気にしながらも、こちらです!と案内してくれた。


「僕は大丈夫。ここで他の魔物(ザコ)どもからテントを守ってるから、安心して早く行って」


ルークもそう言ってくれたので、一度振り返りつつも、すぐにテントへと向かう。


ルークならたぶん大丈夫。


私を連れて来てくれたところを隊員達も見ていたし、ルークは会話ができるもの。


とりあえず私は怪我人の治療に集中しよう、そう気を引き締めて怪我人の集まるテントの中に入った。


「……っ!ひどい……」


中には十数名の討伐隊員や治安隊員が包帯を巻いて横になっていた。


包帯には血が滲み、火傷の痕がはみ出しているのも見える。


ただ、周りを見回してみてもフリード様の姿はない。


「サラマンダーとマンティコアは、辺境伯爵様とその護衛の方のおかげで、なんとか討伐できたんです。そいつらを倒したら、スタンピードも随分収まってきて……」


ならば魔物のことはあまり心配しなくても良さそうだ。


外ではルークも守ってくれているし。


「では、重症の方から診ていきたいのですが、どちらに?」


フリード様から治療をと言うべきかと迷ったが、前世のトリアージを思い出し、重症度に応じて治療の優先度を決めるべきだと思い直した。


本音を言えばフリード様を真っ先に治しに行きたい。


心配していないわけじゃない。


けれど、医療従事者としての誇りが私の理性を留めた。


泣きそうになるのをぐっと堪えて、案内してくれた隊員に一番の重症者は誰かと聞いた。


するとその隊員は、一番奥にある式幕を引いた一角へと向かった。


「……こちらです」


「失礼します。……っ!フリード様!!」


幕を引いて横たわる人物を見やると、そこにいたのは、私が知っている彼とは全く違う姿のウィルフリード様、その人だった。


頬や身体のあちこちが火傷で爛れ、脇腹は包帯が巻かれているので傷は見えないが、恐らく大量に出血したのだろうと分かるくらい血が滲んでいる。


呼吸も浅く、意識は恐らくない。


「一応、応急処置はして血は随分止まってきています。ご本人様が薬を持っていらっしゃったので、そのおかげもあるかと……」


あ……あの時の?


『これ、良かったらどうぞ。血止めと火傷の薬です』


ふとその手を見ると、以前私がぶっきらぼうに渡したニ種類の薬の容器が握られていた。


「ちゃんと持っててくれてたんですね……」


堪えきれなかった涙がつうっと頬を伝った。


でも瀕死状態には違いない。


泣いている場合じゃないぞ、私!


ぱちんと頬を打ち、フリード様の姿と向き合う。


こういう時のために練習してきたのだ、しっかりしなくては。


戦いで汚れた手を握りしめる。


どうか。


彼に、癒やしを。


先程隊員にかけたような普通の回復魔法では、恐らく完治は難しい。


それに体力的にも厳しい。


先程ポケットに突っ込んでおいたポーションを取り出し、詮を口で抜く。


はしたないとか非常識だなんて言われようとも構わない、そんなもので命が救えるか。


「!マ、マリアンナ殿!?」


とりあえず回復魔法に耐えうる体力を戻してからだ。


そう考えた私は、ぐっとその中身を呷り、変わり果てたフリード様に顔を近づける。


そしてそっと唇を重ね、少しずつ口の中の液体を注いでいく。


多少口の端から零れはしたが、少しは嚥下した様子が見られたので良しとしよう。


そしてもう一度、握る手に力を込める。


お願い、目を開いて。


「“上級治療(ハイ・ヒール)”」


心を込めて魔力を流す。


あたたかいものが私の手を伝い、フリード様へと移っていく。


するときらきらとした金色の光がフリード様を包み込み、冷たかった手にも少しずつ温度が戻ってきた。


ぴくりと薬の容器を握っていた方の手が動く。


そしてその後、反対側の手が私のそれをぎゅっと握り返した。


「……おまえは、本当に俺の予想を飛び越えてくれるな」


うっすらと開いた瞳は、しっかり私を見つめていて。


その形の良い唇で、私の名前を紡いだ。


「マリアンナ、助かった。ありがとう」


綺麗に傷の消えた、いつもの姿で。


いつもよりもか弱い声と、優しい表情で。


「……だから気を付けて下さいねって、言ったじゃないですか」


だから私も、溢れる涙を我慢することなく、フリード様の名前を呼んだ。

今日は夕方にも一話投稿したいと思います(・ω・)

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 助かって良かったし、 もう後戻りはできないよね好きという気持ちから!
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