力を合わせたら、最強。2
そしてブルーノさんに案内された使われていない畑で、私は緑魔法を使った。
症状を聞くと、やはり発熱と咳の症状を訴える人が多いようなので、とりあえずその症状を軽くする薬の材料となる薬草を中心に生やしていく。
初めて使う魔法だけど、いきなり成功するかしら?と思っていたのだが、その薬草の姿形を思い浮かべて名前を声に出せば、簡単ににょきにょき生えてきた。
ブルーノさんが信じられないというキラキラした目で見つめてきたが、知らんぷりをした。
ここでなにか聞かれても、上手く答えられる自信がない。
それなら黙っておいた方が良いだろう。
あらかた薬草畑ができたところで、ヨーゼフ先生からの伝言が届いた。
どうやら症状としては、やはり風邪に近いもののようだ。
しかしその感染力はものすごく、高齢者や持病のある人は重症化しやすいという特徴があるらしい。
風邪に近いこの病は、製薬検索のスキルに症状だけを入力しても、色んな薬が出てきてしまう。そのウイルスもしくは細菌に効く薬が限定できないのが辛いところだ。
「とりあえずブルーノさんが効くと判断した薬を片っ端から作っていきましょう。人によって効く・効かないがあるかもしれませんし」
「分かりました。すぐ近くに薬を作るためにお借りした施設がありますので、そこへ薬草を運びましょう」
魔法で作った薬草をひと通り採取し、私達はその施設へと向かった。
まだまだ必要になるだろうから、薬草畑にはルークの力を借り、こっそりすぐに新しい薬草が生えてくるよう魔法をかけて。
「さて、じゃあ作りますか! ブルーノさん、ちゃんとレシピは覚えていますよね?」
「もちろんですよ、あれからまだふた月も経っていませんからね。俺も成長してるんだってところ、マリアンナさんに見せないとね」
患者はたくさんいる。
ひとりひとりに合った量をと計測して渡さないといけないのだから、ここからはスピード勝負ね。
「はぁぁぁ~さすがに疲れたわね」
「お疲れ様。マリアンナとブルーノの薬を飲んだ人達、ずいぶん症状が軽くなってきたみたいだよ」
その夜。
長距離移動後すぐの作業で疲れているだろうから休んでくれとフリード様が作業場まで呼びに来てくれ、お言葉に甘えることにした私は、ある宿屋の一室にいた。
どうやらルークは犬のフリをして街を偵察して来たようで、どれくらいの患者がいて、容体はどうなのかを話してくれた。
「おじいちゃん先生の提案通りに宿屋を開放して、軽症患者の宿と重症患者の宿に分けたみたい。あの領主と側近兼護衛、ホント仕事早いね」
もう移動が完了しているなんて、確かに早い。
「マリアンナ達が作った薬も、すぐに患者の元に届けられてた。それとあのアガーで作ったゼリーも、子どもやお年寄りが薬を飲むのに重宝したって、街の診療所に勤める医師が言ってたよ」
そうか、もしもの時のためにと思って持って来ていたものが役に立って良かった。
薬のおかげで症状が軽くなったなら、特効薬がなくても対処療法でなんとかなるかもしれない。
「重症者はまだまだ辛そうだけどね。でも熱が引いてきたとか、呼吸が楽になってきたって人も多かったから、とりあえずはひと山超えたんじゃないかな」
「うん。教えてくれてありがとう、ルーク。明日も頑張らないと」
これで安心してはいけない。油断は禁物だ。
「でも、とりあえず今日はもう寝た方が良いよ。疲れてるんだし、明日からも体力勝負だからね」
ルークの優しい声に、うとうとと瞼が重くなってきた。薬を作っている時は気を張っていたからなんとも思わなかったけれど、慣れない馬車移動の後に体は疲れている。
「そうね、もう寝るわ。おやすみなさい、ルーク」
目を擦りながらそう言ってベッドに横になる。
すると、心地良い眠気が襲ってきた。
「明日は実際に患者さんにも会って、どんなしょうじょうか……きいて……」
そしてそのまま寝息を立てて眠りに落ちた。
だからその後ルークがこぼした呟きは、私の耳には届かなくて。
「……あの男がスキルの特性に気付けば、もっとマリアンナのスキルも使いやすくなるんだけどな。単純な話なんだけど……人間って察しが悪いなぁ」
呆れたようなその表情にも気付くことはなく、私の意識は深いところに沈んでいった。




