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力を合わせたら、最強。1

「お、来た来た。ヨーゼフ先生、マリアンナさん、こっちです!」


「ブルーノさん!お久しぶりです!」


目的地の街に着くと、そこには先に到着していたらしいブルーノさんがいた。


馬に乗り慣れていない私と高齢のヨーゼフ先生は馬車に乗り、ここまで約一日半。


ルークのおかげで魔物との遭遇はほぼなく、体力・気力・ポーション残量共に余裕を持って来ることができた。


フリード様は街の責任者の方達と話をしに行ったので、私とヨーゼフ先生は先に治療班と合流することにしたのだ。


「ゆっくり積もる話でも、と言いたいところなんだけど、残念ながら早速仕事に入ってもらっても良いですか? とりあえず今の状況をお話しします」


早口のブルーノさんの様子からも、事態は悪い方向に進んでいることが分かる。


街にも人通りはほとんどなく、なんとなくどんよりとした空気に包まれている。


どうやら着実に病は広がっているようだ。


曰く、やはり二日前の情報よりも病は広がりを見せ、重症者も何人かいるらしい。


ブルーノさんがここに来る前に作っておいた、私が開発した薬を投薬してみて、ずいぶん改善した患者もいるようだ。


しかし如何せん倒れた人数が多い。


まだ薬草が十分に確保できず、大量の薬を作れたわけではないので、重症の人のみに渡しているそうだ。


軽症といっても咳がひどくて眠れない人もいるので、そういう人には申し訳ないと肩を落としていた。


そうか、薬草。


私達はすぐに生えてくる薬草畑があるから、すっかり失念していた。


私も製薬したものを少しは持って来たけれど……。


考えが及ばなかったことを不甲斐なく思っていると、ルークがつんつんと私の足をつついた。


「マリアンナなら、魔法を使えばすぐに薬草を作れるよ?」


「え、ええっ!?」


小声で教えてくれたルークの言葉に、思わず叫んでしまった。


「ど、どうかしました?」


「ごめんなさい、なんでもないです」


急に大きな声を出した私に、ブルーノさんも驚いてしまったようだ。


そう謝ってから、こそこそとルークと内緒話をはじめる。


「魔法で作れるって、どういうこと?」


「マリアンナの緑魔法なら、知っている植物を作り出すことくらいできるよ。今までに薬を作るのに使ってきた薬草もね。ちなみに森の精霊である僕と力を合わせれば、この世界にあるほとんどの薬草を作り出せるよ。マリアンナが知らない薬草もね」


な、なんですってー!?


衝撃的な事実に言葉を失う。


それが本当なら、今すぐにでもどこかに薬草畑を作れば良い。


「ブルーノさん、すみません。どこかに薬草を育てられそうな畑……まではいかなくても、花壇とかありませんかね?」


「え? そうですね、街の人に聞けばあると思いますけど。でも、育てるための薬草自体がありませんよ?」


薬草の種や苗があれば、ある程度の緑魔法レベルを持つ人なら大きく育てることができる。


ブルーノさんも私がそうしようと考えているのだと思ったのだろう。


「いえ、えっと……。私、緑魔法のレベルが結構高くて。種や苗がなくても薬草が作れちゃったりするんですよね〜」


レベル10ですとはさすがに言えない。


とりあえず薬草が作ることができるってことが伝わればそれで良い。


「そうなんですか!?」


案の定ブルーノさんが驚いている。


そりゃそうよね、私だって王宮に勤める魔術師ならともかく、そんなことができる一般人、知らないもの。


「診療所の薬草畑を作ったのもマリアンナちゃんじゃからの。そのくらいはできて当然ということじゃな」


ヨーゼフ先生が誇らしげにそう言った。


そしてそれを聞いたブルーノさんは、キラキラした目で私を見る。


うっ、どんどん秘密にしておきたかった私のチートさが、隠しきれなくなっている気がする。


「全然隠せてないよ。もう諦めたら?」


心の声を読んだルークがぼそりと小声で私の心を抉ってきた。


うん、なんとなくそんな気はしてたけどね!


「では、早速場所がないか聞いてきます!マリアンナさん、ありがとうございます!」


そう言ってブルーノさんが街の人に聞きに行ってくれた。


まあ人助けのためだもの、仕方ないわよね。


「僕、マリアンナのそういうところ好きだよ」


「ありがと。私もルークのこと好きよ」


見て見ぬふりなんてできないもの。


自分の持つ能力で助けられる命があるのだから、使わないわけにはいかない。


よし、いっちょやってやりますか!と気合いを入れたところに、フリード様が現れた。


「早速で悪いが、ふたりとも頼んだぞ。連れて来た討伐隊の奴らには、周辺の森から魔物が出てこないよう、警備の強化をさせておく。やはり普段街を守っている警備隊の中にも病に倒れている者が多いらしくてな」


そうか、ひょっとして彼はそんなことも見越して討伐隊を率いて来たのかもしれない。


ただ街に向かうだけの割には大所帯だなと思ったのよね。


「必要ならば、水を運んだり洗濯をしたりくらいは奴らにもできるぞ。さすがに薬を煎じろとは言えないが」


「ありがとうございます。もしお手伝いが必要な時にはフリード様に相談しますね」


頼りになる領主様も一緒だ。


皆で力を合わせれば、きっと。


「先生、それではブルーノさんが戻り次第、私は魔法で薬草を生やして、それから薬作りに移りますね」


「おお、ワシはとりあえず患者の診察に行ってくるかの。結果は逐一マリアンナちゃんに行くようにするからの。それと、できればどこか広い場所を開放してもらって、軽症者はそこに集めたいところじゃな。重症者もできれば個室の多いひとつの建物に集めたいのう」


「ならば宿屋に協力できないか聞いてみよう。どうせこんな状況では商売どころではないだろうからな。領地から協力金をはずむと言えば考えてくれるだろう」


「ではそのように手配致します。了解が取れ次第、街の者にも伝えていきます」


ヨーゼフ先生、フリード様、グレイさんがそれぞれに発言し、着々と話が進んでいく。


すごい、さすがだ。


「マリアンナさん、使っていない畑があるそうでそこを使わせてもらえることになりました!――――あれ?辺境伯爵様!?」


ブルーノさんが良き知らせを持って来てくれ、光が見えてきた。


「ブルーノ、マリアンナ、頼むぞ。薬作りはおまえ達にかかっている」


「「はい!」」


そう返事をすると、じわりと胸が温かくなるのを感じる。


互いに信頼して、任せて、それぞれの誇りをかけて仕事に専念することができる。


――――なんて素敵なことなんだろう。


「マリアンナ、良い顔してる。今なら、すごく良く効く薬が作れると思うよ?」


ルークの言葉に、私もそう思う!と自信たっぷりに答えたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] どこの世界でも、これだけみんなが協力できたら、平和なんだろうね。 [気になる点] 上がわかる人だと本当にスムーズ。
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