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【書籍化・コミカライズ】万能薬師はざまぁを企てない 〜辺境の地で新薬作りに励んでいるので、あなたたちを相手にする暇などありません!〜  作者: 沙夜
本編

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ダイアンサス領地改革、はじめました4

それによると、私達が暮らすこの街から馬で二日ほどかかる、当に国境に接するひとつの街で、新種の病が流行り出した。


その病は人から人へと感染するもののようで、発症した人を隔離するなどして対応してはいるものの、発症前の接触でも伝染るようで、じわじわとその感染者が増えているらしい。


その症状は、軽い人なら微熱や時々咳払いが出る程度、重い人は高熱に止まらない咳、肺炎を起こす人もいるとのことだ。


そしていわば特効薬というものがなく、普段使っている風邪薬はあまり効かないらしい。


私の開発した薬はまだその街にまで浸透していないため、なんと割と近場にいるブルーノさんに派遣要請したところだとフリード様が教えてくれた。


「軽い風邪だろうなと自分で判断して出歩き、病気を撒き散らしてしまう可能性もありますね」


「ふむ。人によって症状の重さが違うというのは、ある意味厄介じゃのう」


罹患すると必ず重い症状が出るのも問題だが、今回のものはまた別の厄介さがある。


ヨーゼフ先生とふたり、眉間に皺を寄せて考え込む。


「そこでだ。おまえ達ふたりにも、その街まで行って治療に当たってもらいたいと思う」


「やはりそういう話になるでしょうな」


難しそうな顔をするフリード様の様子を見るに、これは苦渋の選択だったのだろうと思う。


私達が行っても治る見込みがないのなら、もう少し慎重になりそうなものだが、なにせ先日、私はスキルについて話してしまっている。


詳しい症状を知ることができれば、その病に効果的な薬を確実に作ることができると、フリード様はもう知っているのだ。


「……おまえに頼りきりなのは分かっている。しかし、どうか頼めないだろうか」


新種の病に侵され特効薬がない状況で、不安に思っている領民がいる。


フリード様は意外と領民思いだものね、放っておけるわけがない。


「そんな顔しないで下さいよ。私を信頼して任せようとしてくれていることくらい、分かりますから」


気にするなと、にこりと微笑む。それに、ひとりじゃないもの。


「不肖ながらワシも尽力いたしますぞ。マリアンナちゃんの負担を少し減らすくらいしかできませんがな」


ヨーゼフ先生もいるし、向こうできっとブルーノさんにも会える。


信頼できる、仲間がいる。


「……恩に着る。目的の街は魔物の多い森に囲まれているからな。俺も討伐隊と共に同行する。先程エリックに急で悪いが明日の朝までにありったけのポーションを用意してもらうよう要請して来た」


つまり、後は私と先生の同意をもらうだけだということか。そして明朝に出発すると。


「そんな大事なこと、もっと早く言って下さいよね。まったく、悪口はすぐに口に出るくせに。うーん、あと三時間くらいかな」


はぁっとため息をついて席を立つ。準備もしたいし、旅のことを考えたら早めに寝て体調も整えたい。


まぁ三時間あれば百はいけるわね。


「? どういう意味だ」


首を傾げるフリード様に、すまして笑う。


「お忘れですか?ポーション屋で一番量を作れるのは私なんですよ?今から終業時間までポーション作ってきます。フリード様達討伐隊の皆さんには、しっかりと守ってもらわないといけませんからね」


そして挨拶もそこそこに、私はポーション屋に向かって走り出したのだった。






結局キリの良いところまでということで、私は百五十本のポーションを作った。


そして私が作ったものの容器には、緑のラベルを貼って目印にしておいた。


なぜなら他の人が作ったものよりも効果が高いらしいし、効果期間も人より長いから、できるだけ温存しておいてここぞという時に備えるためだ。


ちなみに効果期間については、五十日程は保つことが分かっている。


効果以前に腐ったりしないのだろうかと心配になったのだが、一応お腹を壊すことはなかった。


でも気分的にちょっと嫌だなと思うのは、私だけじゃないはず。


話は逸れたが、まあそういうわけでラベルのないものからできるだけ使ってもらうよう、伝えておこう。


効果が高いことは結構みんな知ってるしね。


効果期間についてはバレたらバレたで仕方ない。


「マリアンナ、準備できた?うわ、結構たくさん持って行くんだね」


「あ、ルーク。うん、意外と必要な物って多いのよね」


旅の荷造りをしていると、ルークがひょっこり顔を出した。


もちろんルークにも同行してもらおうと思っている。


鼻が利くから魔物の少ない道を教えてくれますよ~とかなんとか言ってゴリ押しするつもりだ。


あながち嘘ではないもの。


「あれ、アガーだっけ? それも持って行くの?」


「うん。向こうで必要になったらゼリーを作ろうと思って。ほら、病状の重い人は薬を飲み辛いだろうし」


もちろん高齢の方や薬の苦手な小さい子もいるだろうし、高熱で朦朧として上手く薬が飲めない人もいるかもしれない。


せっかくだから使えそうなものはなんでも用意しておきたいじゃない。


「なるほどね。それとマリアンナ、例の魔法については、もうずいぶん慣れた?」


「あー、うん。一応。ルークがいるから大丈夫だとは思うけど、もしかしたら魔物と戦うこともあるかもしれないし、今日もちょっと練習してから寝るわ」


「うん、その方が良いと思う。備えあれば患いなしってね」


私の答えに、ルークは満足したように頷いて尻尾を振った。


かわいい。


けどもうどっちが主人か分からないわね。


頼りになる相棒の頭を撫で、支度の続きを始めた。

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