レベルアップした結果は、やっぱりチート!?3
昨日二話投稿しておりますので、お気を付け下さい!
「「「「「お世話になりました!」」」」」
「ほっほっ。皆、今日までよく頑張ってきたの。帰ってからの活躍を期待しておるぞい」
次の日の朝、とうとうブルーノさん達が帰る時間になった。
「この一ヶ月あまり、私の拙い言葉に耳を傾けて下さり、ありがとうございました。今私が教えられることは全てお伝えしました。どうぞそれらの知識を持ち帰り、その地で苦しむ患者さんのために活用して下さい」
はじめましての挨拶をした時とは、皆の私を見る目が違う。
しっかりと目を合わせてくれ、志を共にする同志だと認めてくれていることが分かる。
「マリアンナとヨーゼフじいさんの元で良く学んでくれたようだな。皆、とても良い目をしている。領民達のより良い生活のために、よろしく頼むぞ」
そして今日もまた突然現れた辺境伯、フリード様。
この人、アポを取るってことを知らないのかしら。
まあでもこの日に彼が出向いて言葉をくれたってことは、五人にとっては期待しているとのなにものにも代えがたい餞になる。
「閣下、このような学びの機会を頂けたこと、そしてわざわざこの場に足を運んで下さったこと、深く感謝申し上げます」
「必ずやマリアンナ様の薬剤レシピを広め、領民達の病への憂いを少しでも軽くできるよう、尽力致します。また領地を盛り立てることへ繋がることをお祈りしております」
実際みんなフリード様にすごく感激している。
元々領民からの支持は高かったものね。
「マリアンナさん」
お別れムードの中、ブルーノさんが私の正面へと一歩前に出た。
「はじめに会った時、新しい薬のことを広めるかどうかは俺達が判断して良いって言ってましたよね」
ああ、そういえばこの子で大丈夫かみたいな目で見られた時、そんなことを言ったっけ。
「俺等全員、マリアンナさんには脱帽ですよ。あなたの開発した薬も、患者への気配りも、お薬手帳の活用も、そしてなによりこの仕事に対する誇りも。否定できることなんて、なにひとつなかった」
過去の自分を恥ずかしく思うよと、ブルーノさんが頭を掻く。
「あなたの意志、俺達がしっかり広めてきます。そして、今度会う時には対等な目線で薬剤について語れるように、今まで以上に努力する」
そう言ってブルーノさんは、私の前に手を差し出した。
「俺も、あなたのお陰で薬師ってジョブに誇りが持てました。ありがとう、また会いましょうね! ルークも、またな」
「わうっ!」
私の足元のルークにもそう声をかけ、最後に顔をくしゃりとして笑った。
あ、こんな風にして笑うと幼く見えるのね。
「こちらこそ、ありがとうございました。皆さんとご一緒できて、私もとても嬉しかったです」
差し出された手を取り、互いに軽く握る。
ああ。
この感じ、久しぶり。
前世の研究会でたくさん議論した後みたいな、高揚感。
それぞれの職場に戻って、今日までの成果を生かしていくんだっていう、意欲。
そして仲間がいるんだっていう、連帯感。
どれも、王宮の薬剤室にいたら味わえなかった気持ち。
「皆さん、道中お気をつけて。私も、これからもっと研究に励みます!」
涙を誤魔化すように、ブルーノさんに負けないくらい顔をくしゃくしゃにして笑い返した。
いや俺達が追いつくまでちょっと怠けていても良いんですよ?と言われ、またみんなで笑い合った。
「泣くな。どうせまたすぐに会えるさ」
「フリード様。……そうかもしれませんけど、勝手に出てきてしまうものなんですよ」
ブルーノさん達を見送り、フリード様が呆れたような顔をしたのにムッとする。目元を拭って、これ以上涙を見せまいとぐっと力を込めた。
アーニャ達ポーション屋のみんなとはまた違う仲間だ。
一緒にいた期間は短いけれど、薬師として心を通わせた人達。
彼らとの別れを寂しく思ったって良いじゃないか。
「いつも目を釣り上げているか馬鹿みたいに笑っているかだからな。そういう顔をされると調子が狂う」
「はぁ!? そんなの知りませんよ!っていうか、さり気なくディスるの止めてくれません!?」
ディスる……?とフリード様が首を傾げた。
しまった、これは前世の俗語だった。
「え、え〜っと、貶すってことです!馬鹿みたいには不要だったでしょう!?」
「そうか? ただ事実を言っただけだが?」
怒る私に、フリード様はさらりと言ってそっぽを向く。
むきー!久しぶりにムカつく!!
前回視察に来た時は普通だったのに、また失礼男に逆戻りしたってわけ?
「おまえが、あんな顔をするから……」
「はい? なんですか? 聞こえませんでした」
向こうを向いて呟いた言葉を拾えず聞き返したのだが、無視された。
もう!一体なんなのよ!
「おやおや」
「あ、ヨーゼフ先生。今の聞いてました? フリード様ってば、ひどくありません!?」
そのままどこかへ行ってしまったフリード様を視界から消し、眉を下げて近付いてきた先生に泣きつくと、う〜むと顎に手をやり悩み出した。
?なんだろう。
ここは別に悩むところじゃないと思うのだけれど。
「閣下も捻くれておるからのぅ……。素直になれんのじゃ」
「はい?捻くれているっていうのには同意しますけど、別に素直じゃないわけじゃありませんよね?むしろ心の声をそのまま悪口として声に出してません?」
私の言葉に、ヨーゼフ先生はほっほっほと笑いを返すだけだ。
もうわけが分からない。
これ以上聞いてもなにも答えてくれなさそうなので、もう気にしないことにした。
とりあえず大きな仕事をひとつ終え、今の私は達成感でいっぱいだ。
今夜くらいはアーニャを誘って、エレナさんのお店でパーッと美味しいものでも食べようかしら。
「マリアンナちゃん、頑張ったご褒美に今夜は閣下がご馳走してくれるらしいぞい」
思いついた先に出鼻をくじかれて、がっくりと肩を下げる。
なによ、そんな配慮はしてくれるわけ?
「まあ……私だってお礼が言いたいから、別に良いけど」
貴重な経験をさせてもらえたのは、辺境伯のおかげだ。
さっきは喧嘩になってしまって言えなかったけれど、感謝の言葉はちゃんと伝えたい。
「仕方ないから、参加します。おごりだって言うし」
「ほっほっ、そうしてやってくれ」
「わう〜ん!」
ヨーゼフ先生とルークの生温かい目には気付かないふりをして、私はポーション屋の仕事へと戻るのだった。




