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講師デビューします!3

「な……! あなたが全て開発したということですか!?」


「まあ、一応。ちなみに効果はヨーゼフ先生のお墨付きです。レシピについては、最終日に私が知る全ての薬の作り方をまとめたノートをお渡しする予定ですが、もちろん各自でメモを取って頂いても結構です」


驚くひとりの薬師に、私は微笑んで答える。


さあ、侮られるか否か、ここが正念場ね。


「ただし大切なのは、分量をきっちり計ること。これを怠って失敗するのは当然のことですからね?」


先程の採取の時のように油断しないで下さいね?と言外に匂わせるのであった。






「──まあ! さすがですね。全員一度で合格です」


「うむ、ワシの鑑定の結果にもきちんと効果があると出ているぞ」


「わうわう! わうーん!」


それから三時間後、十種類の薬全てを教え終えた私は、五人の受講者に拍手を贈った。


ちなみに五人の顔には疲労の色が浮かんでいる。


まあそうよね、普段体力仕事じゃない人たちに、森での採取だけでなく、作り慣れていない薬を失敗は許さないと神経を尖らせて十種類も作らせたのだから。


ヨーゼフ先生の鑑定とルークの合格が出たのだから間違いなく成功だ。


ひとり一、二種類くらいは失敗もあるかもなと思っていたのだが、さすがとしか言えない。


「し、しかしにわかには信じられませんね。いえ、ヨーゼフ先生の鑑定を疑っているわけではありませんが……」


息を切らせた医師がおずおずとそう言った。


私とヨーゼフ先生の機嫌を損ねないだろうかと少しびくびくしている。


そりゃ今までにない調合で作ったものを、新薬で〜すと言われてすぐに信じられるわけないよね。


「あ、そうだ。ブルーノさん、先程森で怪我をされていましたよね?」


「え? ああ、はい。木の幹で擦ってしまいまして」


私が聞くと、ブルーノさんは袖をまくって腕の擦り傷を見せてくれた。


布で押さえていたので血はもう止まっているようだが、放っておくと化膿してしまいそうだ。


医師たちもちょっと傷が深いねと眉を顰めている。


「作ったばかりの塗り薬、使ってみませんか?」


ブルーノさんが先程自分で調合した傷薬を勧めてみる。


え?と一瞬怯んだものの、薬をじっと見つめた後、塗ってみますと言ってくれた。


ちなみにこれはルークと出会った時に使ったのと同じ薬だ。


それを覚えているのだろう、ルークもきっと治るよ!と言うかのようにブルーノさんの足に顔を擦りつけた。






その次の日の朝。


「すごい……昨日はきれいに傷が治るまでしばらくかかるだろうと思っていたのに、化膿しそうだったところもしっかり固まっている」


ブルーノさんの傷を見た医師が、驚きを隠さずにそう言う。


そしてルークも傷のあたりの匂いをかいで、わん!と嬉しそうに吠えた。


「さすがに他の薬は病人の方がいないと使えませんが、少なくともこの薬は効果があるって分かって頂けましたか?」


「はい。すごいですね」

 

昨日は半信半疑だった医師やブルーノさんも、キラキラとした目で塗り薬を見ている。


百聞は一見にしかず、よね。自身で効果を実感できたなら、もうそれ以上言わなくても良い。


「さて。今日は午前中に講義、午後からは診療所の薬草畑の見学と昨日とは別の薬作りをしますよ」


「「「はい!」」」


昨日よりも反応の良い返事に、笑顔を返す。


それにしても、あの薬草畑を見たら、こんな立派な薬草畑があるなら昨日わざわざ森に行がなくても良かったじゃないですか!と皆さんに叱られる気がする。


自分の足で材料を取りに行って、自分の目で見て判断することも知ってほしかったという理由があるので、それもきちんと説明しなければ。


そこでブルーノさん達の様子を見つめる。


昨日より今日、今日より明日、少しずつ信頼関係を築いていけたら良い。


傷薬の効果を知って、目をキラキラさせていた。


私と一緒だ、って嬉しかった。


「ね、ルーク。とりあえず出だしは好調、ってことで良いかな?」


「そうだね、あの人達からはご主人と同じ匂いを感じるよ。きっと、今日は質問攻めに合うと思うな」


ルークとふたり、こそこそと会話をし、それはちょっと大変になりそうねと苦笑いをこぼす。


今日は調剤についての講義から始めるつもりだ。


彼らからも色々な意見をもらえると嬉しい。


「今日もよろしくね、ルーク」


「わぅん!」


ルークからご機嫌な返事をもらい、私も受講者達が待つ部屋へと向かったのだった。

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