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【書籍化・コミカライズ】万能薬師はざまぁを企てない 〜辺境の地で新薬作りに励んでいるので、あなたたちを相手にする暇などありません!〜  作者: 沙夜
本編

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再会ーーのち、挑戦1

「ねえルーク、そっちの薬草は大丈夫?」


「うん、元気に育ってるよ。虫に食われたりもしてないし、水も足りてるみたい」


今日はルークと一緒に診療所の薬草畑の世話をしている。


いくら魔法で増やしたとはいえ、ちゃんと世話は必要なのだ。


森の精霊のルークがこうして世話をすると、薬草達もなんだか元気になっている気がする。


ルークが精霊だと発覚してから、私は惜しげもなくその能力を借りた。


約束した通り、近くの森にある全種類の薬草採取ツアーの案内もしてくれて、私は新しい薬を開発しまくった。


風邪薬や傷薬などの需要のあるものはもちろん、塗布するタイプの湿布薬や害虫除けの薬なんてものも。


診療所の花壇の面積を増やし、それらの薬草全種類植えて魔法で繁殖させた。


しかも薬作りで摘みすぎてなくならないようにと、ルークがこっそり特別な魔法までかけてくれた。


だからいくら採取しても、二、三日経てば自然ににょきにょき生えてくる。


うーん、便利だ……。


「マリアンナちゃんの薬のレシピ本もかなり埋まってきたのぅ。患者からも、自分に合う薬が見つかって嬉しいと評判じゃよ。うちの薬剤師はレシピを覚えるのにてんてこ舞いじゃがの」


ほっほっほとヨーゼフ先生が笑う。


今まで薬が合わず、症状が良くならない患者をたくさん見てきたため、ここ最近症状が改善されたという話をたくさん聞くことができてご機嫌なのだ。


「ラムザからも、マリアンナちゃんの傷薬を討伐に持って行ったら、ものすごく良く効くっていうので、他の騎士達から貸してくれ貸してくれと囲まれ大変だったと聞いておるぞ。この際、商品化して納品してはどうじゃ?」


「え、そうなんですか?確かに小さい傷くらいでポーションを飲んだりはしませんもんね。傷薬は需要が高いかも」


ラムザさんも森へ薬草の株を取りに行く際、宣言通りわざわざ手伝いに来てくれたしね。


街を守ってくれている討伐隊の皆さんのために、これくらいはしても良いかもしれない。


「辺境伯も褒めていたらしいぞぃ。先日の討伐でご一緒したらしくての」


「そうですか。元気にやっておられるんですね」


時々こうやって辺境伯の噂も聞くこともある。


どこどこの森の討伐隊に加わったとか、隣の領地の視察に行ったとか、そんな話を。


最後に会ってから二か月くらい経ったかしら?


私の作ったポーションや傷薬が役に立てているのなら良いのだが。


……いや、深い意味はない。


私だって日々進歩しているのだということをアピールできるから、ただそれだけだ。


いやいや別にちゃんと私のことを覚えてくれているだろうかと不安になっているわけではない。


「とにかく!私は私の仕事をちゃんと毎日こなしているのよ!」


「お、おぅ、そうじゃな。どうしたんじゃ急に叫んだりして。顔も赤いが……」


「な、なんでもないです!ただちょっと暑いだけで!」


急に叫び出した私に、ヨーゼフ先生が首を傾げる。


ああもう嫌だ。


なんで私がこんな言い訳のようなことを……。


「向こうも元気にやっているなら、それで良いのよ」


最後にあった日に、辺境伯があんな顔をするから。


ラムザさんに過去のことを聞いてしまったから。


だから、ちょっと気になってしまうだけ。


もういい年なんだし、幼い頃のそんなトラウマ、もう克服したかもしれないしね。


「なんだ、随分と盛況だな」


翌日。


いつもと変わらずポーション屋で忙しく働いていた私の元に、まさかの人物が現れた。


「へ、辺境伯!?」


「久しぶりだな。どうした、そんな驚いた顔をして」


ど、どうしたって……驚くでしょ普通!


そんな行きつけの店に久しぶり〜な感じで来る!?


「なんだその変な顔は。まあ良い、この前は急に帰ることになってしまったからな。新薬開発も順調なようだし、今回はじっくり視察させてもらう」


あ、やっぱりこの前は急な呼び出しを受けたんだ。


それでまた時間を作って視察に来てくれたんだ〜。


って、そんな簡単に納得できるか!


「あー、結構うちの主は強引でして……。すみません、マリアンナ嬢」


今回も護衛としてついてきたらしいグレイさんも、はあっとため息をついた。


うん、それは知ってる。


「この前の討伐でもポーションや傷薬がとても役に立った。ヨーゼフの孫に聞いたのだが、傷薬はおまえの手製らしいな?助かった、ありがとう」


「っ……それは良かったです。けど、おまえって呼ばないで下さい!あとさっき変な顔って言いましたよね!?オーナーに言いつけますよ!」


辺境伯が笑顔でお礼を言ってきたのに驚き、つい以前と同じ憎まれ口を叩いてしまった。


それと同時に、まさかお礼を言われるなんて思ってもみなかったので、不覚にもどきっとしてしまう。


それに……この人、本当に顔は良いわね。


久しぶりに見ると特にそう思ってしまう。


だからなんだという話だけれど。


でもまあ、この二ヶ月あまりの私の仕事を認められたようで、嬉しくはある。


自分の仕事がどんな評価を受けたのかは、やはり気になるところだもの。


「午後からは診療所での勤務らしいな。今までの成果を見せてもらえるはずだと聞いているのだが、よろしく頼むぞ?」


期待して来たのだから、それを裏切ってくれるなよ?とその目が言っている。


「……ふん、私だってこの二ヶ月間遊んでいたわけじゃないんですから。驚きすぎて目を回さないで下さいよ」


売られた喧嘩は買う主義だ。


それがかわいくなかったんだろうなぁとは思う。


その自覚はある。


「ふっ、上等だ」


だけど辺境伯は、ただおもしろそうにそう言って笑ったのだった。

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