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新薬の開発はまず薬草採取から3

そして小一時間後。


「たくさん取れたのぅ」


「はい! 魔物も出ませんでしたし、ラムザさんが意外な才能を発揮してくれましたから!」


種類ごとに分けられた革袋にたくさんつまった薬草を見ると、思わずほくほく顔になる。


まさか短時間でこんなに集めるなんて。


ラムザさんのような騎士職の方って、偏見かもしれないが少し大雑把なイメージがある。


根まで切れないようにとか、葉っぱがちぎれないようにとか、細かい繊細な仕事を頼んで良いものかと不安だったのだが、杞憂だった。


仕事は手早いし薬草の扱いも丁寧で、ものすごい戦力になった。


「ではワシの診療所に戻って、薬を作ってみてくれるかの?」


「はい! 初めて使う薬草もあるので、すごく楽しみです!」


それから診療所に戻るまでの間、当然のように魔物に襲われることはなかった。


診療所に着いて何事もなかったねという話になった時、ルークがどことなく得意気に吠えたのは気のせいだろうか。


そんなルークとは対象的に、ラムザさんは眉を下げていた。


「僕、今日は護衛の仕事なにもしなかったですね。必要なかったかも」


「それは結果論ですよ。ラムザさんがいなかったら魔物が出たらどうしようって不安だったと思いますし、採取もたくさん手伝って下さって、すごく助かりましたよ」


ラムザさんは謙虚な方なんだなぁと思いながらお礼を言うと、ヨーゼフ先生がにこにこと私達を見つめていた。


「? どうかしました?」


「いや、なんでもないんじゃ。若いって良いのぅ」


ほっほっと笑っているが、意味がよく分からない。そしてそんな先生に、ラムザさんは咳払いをした。


「まあとにかく、採れたての新鮮な薬草で薬作りじゃ! ところでマリアンナちゃんは、どのようにして作っておるんじゃ?」


きた。この話題。


ここでもまた私のスキルの話をしなくてはいけない。


これもまた薬の開発のためには知っていてもらわなくてはいけないことなので、正直に話していく。


「うぅむ、調合のレベルが高いとそのようなことができるのか……。ワシなどまだレベル四じゃからな。足元にも及ばんわい」


先生が悔しそうに唸る。


しかし先生は医師で、患者の診察をするのが仕事だ。


薬を作ることが専門の私とは違うのだから、そこまで悔しがらなくても……。


まあまあとラムザさんと一緒に先生をなだめ、やっと薬作りを開始した。


今日採れた薬草のデータを見て、まずは需要の高い風邪薬を作ることにした。


風邪薬とひと口に言っても、鼻水を抑えるもの、喉の炎症を抑えるもの、解熱剤と様々な効果の薬がある。


「おお……! すごいのぅ、これだけ種類があれば、患者の症状に合わせて薬を渡すことができるぞ!」


そう、前世では患者の様子を見てこれらの薬を調剤していたのだが、王宮で働いていた時は医師は詳細な診断を下してくれないし、ならば自分でと思っても患者に会わせてもらえなかったからね。


「はい。どの薬を使うと良いのかは、先生の診断で決めて下さい。医師として長年の経験を持ち、薬の詳細を知るスキルが使える先生なら、きっと患者さんに合わせた薬を判断できると思います」


考えてみれば、先生のスキルは医師としてとても強みとなる。


鑑定でこれらの薬の詳細がどのように見えているのかは分からないが、スキルのレベルを上げれば、病気に合わせた薬を特定できるようになる可能性もある。


「先生の医師としてのスキルアップはまだまだこれからですね! 私もこれから先生とどんなことができるようになるのか、楽しみになってきました!」


「マリアンナちゃん……」


目を見開いてヨーゼフ先生が私を見る。


……あれ?


私、なにか変なこと言ったかしら?


ヨーゼフ先生の反応がなにもないんだけど……。


呆然とする先生のうしろから、ラムザさんがその肩を叩く。


「良かったねじーさん。まだまだ現役で頼られそうだよ」


「……ふん、そんなこと、おまえに言われるまでもないわい」


孫の前で憎まれ口を叩くヨーゼフ先生だったけれど、その顔は嬉しくてたまらないといった表情で。


少しだけ、先生の心を軽くするお手伝いができたかなと、私も微笑むのだった。

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