LK鶴の恩返し(風呂トイレ共同)
昔々あるところに、とてもとても貧乏な青年がおりました。名を安兵衛と申します。
ある日安兵衛が畑仕事をしていると、鶴が罠に掛かって鳴いておりました。
安兵衛は鶴を哀れに思い、そっと助けてやりました。鶴は山へと飛び立ち、安兵衛はまた畑仕事へと戻りました。
「ごめん下さいまし……」
夜のことです。安兵衛が寝ていると戸を叩く女の声が聞こえました。
「行きずりの者で御座います。どうかしばらく泊めて頂けませんか?」
「はぁ……狭い場所ですが宜しければ」
安兵衛は女を部屋へと上げました。
「あの……一部屋お貸し頂けませぬか?」
女が申し訳なさそうに、小さな声で問いかけました。
「このアパートLKで風呂トイレ共同だから、部屋無いんですよ」
「……」
女は一泊して帰りました。
帰り際に女が振る舞った野菜炒めの味が忘れられず、男は畑仕事の最中ずっとその事ばかり考えておりました。




