表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくら。   作者: 夜兄
1/1

壱話 (俺視線)

ヒトが壊した…

壊された。


 ヒト、ヒト、ヒト...。

 ヒトが俺とあいつを追いかけてくる。

 ヒトが、俺らを殺そうとした。

 襲おうとした。

 無情に。

 非情に。

 俺らは、逃げられなかった。



 あいつは、俺を突き飛ばして自分だけが犠牲になった。


 あいつが居なくなった世界に僕は、希望を見いだせない。


 俺は、救われてばっかりだ。

 あいつが居たから、生き残れてきた。



 死のうとしていた。

 あいつと会う直前。

 あいつが止めた。

 俺をこの世界に引き留めた。

 俺を拾った。

 俺は、あいつのものになった。

 あいつに救われた。



 このくそみたいな世界で。



 俺がいなければ、あいつが犠牲になることはなかった。

 俺をはじめから拾ってなければ、あいつが犠牲になることなんてなかった。


 あいつが足を取られたとき、俺はあいつを連れて行こうと手を引っ張った。

 あいつは足を痛めていて、逃げるスピードは格段に落ちた。


 あいつは、俺を突き飛ばしながら必死な表情でいった。

 「生きてくれっ。」

 ...と。

 あいつは、自らが居たら逃げられないと思ったのだろう。

 俺は、突き飛ばされた事実に驚き。



 .....あいつがヒトに包まれた事実に絶望した。


 あいつは、死んだ。




 あいつの死体は、躯は…見ることは、無かった。

 あいつが生きていると信じたかった。

 だが、1月経っても2月経ってもあいつは僕らの家にあいつがかえってくることは、無かった。

 あいつがヒトに包まれたところに戻った。

 ...あいつの濃い血の匂いがした。



 もしも、もしもでいいから。生きていたら。

 元気な顔を見せてほしい。

 俺のことを忘れてたっていい。

 俺はもう、それで十分満足だから。



 あいつがいない世界。

 あいつの居ない日常。

 あいつが座っていたソファー。

 あいつと寝ていたベッド。

 お揃いで買ってほほを染めた箸と皿。

 

 あいつの匂いは、そのままあるのに。

 あいつの姿を感じられるのに。

 幻でも、あいつはいない。

 あいつは、いない。

 あいつの居ない世界。





 視界が灰色に染まったのは、何時からか。

 空は、こんなにもつまらなかったのか。

 花はこんなにも色あせている。

 友人たちは、欺瞞に見える。

 すべてが信じられなくなってきた。

 ここは、こんなに生きずらい世界。

 あいつは、生きろといった。

 あいつが居ない世界に生きる意味は?

 あいつに拾われ、こんなにもつまらない世界を生きてきた。

 あいつのもとなら、こんなにもつまらない世界が楽園の様に感じられた。

 あいつの居ない世界。...そんなものに、価値なんてないと思った。


 俺は、あいつのものだった。

 俺は、何をしたらいいのかが分からない。

 何をして生きていたらいいのかが分からない。

 あいつに聞きたい。

 もういないあいつに。

 会わないといけない。

 聞かないと。

 俺は、あいつのものだ。

 あいつのそばに行かないと。








あいつ視線かくよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ