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瘴気

ここからは、三人称視点です

 バラバラに斬り刻まれ、動かなくなったライオを確認して、ローガは口を開いた。


「……死んだか」


「ああ。これだけ刻んでも回復しねえからな。ようやくこいつを殺してやった。久々にスッキリしたぜ」


「私のおかげでしょお? セオドアくんだけだったらいつまで経っても終わらせられなかったじゃなあい」


「あ!? 殺すぞ! クソ女!」


「怖あい」


「てめえ!」


「喧嘩をするな。とっととここから帰るぞ。瘴気臭くてかなわん」


「はあい」


「ちっ……さっさと行くぞ」


 先ほどまで人を殺していたとは思えない程の平凡な軽口をたたき合ってから、彼らは歩き始める。それは、彼らの異常性、後ろ暗いことを共有し、お互いに隠さなくなった彼らの狂気を表していた。


 ──魔王の死体からは未だに相当量の瘴気が溢れでている。


 普通の魔獣や魔人などの大して瘴気を保持していない奴を聖剣で殺せば、その瘴気は浄化されてなくなる。また、仮にその程度なら聖剣で倒さず、瘴気を放置しても大した被害にはならずにいずれ消滅する。


 しかし、魔王や大魔獣のような強い力を持つ者は、より大量の瘴気を内包していて、例え聖剣で殺しても完全に浄化する事はできない。その場合、死後もその身体からは瘴気が噴き出し、瘴気がなくなるまで続く。


 大量の瘴気は、人体にとって毒そのものである。瘴気に触れ続ければ、どんどん体の調子が悪くなり、魔力が奪われて、最後は死んでしまう。強大な魔力を持つ者は瘴気に対する耐性が高いとされているが、それでも大丈夫という訳ではない。さらに言えば、瘴気はより大きな魔力に集まりやすいという特性を持っているため、多少はともかく魔王の死体から発せられている程の大量の瘴気にはむしろより危険な可能性すらあった。


 だからこそ強大な敵を倒した後は、いったん退散する形が自然となる。数日後、瘴気が薄まった時に調査や戦利品回収などを行うのだ。


「後の調査は適当な奴に任せて、我々はこのまま『瘴気のダンジョン』に向かうぞ。その道中で帝国に寄って、グロリア様とご一緒する流れとなる」


 ローガは、魔王の死体がある部屋から外に歩き出しつつ、これからの予定を2人に伝えた。


「噂の王女様かあ。どんな人なのかなあ。優しいって話だけどお。強いのかなあ、世界最高の回復魔法使いだもん。そりゃ強いに決まってるかあ」


「呪おうとするなよ」


 ローガがあらかじめ釘を刺す。

 笑顔を浮かべているサリアは冗談めかして、


「あはははあ。大丈夫だよお。流石にしないってえ」


「……本当に分かっているのかい?」


 そこでセオドアが割り込む。


「王女は索敵魔法も使えんだろ? どんくらいのもんなんだ?」


「グロリア様と合流したら言葉選び気を付けてくれよ。セオドア。…………聞いた話だと相当な範囲の探知が出来るらしい。少なくとも50m以内の魔獣は検知できるそうだ」


「ほう。そりゃすげえ。どっかの回復魔法しか能がねえ奴とはちげえな」


 セオドアはそうライオを揶揄する。ローガも口には出さないが、新たなメンバー、そして報酬への期待に胸を膨らませていた。


 そして、彼らは魔王城を去った。


 しかし、彼らはいずれ知ることになる。

 逃した魚の大きさを。取り返しのつかない選択をした事を。


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