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宴会

 ライオが両親と再会して少し時間が経った後、外出した彼の父親がライオの帰郷を村中に伝えて、その事は瞬く間に村の皆に知らされた。その結果、夜に村で軽く宴会が開かれる運びとなった。


 小さな村なので規模はそれほどでもなく、宴会に集まれた十数名の大人達が宿屋前の広場に酒を持ち寄り、祝いながらお互い飲み交わすだけの小さな宴会だ。


 ライオは広場にいくつか展開する丸いテーブルの中の最も中心に近い席に座らされた。ライオの父親含む大人達は、昔の思い出話や世間話をしながら、各自が持ち寄った自慢の酒をライオに振舞う。


 彼の父親曰く、村から出稼ぎに行った若者が無事に帰郷した時に、仲間の無事を感謝し、このような宴会を開く事がこの村の昔からのしきたりなのだそうだ。取り立てて特徴のないこの村において、ほぼ唯一の100年以上続いている伝統らしい。


 伝統にしてはありきたりでどこの村でもやっていそうだとか、ただあんたらが酒飲むための口実なんじゃないのかとか、色々突っ込みたい気持ちはあるが、自分の無事を祝ってくれる村の人々を見て、ライオは素直に嬉しく思った。


 ライオが村を出たのは、14歳の頃だった。ライオの住む国では、15歳未満の飲酒が禁止されていたため、村に居た時彼は酒を飲んだことはなく、彼自身がこういった村の宴会事に参加するのは初めてだった。


 流石に冒険者として酒を飲む機会は割とあったし、そこまで酒に弱くもない。しかし酒を飲む以上、判断力は落ちるし、飲んだ時も付き合い程度で意識が飛ぶほど飲んだことは無かったから限界まで飲んだらどうなるか分からない。控えめにしたいところではある。


 しかしそんな考えとは裏腹に、宴会はさらに盛り上がり、皆が飲む酒の量も増す。

 まだライオは顔が少し赤くなり酔いが少し回った程度で思考に支障は無いが、ジョッキを空にすると容赦なく酒を追加されるので大変だ。


 ちなみに、ライオの父親は少し前に飲み過ぎててフラフラになったので、ライオの母親に連れられて帰っていった。


(父さん、酒が弱いのにそんなに飲むから……)


 宴会中、終始嬉しそうに彼の帰還を喜ぶ両親の姿を見て、ライオは嬉しいような、気恥ずかしいような、そんな気分になった。ただ、両親の下に帰ってきて本当に良かったとは思った。


 今ライオと一緒のテーブルを囲んでいるのは、コトネである。

 シラヴィアへの相談を終えた後暫くして、コトネは広場で騒がしく宴会をしている大人達を発見した。そして、ライオのテーブルの周りに人が居なくなるタイミングを狙って彼女は、彼の隣の席に座った。その手には、酒の入った小さめのコップを持っている。彼女はライオよりも年下だが、17歳であり、酒を飲む事は出来る。


「……ちょっと飲み過ぎじゃない? もうだいぶ顔赤いよ」


「おお。コトネも来たのか」


「家の前であんな騒がしくされたら目にも入るよ。あんまりハメ外さないようにね」


 宿屋を経営しているのはコトネの実家である。広場は宿屋の目の前のため、宴会の様子はよく見えた。


「うん。気を付けるようにするよ。コトネはもうお酒を飲んでも良いのかい?」


「飲めるよ! もう17歳なんだから! ライオが村に居ない間に、もうたくさんお酒飲んでるよ? ライオこそ、そんなに飲んで大丈夫なの?」


 馬鹿にされたと思ったのか、コトネが頬を膨らませる。

 彼女のその表情が幼気で、ライオはついつい笑ってしまう。


「はは。僕は冒険者の付き合いでよく飲んでるからね。結構飲んでもそんなには酔わないんだよ。だけど、今日のお酒は強いのも混じっているから、コトネも気を付けてね」


 そう言ってライオはジョッキの酒をあおる。それにつられてコトネも少しだけコップの酒を飲む。


「……ふーん」


 チビチビと酒を飲むコトネの頬は、もう既に少し赤みを帯びていた。


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