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パーティ申請

「……我らのパーティにかの?」


「……うん。5年前は、あたしに戦える力が無かったから、村を出る……ライオについていけなかった。でも、今なら! 師匠に鍛えてもらった今なら、一緒に行っても役に立てると思うんだ。だから、お願い!」


 両手を正面で合わせ、頭を下げるコトネ。それを見てシラヴィアは彼女に見えない角度で困惑の表情を浮かべる。


 何せ、シラヴィアとライオが同じパーティなんて、さっきライオが口走った大嘘である。


 しかも本来シラヴィアとしては、ライオを村近くに送ったら自分は1人でどこか別の場所に行こうと思っていたのだ。強引に連れてこられた以上仕方なかったが、村に入るどころか泊る事になるなんて完全に予想外である。


(かと言って、嬢の覚悟を無下にするのものう)


 5年近く前から、シラヴィアは師匠としてコトネを鍛え上げた。その間、シラヴィアは彼女の努力をずっと見てきた。彼女が努力する理由も彼女の口から聞いたから知っている。


 ──あたしもライオのように冒険者になりたい、と。


 そして師匠の贔屓目抜きにしても、コトネは強い。鍛錬し続けた空間魔法に、元から持つ戦闘センス。並みの冒険者よりもきっと強いはず。

 ライオと組めば、攻防バランスの取れた良きパーティになれるだろう。


 シラヴィアは大きく息を吐くと、コトネの願いに返答した。


「我に嬢をパーティに加入させる権限は無いでの。じゃから、童に聞いてみるがよい」


 本当のパーティではないために、シラヴィアでは加入させる約束はできない。だが、拒否をする必要も意味も無い。自分はこれからどうするかはまだ分からないが、コトネとライオがどう判断し行動するかは、当人達の自由だ。

 ゆえに彼女の取る選択肢は、ライオ本人に任せるというありきたりなものだ。


 だが、シラヴィアの回答にコトネは不満げな顔になる。


「むぅ。師匠の意地悪。それが出来れば苦労はしないんだってば……」


「クハハハ。すまぬのう。まあ、ままならぬのが人生というものよ」


「んん。せめて師匠がライオに言ってくれればいいのに……」


 彼女がここまでライオ自身にパーティ入れてほしい旨を言う事を渋る理由も、シラヴィアは分かっていた。先のコトネが努力する理由にも繋がる話だが──。


 彼女は──、


「こういう大事なところで勇気を出せぬと今までの努力が水泡に帰すぞ? それに嬢はかなり分かりやすい性格じゃからな。嬢が童を好いてい──」


「──待って! 言わないで師匠! そんなんじゃないし! 誰かに聞かれたらどうするの! もう!」


 シラヴィアが何を言おうとしたかを察したように、大声で遮るコトネ。

 その必死な姿がシラヴィアには微笑ましい。


 ──コトネは、ライオに好意を持っている。冒険者になりたいと願うのも、ライオと共に居たい一心で言っているのだろう。

 そこまで聞くといつも彼女は否定するが、照れ隠しにしても隠しきれていない。今日だって本人は完璧に隠しているつもりだろうが、ライオとの会話の節々に好意が見え隠れしている。


 コトネは顔を真っ赤にして、頬を膨らませている。

 そんな彼女を宥め、助言し、時にまたからかいながら、シラヴィア達の時は過ぎてゆく。


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