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戦神はスラムでヤクザに絡まれていた少年を助けました

ドシーン


大音響とともにシャラザールは地上に叩きつけられていた。


全身を凄まじい激痛が走る。

「おのれ。ゼウスめ。いくら自分が乱倫だからと言って、余を人界に落とすなど覚えておけよ」

シャラザールは激怒していた。


全身が痛い。

首を振る。

足腰も痛い。

周りを見るとどこかの街の裏通りらしかった。


なんとか起き上がろうとして壁に手をつけようとしたが、掴めない。

というか突き抜けた。


「えっ」

シャラザールはもう一度壁に触ろうとするが、突き抜ける。

「んっ。触れられない?」

よく見ると足も地面には接していなくて浮かんでいる。


「実体化していないのか」

神は天界で死ぬと地上で生を受けることになるが、これではまるで幽霊ではないか。


「おのれ、ゼウスめ図ったな」

シャラザールは怒り狂った。

しかし、魔術を出そうにも実体化していないと全く出来ず、物に触ろうとしても突き抜けてしまう。本当に霊になって漂っているだけのようだ。


その時になって初めてシャラザールは目の前に少年が目をキョロキョロさせて何かを探しているのを見つけた。


天界から落とされた時に巨大な音がしたので、何が起こったか探ろうとしているようだった。


シャラザールは男に手を伸ばすが、当然突き抜けて触ることは出来なかった。


薄汚れた少年は何も起こっていないのが判ったのか、キョロキョロするのを止めてズタ袋からパンを取り出して食べだした。

荷運びの仕事にやっとありついて久しぶりのパンだった。


そこへチンピラ風の少年達がやってきた。

「変だな。このへんで爆発音がしたように思ったんだが」

少年達の一人のアーベルが周りを見回した。


「気のせいじゃないのか」

「いや、確かに聞こえたぞ」

男たちは周りを見渡す。


「よう、フェビアン。景気が良さそうだな」

その中の一人が隠れようとしたフェビアンを見つけた。


フェビアンはあっという間に3人に囲まれた。


「相も変わらず汚い格好だな」

「それよりも不味そうなパンを食べているということは金を持っているな」

「持っていないよ」

フェビアンが否定する。


「嘘つくんじゃねえよ」

男の一人がフェビアンのズタ袋を取り上げた。

「返してくれ」

そう言って取り返そうとするフェビアンの頬を一人が殴りつけた。

フェビアンは地面に倒れ込んだ。


笑った男はズタ袋をひっくり返した。

中に入っていた食料がバラける。

そして、金貨も一枚落ちた。


「ふんっしけてているな」

金貨一枚を握ってアーベルが言った。

「返してくれ」

掴みかかるが男に再度殴られて倒れ込んだ。


「おいっ、しっかりしろ。殴り返せ」

シャラザールはさっきから必死に助けようと叫んでいるが全く少年には伝わらないし、男たちを止めようにも全く触れなかった。


「おい、これは何だ」

転がっている銀の十字架に男の一人が気付いた。


「止めてくれ。それは母さんの形見なんだ」

フェビアンが必死にすがろうとするが、男は

「ふんっ。そうかよ」

言うや、地面に叩きつけて踏みつけた。


バキッと十字架が割れる。


「そんな」

フェビアンは呆然とした。

そのフェビアンの腹に男の靴がのめり込んだ。

腹を抑えてフェビアンが転がる。

それを3人の男たちが殴る蹴るの暴行を加えた。


蹴り飛ばされて飛んできたフェビアンの体と怒りのあまり切れまくっているシャラザールの体が一瞬重なった。


ダンッ



凄まじい気が充満する。


魔力の無い男たちは気付かなかった。


「ふんっ二度と俺たちに逆らうんじゃないぞ」

男たちは立ち去ろうとした。


その男たちの真横を凄まじい爆裂魔法が突き抜けていった。

それは周りの建物を突き抜けていた。

遠くで爆発の音がした。

男たちが固まった。


「待てよ」

男たちが振り返ると怒りのオーラを巻き上げたフェビアンが立上がっていた。


「ヒィィィぃ」

男たちは驚いて腰を抜かした。

慌てて逃げ出そうとした1人の男はシャラザールが憑依したフェビアンの放った衝撃波で襤褸布のように吹っ飛んでいた。


「そこのガキ。色々と良くもやってくれたな」

シャラザールはゆっくりと近付いて行った。

アーベルは慌てて後退りする。

もう一人の男が逃げ出そうとしてまたボロ雑巾のように吹き飛んだ。


「ヒィィィぃ。許してくれ」

「俺が許してくれって言った時は全く無視して、本性出した途端に自分は助けてほしいってか」

ニタリとシャラザールは笑った。そして、軽く男の顔を張る。


バシーーーン


凄まじい音がしてアーベルの口から2、3本の歯が飛び出していた。


そして、叩きつけられた男の胸元を掴んで持ち上げる。


「頼む。金はおいていくから」

男はとぎれとぎれ言う。


「はんっ何か言ったか」

シャラザールは男を揺さぶる。

「いえ、財布を有り金を全部置いていきます」

アーベルは慌てて言い直した。


「そんなのは当然だな。どのみちお前は生きてここを出ていけないんだから」

シャラザールの憑依したフェビアンはニタリと不気味に笑った。


「頼む。なんでもする。だから」

「貴様のせいで何人の奴が今まで死んでいったんだ」

「いや、俺は殺してはいねえ」

「何人の女を奴隷商人に売った」

「そんなことはしてねえ。俺には妹がいるんだ。そんな非道なことは」

「他人がどうなってもいいんじゃないのか」

ニタリとシャラザールが笑った。

「頼む。俺が死んだら妹が」

「じゃあ俺がどうなっても良かったと」

「すまん。もう、酷いことはしない」

「他の者にもか」

「判った。二度とこんなことはしない」

「俺の魔力を他の奴らに言うなよ。これは秘密だ」

「判った」

「もし他の奴らに同じような事をしていると知ったら今度はお前を消すぞ」

コクコクとアーベルは首を振った。


「今回は殺すのだけは止めてやろう」

シャラザールは男に雷撃を浴びせていた。

「ウッ嘘だろ」

男は裏切られたという驚愕の顔をして倒れ込んだ。


「ふんっ。約束通り殺してはいないさ」

シャラザールはそう言うとフェビアンから抜け出した。


フェビアンははっとする。

周りを見ると建物が大きくかけて燃えていた。


そして、自分に絡んできた奴らはボロ雑巾のようになって倒れていた。

そして、自分の手にはその誰かの財布を握っていた。


「えっ」

慌てて逃げようとしたフェビアンの前に騎士たちが駆け寄って来た。


「貴様か、こんな騒ぎを起こしたのは」

「いえ、違います」

「嘘をつけ。どう見ても貴様がやったんだろう」

フェビアンはこうして拘束された。

彼が後にボフミエ帝国からマーマレードに留学するフェビアン・クライハイムだった。

フェビアンについては

皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!

https://ncode.syosetu.com/n8911gf/

第4章参照下さい。

地上に落とされてもシャラザールはそのままです

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この話の

シリーズ一覧

はこちら

『シャラザール帝国』

https://ncode.syosetu.com/s1987g/
クリスとシャラザールのお話です。

私の

次回作品

の小説はこちら

『好きになったイケメンは王子様でした~失恋から始まるシンデレラ物語・悪役令嬢もヒロインにも負けません』

https://ncode.syosetu.com/n2724hj/

平民で薬屋の娘リアは幼馴染のカートの勧めで特技を生かして王立学園に行くことに。でも、そこには王子様やお貴族様がいて、出来るだけ避けようとしたのに、何故か王子らと親しく?なってドンドン深みにハマっていきます。悪役令嬢や可愛らしい女の子が何を勘違いしたのかリアに絡んでくるけれど、リアが好きなのは王子ではなくカートなのに。でもそのカートの動きも怪しくて・・・・
カートの正体がわかった時、リアは・・・・。
王立学園で繰り広げられるドタバタ恋愛・シンデレラ物語。

ネット小説大賞運営チーム様から感想いただきました。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
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