プロローグ2 シャラザールは皇太子をボコボコにしました
クリスが一口ワインを飲んだ時、一瞬にて戦神シャラザールが来臨した。
しかし、エドワードは何も感じなかった。
そのままクリスに抱きつこうとして
「おのれ、何をする」
一瞬にて肘鉄を胸に食らう。
「ぎょえええ」
そして、次の瞬間パンチをものの見事に顔に浴びて、木の扉を突き破って飛び出していた。
そして、その瞬間、エドワード、改ディオニューソスは前世の記憶を完全に取り戻した。
天界の最後の想い出はこのシャラザールにボコボコにされて地上に叩き落されたことも。
「何故、貴様が、貴様が可憐なクリスに憑依してるんだ」
エドは叫んでいた。エドワードは可憐なクリスが男女のシャラザールに変わっていたことを初めて知った。そして、自分がこの男女に欲情していたことも……。
あのクリスが男女のシャラザールに変わるなんてなんて理不尽なんだ。
「ふんっ。余が可愛い子孫のクリスに憑依して何がおかしい」
シャラザールはずいっとエドに近づいた。
「いや、待てシャラザール。ぎゃあああ」
エドは再度シャラザールに殴り倒された。そう、エドがシャラザールに叶う訳はなかった。
「おのれディオニューソス。貴様、余に何をしようとした」
怒りで切れているシャラザールはエドワードを更に殴りつける。壁にエドワードは叩きつけられた。
最悪だった。というか、絶体絶命のピンチだった。そう、このシャラザールには絶対に敵わないのだ。エドワードは死をも覚悟した。
「シャラザール様。お待ち下さい」
更にエドワードを殴ろうとしたシャラザールはジャルカに止められた。
「ええい、ジャルカ、よくも貴様余を嵌めたな」
シャラザールは今度はジャルカに殴りかかろうとした。
「何をしているのですか」
そこに王妃の叫び声が聞こえた。
その瞬間、ビクッとシャラザールが震えた。この声は王妃だ。クリス相手に散々愚痴を言ってくる。こいつだけは苦手だ。シャラザールは即座に逃げることにした。
そして、巨大な威圧感が消えた。
「えっ」
ジャルカは唖然とした。ジャルカの腕の中のクリスは寝ていた。
ジャルカは王妃を驚いた顔で見上げた。
「どうしたのです?」
王妃はジャルカの驚いた顔を見て不審に思ったが、倒れているエドワードを見て悲鳴を上げる。
「ちょっと皇太子殿下がお酒が過ぎられたようで」
「ひょっとして飲んだ勢いでクリスに襲いかかったとか」
厳しい表情で王妃が言った。
「さあ、そこは判りかねますが…」
ジャルカは適当に誤魔化す。
「ギルティ。あなたきっちりと皇太子を見ていますか」
後ろにいた近衛師団長を見て王妃が言った。
「いえ、申し訳ありません」
ギルティは謝った。
「明日朝一番で太子を私の所に寄越しなさい。みっちりと鍛え直します」
きっとして王妃は言い切った。
どの道こちらにもまた飛び火するんだろうな。
緊急退避をしたシャラザールは思わずため息をついた。
可愛いクリスにシャラザールが憑依したこと、これがクリスがフラれた遠因です。
最もあまりのショックにエドは詳しいことは忘却の彼方に
しかし、深層心理で嫌いになっていきます。




