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賢者様を探して!! ~少女と眠れる湖の女神~  作者: オカメインコ
第2章 魔術学校の雛罌粟
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6話 初めての授業(前編)


 「ーーそれじゃあ皆、授業の準備を宜しくね」


 アマーリエはそう言い残すと、自身も授業の準備の為に教室から出て行った。


 「ーー確か、今日は初日だから授業は午前中だけなんだよね」


 「そうだね」


 雛罌粟の半ば独り言の様な問いにシュトリが答えてくれる。


 そんな和やかな少年少女の元へ、そろそろと近付く人影があった。


 「ーーあ、あの……」


 「へっ?」


 突然の事に虚を衝かれた雛罌粟がそちらに顔を向けると、そこには見慣れない顔をした少女が一人立っていた。


 黒髪の三つ編みお下げが可愛らしい少女はその顔立ちからして雛罌粟と同じく東アジアの出身であろう。


 「ーーは、初めまして。私は(ホァン)一華(イーファ)。えっと、雛罌粟ちゃんは日本から来たんだよね?」


 緊張しながらも何処か嬉しそうな一華に雛罌粟も頷く。


 「うん、日本人だよ」


 「良かった。あんまり東アジアの子って此処にいないから嬉しくって。私、中国出身なの。良かったら仲良くしてね」


 「うん、こちらこそ宜しくねっ!!」


 雛罌粟が満面の笑みで答えれば、一華も嬉しそうに頷いた。


 そんな中ーー。


 ふと、クラスがざわめく。


 近付く足音に気付いた一華がそちらに視線を向け、硬直した。


 そこにいたのは金髪の豪奢な巻き髪の少女、ティアラーゼだった。


 「ーーティアっ!! えへへ、ティアとも同じクラスになれて本当に嬉しいっ」


 「うん、私も嬉しい」


 全身で喜びを表現する雛罌粟にティアラーゼも微かに口元を綻ばせた。


 「分からない事があれば何でも聞いてくれて良いから」


 「有り難う。頼りにしてるねっ!!」


 そうして少女二人が笑い合う中、クラスのざわめきは最高潮となっていた。


 「ーーおい、まじかよっ。バベルハイズさんから声を掛けに行ったぞ……っ!?」


 「ーーあの二人、どういう関係だよ……っ!?」


 そんなざわめくクラスメイト達をよそに、ティアラーゼが口を開く。


 「一時間目は魔術基礎だよ。雛罌粟は個別授業の筈でしょう? もう移動しないと間に合わないよ」


 「ーーあっ、そうだった……っ!!」


 ティアラーゼの言葉に雛罌粟は慌てて席から立ち上がる。


 魔術学校に入学した割には全く持って魔術に明るくない雛罌粟の為の特別措置であった。


 「初日から遅れるなんて流石に不味いしね……っ。急がないと……っ」


 「うん、行っておいで。今日の授業が終わったら後で商店街に一緒に食事に行こう。良ければ、黄さんも一緒に」


 「わ、私も良いの……っ?」


 ティアラーゼからの突然の提案に一華が目を見開く。


 「嫌なら無理にとは言わないけれど……」


 「う、ううん……っ。嫌だなんて、是非ご一緒させて貰いますっ」


 ティアラーゼの言葉に慌てて頭を振る一華。そんな二人に雛罌粟は笑顔を向けた。


 「じゃあ、一華ちゃんも一緒だね。楽しみだなぁ」






*****


 初めての授業で遅刻する訳には行かないと、雛罌粟は筆記具を手に廊下を急いだ。


 (ーー初めての魔術の授業、楽しみだなぁ)


 アマーリエから特別講習は受けていたものの本格的な授業はこれが初めてなのだ。


 まだ見ぬ不思議との出会いに雛罌粟の胸はときめいた。


 目指すは医務舎だ。






 「ーーおはようございますっ!!」


 指定の部屋の扉を開けた雛罌粟が元気よく挨拶する。


 すると室内で何やら作業に勤しんでいた人物が顔を上げ、笑顔を浮かべた。


 「ーーやぁ、雛罌粟ちゃん。おはよう」


 リオネル・ブランーー以前、雛罌粟が初めてこのマギア・グランデに来た際に検査と称して採血を行った人物である。


 アマーリエから事前に聞かされていた通り、彼が雛罌粟の特別授業を担当してくれるらしかった。


 リオネルの元に近付いた雛罌粟がその手元を覗き込み、声を上げた。


 「ーーあっ。リオネル先生、また『あにまる村』やってるの?」


 「あぁ、いやこれはね……っ」


 雛罌粟に指摘されたリオネルは慌ててゲーム機の電源を落とした。一応、リオネルも勤務中である。見付かったらどうするのか。


 「ーーもう。駄目だよ、リオネル先生ったら。最初に来たのが私じゃなかったら怒られちゃうよ」


 「いや、ごもっとも……っ。内緒にしてくれるかい? 頼むよ、雛罌粟ちゃん……っ」


 「後生だからアマーリエには言わないでくれ」と手を合わせるリオネルに雛罌粟も困った様に眉を下げた。


 きっと雛罌粟が今回の事をアマーリエに報告すればリオネルにはアマーリエの鉄拳制裁が下るだろう。


 それはちょっと可哀想かもしれない。


 「ーーじゃあ、今回だけだよ?」


 「有り難う、雛罌粟ちゃんっ!!」


 リオネルは心底ほっとした様にそう言うと、雛罌粟を部屋の奥へと促す。


 「それじゃあ雛罌粟ちゃん、早速始めようか」


 リオネルの言葉に雛罌粟も改めて気合いを入れた。


 「はい……っ!!」


 いよいよ、魔術の授業である。






 「雛罌粟ちゃんは休みの間にアマーリエから魔術の基礎は習っていたんだったかな?」


 「はい、一応は……」


 雛罌粟は休みの間にアマーリエから受けていた特別授業を思い出しながら、口を開く。


 「ーーえぇっと、魔力因子を作れる『生きた魔力炉』を持っている人が魔術士なんだよね。それで魔力因子には2種類あって、普通の魔力因子と特別な属性因子がある……」


 「うんうん、そうだね」


 満足げに頷くリオネルに雛罌粟は更に記憶のメモ帳を紐解く。


 「あとは、魔術で出来る事は既にある物の状態を変える事で、何も無い所に突然物を出したり、反対にそこにある物を完全に消してしまう様な事は出来ないって習ったよ」


 「そうそう、その通りだね。それじゃあ今日はその辺りのおさらいも兼ねてもう少し基礎の勉強と、後は少し実技もやってみようか」


リオネルは雛罌粟に部屋の中央にある椅子に座る様に促しつつ、壁際に置いてあったホワイトボードを持ち出して来た。


 そんなリオネルの様子を見守りつつ、雛罌粟は少しワクワクしていた。


 (実技かぁ、何をするんだろう……。ちょっと楽しみ)


 「じゃあ、始めるよ」とリオネルがホワイトボードにマーカーを走らせる。


 「雛罌粟ちゃんも知っての通り、魔術士を魔術士たらしめているのは生きた魔力炉の存在だね。


 この魔力炉では日々大量の魔力因子が作られていて、これが全身の血管を巡っている訳だ」


 「はい」


 「それでこの魔力因子には通常の魔力因子と属性因子がある訳だけど……今回は通常の魔力因子について話をしていくよ」


 そう言いながら、リオネルがホワイトボードにあまり上手いとは言い難い絵を描いていく。


 「まず、身体中を巡っている魔力因子……これをα(アルファ)因子と言うんだ」


 「あるふぁ、因子……」


 聞き慣れない単語に雛罌粟がすぐさまノートにメモをする。


 「そう、α因子だよ。このα因子は二酸化炭素なんかと同じ様に体外に排出されるんだけど、その仮定でβ(ベータ)因子へと変化するんだ」


 「えぇっと、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す様な感じかな」


 いきなり理科学や生物学の様相を呈して来た授業に、雛罌粟が必死に頭を巡らせる。


 「そうそう、良い例えだね。まさにそんな感じだよ」


 嬉しそうに言うリオネルに、雛罌粟もほっと胸を撫で下ろす。


 「じゃあ、私もそのα因子をβ因子にして身体の外に出してるって事?」


 「あぁ、そうだよ。僕も同じさ」


 「へぇ、そうなんだ……」


 今まで全く知らなかった自分の身体の仕組みを一つ知った雛罌粟は酷く不思議な心地になった。


 「それで此処からが大切な所なんだけど……」とリオネルが赤と青のマーカーを握る。


 まずは人間の絵。胸の辺りに描かれた星印が魔力炉で、そこから赤色の丸印が身体の隅々まで描かれる。


 続いて人間の絵の外側には青いマーカーで丸印が沢山描かれる。


 赤い丸印がα因子で、青い丸印がβ因子という事だろう。


 「魔術士はα因子とβ因子を反応させる事で魔術を行使するんだよ。


 この時にα因子とβ因子を紐付けて反応の方向性を決めるのに使うのが詠唱詩句とか呪文と呼ばれるものなんだ」


 「えいしょうしく……」


 此処までの間にも、雛罌粟はアマーリエが魔術を使う際に唄うように呪文を唱えていたのを見てきた。おそらくあれがそうなんだろう。


 しかし、此処でふと雛罌粟の頭に疑問が浮かんだ。


 「あれ? α因子は身体の外に出る時にはもうβ因子になっちゃってるんだよね? どうやってα因子とβ因子を反応させるの?」


 雛罌粟の疑問にリオネルはますます嬉しそうに顔を輝かせた。


 「いやぁ、雛罌粟ちゃんは鋭いね!! そう、そこが肝なんだよ。


 α因子は特に意識しなければβ因子として体外に排出されてしまう訳なんだけど、魔術を行使する為にはα因子をα因子のままで体外に排出しなければいけないんだ」


 「えっ、そんな事出来るの?」


 「あぁ、出来るよ。でも、これは感覚的なものだからコツを掴むまではちょっと大変かもしれないね」


 「コツかぁ……」


 (ーー自転車に乗る様な感じかな……。上手く出来るかちょっと心配……)


 そんな雛罌粟の心配をよそにリオネルは更に言葉を続ける。


 「ーーまぁ、つまり基本的に自分の周りでしか魔術は行使出来ない訳なんだ。


 ちなみにα因子としてそのまま体外に排出された魔力因子は魔力光として視認出来るんだよ。


 この光は人それぞれな物なんだけど、雛罌粟ちゃんはまだ見たことないかな?」


 「ティアとアマーリエ先生のは見たことあるよ。ティアのはルビーみたいな赤い光で、アマーリエ先生は青空みたいな色だった。二人とも凄く綺麗な光だった……っ!!」


 思い出しながら興奮気味に雛罌粟が言えば、リオネルは満足げに頷いた。


 「そうかそうか。それなら話は早いね」


 リオネルはそう言うとマーカーを置いて雛罌粟を椅子から立ち上がる様に促した。


 「説明した通り、魔術の行使にはα因子の体外放出ーーつまり、魔力光の放出が必須なんだ。魔術初心者の雛罌粟ちゃんも先ずは頑張ってこれを覚えよう」


 「ーーはいっ!!」


 自分もティアラーゼやアマーリエの様に綺麗な魔力の光を出せる様になるーー雛罌粟の胸は不安と期待で高鳴った。


とんでもなく久し振りの更新で申し訳ありません。ここからまた少しずつ雛罌粟の物語を書いていきます。

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