プロローグ あの人と私
あの人と初めて出会った時の事を今でもよく覚えている。
“地“の魔術の始徒であるマルジンには7人の弟子がいた、というのは魔術士ならば誰もが知っている有名なお話。
その7人の弟子の内の一人が私の一族の祖だった。
とても高貴な魔術士の家柄で、その家格は同じくマルジンの弟子の一人を祖に持つメイフィールド家にも引けを取らないものだ。
そんな魔術の名家に生まれながら“地“の魔力を持って生まれなかった私は、家では完全にいらない子扱いだった。
私とは逆に“地“の魔力を持って生まれた弟にも馬鹿にされ続けて、色々な事に嫌気が差した私は遂には家出をした。
数日してから少しは騒ぎになっているかと様子を見に家に戻ったら、何と私は事故で死んだ事になっていたのだ。
もう完全に自暴自棄になった私は、町外れにある廃墟から飛び降りて死ぬ事にした。
実際に廃墟の屋上から下を見下ろすと足が震えたけど、様子見に戻った家の窓越しに両親と弟が楽しそうに笑っているのを思い出したら無性に悲しくなって、気付いたら自分の体を空に投げ出していた。
体を投げ出した時、もの凄く後悔をした。何で私ばっかりこんな目にあってるんだって思ったし、両親に愛されている弟が憎たらしくて仕方無かった。
私はもう死んじゃうんだって思った。だって、自分で飛び降りたんだから。
でも、何時まで経っても地面に叩き付けられる痛みも何もなくて。そこで漸く私は誰かに抱き留められている事に気付いた。
第一印象は変な格好の外国人の女の人だった。今でこそあれが小袖と袴だって分かるけど、あんなのそれまで見た事も無かったから。
彼女は私に「死ぬ前にもう一度よく考えなさい」だとか「色々な人と話をしなさい」だとか「美味しい物を食べなさい」だとか色々言って来て、最後に「それでも考えが変わらないようなら、君の好きな様にしなさい」とだけ言い残してその場から立ち去ろうとした。
正直、生きていて良かったと思っていたし、もう一度飛び降りるなんて出来そうに無かったけど、言い様のない怒りを誰かにぶつけたくて、気付いた時には立ち去ろうとする彼女の背中に飛び蹴りを喰らわせていた。
地面に盛大に倒れた彼女は、泥だらけの顔で目を丸くしていた。
そんな彼女に私はこう言い放ったのだ。
「ーーあんたのせいで死に損ねちゃったじゃない……っ!!責任取って私の面倒見なさいよ……っ!!」
今思い出すと少し恥ずかしい。けれど、何よりも大切な私の思い出だ。
第二章開幕です。宜しくお願い致します




