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7.異形のモンスター

 蜘蛛のように腕が八本もあり、それぞれが大樹の幹ほどある。それなのに胴体は痩せ細っていたり腕の付け根が異様に細かったりとバランスが悪い。そんな異形のモンスターをどう倒せばいいのか見上げて観察する。

 しかし考える暇さえ与えられず、その大きさからは予想もつかない程の速さで腕が振り下ろされる。完全に敵だと認識されたらしい。


『斬るよ!』

「……お、おう!?」


 振り下ろされる拳を力いっぱい一本の剣で切り裂く。案外と硬度は無くすんなりと刃が通り、軌道をずらす事が出来た。


 ――ドゴォ!


 その腕は俺の真横スレスレに過ぎていき、地面を殴打する。

 中々めり込んで引き上げられないらしい。


 今なら身体を!


 そう思い立ち腕を伝い、根元まで走り痩せ細った胴体に刃を突き刺そうとするが、何層にもなる黒いバリアによって弾かれる。あまり時間もないため腕の付け根を切り落とす。するとそのバリアの層が一つ破れる。

 更にその隣の腕に飛び移りもう一本切り落とした。

 もう一本、行けるか? とも思ったが、此処で暴れだし地面に向かって真っ逆さまに落とされる。


「魔翼を頼む!」


 即座に魔翼を展開してもらい、地面への衝突を避ける。落下死も視野に入る位に高いのだ。

 もう全て討伐までの手順は分かった。


『いきなりガンガン行き過ぎよ……』

「だが結果オーライだろ?」


 切り落とされた腕は黒く炭のようになっていき、次第に消えて無くなる。


「それにあのバリア、腕を全て切り落とせば無くなる」

『つまり、こういう事ね!』


 俺は魔翼の力で飛び上がり、攻撃を避けてもう二本連続で切り落とす。


「攻撃は一長一短。単純で火力こそ高いもののこちらの方が早ければ当たることはまず無い!」

『戦闘中に解析するなんてさすがね?』

「伊達にパーティの肥やし役をやってないってわけよ!」


 まさかこんなところでパーティにいた頃の特技である敵の観察解析が生きるとは思わなかった。


「おらぁ!」


 そして右の腕を全て切り落とす。残るは左の二本。そこまで難しい話では無い。


『行っちゃえぇぇ!』


 勢いに乗って左の腕を全て切り落とすことに成功した。

 案の定全てのバリアは破壊されていき、痩せ細った胴体は地面と衝突し黒い血を弾けさせ絶命した。


「終わった……か?」


 こんなの強いモンスターがあのランクに収まるとは到底思えないが、とにかく全て討伐出来たということで良いだろう。


『見て! 宝箱があるわよ!』


 まるでダンジョンの報酬かのように宝箱が出てきた。もしかしたら本当はダンジョンなのかもしれないな……。


「その前にあの少女は……」


 空いた扉を見るとそこにはしっかりと幽霊の少女が居た。


「お、おわった……の?」

「あぁ。この通り終わったぜ」


 あのモンスターを倒したというのにも関わらず特になんの変化も無いようだが。


「なにか変化はあるか?」

「う、うぅん。今のところは何も……だけど、此処とか行けなかった場所にも行けるようになっているから……地縛霊じゃなくなったのかも……?」


 幽霊であることには変わりないが、それでも地縛霊ではなくなったらしい。

 解決した、ということでいいのだろうか?


「そうか。どう生きる……まあ死んでいるんだが……これから先どうするかは君次第だ。頑張ってくれ」

『さあさあ宝箱の中を見てみましょーよ!』


 いつもの上機嫌なラネアに戻る。何故入る前はあまり乗り気じゃなかったのだろうか。


 まあそんなことよりも今はお宝だ! さあ何が入っているのだろうか!


「……お、おぉおおお! ……おん?」


 大きな宝箱の中には謎の腕輪が入っており、それ以外は特に何も無かった。

 見るからにこれは呪いのアイテムだろう。装備したら呪われる、そういった類の物である気しかしない。


「そ、それは……死霊術師の腕輪……」

「死霊術師の? それって君の親の?」

「う、うぅん、違う。多分この腕輪をはめると魂を消費して死霊術を使うことが出来る……というものだと思う」

「うーん……死霊術とかあんまり知らないからなぁ」


 それになんだか怖いというイメージが強い。ギルドにも死霊術を扱う人がいたのは覚えているし話したこともあるのだが、やっぱりと言うべきか異質な感じだった。


「た、魂蓄積できる体質の私がいれば……充分に死霊術を扱えるよ……?」

『ほほー! 凄い収穫じゃない? 死霊術師は魂を蓄積できる体質じゃないとなれないんだけど、彼女さえいれば……うひひ』


 何故か凄い食い気味になっている。死霊術を使うのは俺の身体だと言うのに……。


『それに悪魔と死霊の力を扱える正義の冒険者だなんてすっごいかっこいいじゃん!』


 かっこよさ重視かよ……とはいえこのまま少女を見放してしまうのも可哀想だ。元から死んでいる為死にはしないだろうが孤独に逆戻りだ。


「じゃあ……付いてくるか?」

「……い、いいの?」

「あぁ。多分手品のお姉ちゃんにも会えるぞ」

「あ、ありがとう……!」


 こうして新たに魂を蓄積できる体質の幽霊少女と死霊術師の腕輪を迎えた俺らは既に暗くなった道を進み、街へと戻る。

 と、既に祭りが開催しており、いつも以上に賑わっていた。

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