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6.幽霊屋敷の少女

「……で、ここがその幽霊屋敷か」


 分かりやすい地図のお陰で比較的早く来ることが出来たのだが、ここら一帯の空気や魔力の流れが非常に気持ちが悪い。

 それに、全くラネアからいつものようなテンションの高さを感じない。


「どうしたんだ?」

『うぅん。なんでもないよ? ささ、レッツゴー!』


 ギイィっと開けた先には大広間があり、中央に二階に上がる大きな階段が備わっている。そこに地図書き冒険者が言っていた少女がちょこんと座っていた。


「手品の地図書きお姉ちゃん……?」


 前髪で目が隠れたその少女は顔を上げると、初めにそのような事を言ってきた。

 喋ることに慣れていないのかはたまた恥ずかしいのかとぎれとぎれに言葉を探しながら話している様子だ。


「……じゃないよね。あ、あはは……ごめんね。ここに居る魔物を……討伐しに来たの?」

「まあそうだな」

「じゃあ幽霊である私も……討伐されちゃう?」


 前髪の隙間から潤んだ瞳が見え隠れする。幽霊とは思えないほど実態がしっかりとしている。それだけ生前の念が強いということの表れなのだろう。

 だが、俺は地図書き冒険者からも幽霊の少女を救って欲しいという依頼を受けた訳であり、討伐することが救いだとはとても思えない。

 幽霊となった根本的な問題を解決しないことには何も。


「討伐はしないよ。地図書きお姉ちゃんから君を救って欲しいって言われたからね」

「そ、そうなんだ。でも私どうすればいいのか全く分からないの……それに……此処は幽霊が多いよ?」


 気が付くと周りには無垢の幽霊が部外者を駆除しようと集まってくる。

 聖水が入った瓶の蓋を手際良く開けて剣にかける。これで実態を持たない幽霊に対しても斬撃が通るようになる。


「……はああっ!」


 襲いかかってくる幽霊らを全て一撃で切り裂く。やはり剣を振るう力もそうだがキレが段違いだ。それに感覚も研ぎ澄まされているようで、まるで隙がない。

 斬られたそれらは黒い蒸気となって消えていき残るのは荒んだ布切ればかりだがこれも歴とした素材である為、一段落着いたら回収しよう。


「……よし、どうだ? まだ居そうか?」

「う、うん。まだ居る」


 何かが少女の中に蓄積されている様な気がしてならないのだが。この場合、行き場を無くした魂が全て少女の中に……。

 考えるのは後だ。今はとりあえず目の前の敵を倒せばそれでいい。


「はぁっ……はぁっ……どうだ!?」

「あ、あとちょっと」


 かれこれ10分程は幽霊を斬っているつもりだが何処からか湧いて出てくるのだ。

 そして、最後の一体を斬る。

 いくら何でもこれは敵の数が多過ぎる。範囲的な攻撃技があれば別だったが……。


「お、おわったよ……?」

「なあ、魂を回収でもしていたのか?」

「……う、うん。してた」


 そんなことを聞いても別にどうでもいい事だとは思うのだが。魔物を討伐し終えたらしいので、後は少女を救い出すだけ。しかし助け出す方法すら全く分からないのである。


「こ、この幽霊達は……元は私の魂の欠片を使って作られたもの……なの」

「つまり君が元凶ってことなのか?」

「う、うぅん。ち、違うよ。地下に行けばどうなっているか分かるかも……」


 階段から立ち上がると、着いてきてと言わんばかりに歩き出す。実際には歩いているのではなくこちらから見たら軽やかに滑っているのだが。

 とりあえず立ち往生していても仕方が無いので着いていく。


「……む、昔の話……いいかな?」

「あぁ」


 歩きながら、話を聞くことにした。


「わ、私はこの屋敷で産まれた……死霊術師の子供……」


 言われればかつてこの森には死霊術師が住み着いていた。と話だけは聞いたことがあったな。きっとその頃から居たのだろう。


「わ、私に与えられた使命は有り余る魂の貯蓄庫。家族として、子供としての愛情は一切与えられなかった……」


 辛い過去を思い出すかのように、暗く落ち着いたトーンで話す。


「あ、ある日、死霊術師は私を触媒にかけて……大掛かりな死霊術を展開した……」


 そして、少女は振り前髪を横に流してこちらを見る。


「こ、この先に居る魔物が……生前の私だったもの。私を倒せば……私も救われると思う」

『凄い邪悪な魔力を感じるわね。気を引き締めた方がいいかも』

「わかった。じゃあ此処で待っててくれ。案内ありがとうな」

「う、うん……頑張ってね……!」


 可愛いらしい笑顔を見せて俺の後ろへ行く。

 ここからが本番という訳だ。今一度念の為に聖水を剣に振りかける。

 意を決した俺はその扉を両手でグイッと押して開く。その先に広がっていたのは大きな空洞。それと巨大な魔法陣だけだった。


 ――ガタンッ


 だが、次の瞬間扉は自動的に閉まり、地面に書かれた魔法陣は紫色の光を帯びていく。

 そして次第にその魔法陣から姿を表したのは、一言で言えば肥大化した異形のモンスター。人だった頃の原型こそあれど基本的にそれはもう人ならざるもの。

 これが幽霊少女の生きていた頃の身体を触媒として生み出されたモンスター。これを倒せば救われるかもしれない。

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