5.ギルドカード
『店主さんはもう痺れを切らして仕事に行っちゃったよ? ほーら起きるの! 早く!』
あと少しだけ。とも思ったがいい匂い漂ってきたので目を覚ます。
本当に俺ってやつはどこまで食に飢えているのやら……。
『そーいえばなんか今日の夜は祭りがやるらしいね?』
「そうなのか? ここの事情はよく知らないからなぁ……」
祭り、かぁ。あんまり縁がないんだよなぁ。
今日も今日とてとても栄養バランスの良い朝食だ。
幸せとはこういうことを言うのだろう。
「いただきます」
――
「ご馳走様でした」
『さあ出発よ! 今日はギルドで新しいギルドカードを作ってもらいましょう!』
「え、えぇ……まあいいか」
薬草をかじり聖水振りかけ、キューブは装甲へと変わり俺を包む。
全身を映せる鏡があった為、見てみるとやはりと言うべきか、全身くまなく覆われている。ちょっと刺々しくて真っ黒で……なんだか禍々しい。まるで暗黒騎士の様。
これはこれで男心くすぐられるんだよなぁ。不思議だ。
注目の視線を浴びながらもギルドに入る。
「ドラゴンをソロ討伐したあの……」
「何処出身の人なんだろうな……」
早速噂になっているようだ。見慣れた光景だったギルドが全く別物のように感じる。
「あの、ギルドカードを発行して欲しいのですが」
「来ると思いまして事前に作っておきました! ステータスカードはどうされますか?」
そう言い手渡される。名前は未記入だがそんなものだ。後で自身で書くケースがほとんどである。
それにしても手際が良い……。
しかもなんと冒険者ランクがA+となっている。活動域が広がるってものだ。ボーナスもでかい。
『じゃあせっかくだし作ってもらいましょう』
「お願いします」
「それではこちらのオーブに手をかざしてください」
差し出されたオーブに言われた通りに手をかざす。そして、受付嬢がカードをかざすと、それが発光し始めステータスカードへと変化する。
『あっ! 偽装し忘れた!』
「……あれ、壊れてるのかな?」
そう言いもう一度同じようにカードをかざす。すると今度は納得する数値が出たのかそれを渡してくる。
正八角形のグラフからなるステータスカードで、項目はそれぞれ最大体力、最大魔力、物理攻撃と防御、魔法攻撃と防御、俊敏性、運。と言ったようになっている。
ドラゴンソロ討伐はできそうな感じではある。
「もう一方の方もくれませんか?」
「ど、どうぞ」
……確かにおかしい。だが本来のステータスはこうなっているのだろう。
何故か体力だけは周りの高水準な値に対して圧倒的に低く、魔力はグラフを逸脱してしまっている。他の値は全て装備とラネアのおかげで跳ね上がっていた。
これは具体的な数値を表しているのではなく、個人の伸ばせる部分を簡易的に見るのが目的であるため、このグラフが変動することは努力以外では無いとされている#本気__まじ__#。特化した部分を育てるのもよし、バランスよく育てるのもよし。といったふうになっている。
グラフの横にはそれぞれのステータスの育ちやすさがランク付けされており、魔力はS+。体力はF-。その他はSと言った具合だ。HPにさえ目を瞑れば非常に良いステータスであると言える。
『ひょえー! 契約して憑依するだけでこんなにも!? これは天下も夢では無いのでは……』
ここまで良いステータスカードは見たことがない。恐ろしい。
「それでは良い冒険者ライフを」
人が多くいるクエストボードに行くと、バッと道が開かれる。
これは恐れられている……のだろう。誰もあの最弱冒険者だとは知りもしないで。
『ふむふむ。一番報酬が良いあの……屋敷の魔物の駆除にしましょう』
難易度はそこまで高くない、報酬もたんまりとある。だが、俺がギルドに入ってからずっと残されているクエストだ。
行ったことのある冒険者の話を聞くと、どうやら幽霊が出るらしい。 つまりお化け屋敷のようなものだという。
攻撃が与えられないアンデットということもあり、聖水等の道具が不十分だと意味が無い模様。道具を揃える為に使う金貨を加味すると普通のクエストと大差ないのである。
よって、このようにずっと取り残されているというわけだ。
『なるほどねぇ、出るんだ。まあ任せて! 聖水は幾らでも持っているもの!』
「じゃあこれをお願いします」
「えー……目的地はアルバス森林奥地の無人館……ですね。地図のご利用は如何なさいますか?」
え、なにそれ。そんな機能知らない! もしかして冒険者ランクが上がるとそう言った物まで使えるようになるとか……?
「じゃ、じゃあお願いします……」
「それでは金貨三枚となります」
あ、え、今の所持金は……金貨一枚……だがここで食い下がるのは……。
「と、したいところではありますが、A+の冒険者というのも数が少ないのでここはクエスト達成致しましたら無料とさせていただきます」
まさかの展開、これは有難い。
渡された紙には現在地から目的地までが書かれたものとなっていた。
「これって誰が作るんです?」
素朴な疑問を投げかける。
「移動魔法に長けているギルド専属の地図書き冒険者さんが作るんですよ。過去にこの依頼を受けた冒険者が辿り着けないまま失敗になった例がありまして」
はぁ~……そんなこと初めて知った。
流石に目的地に着く前に終わるなんて嫌だなぁ。
「では……」
小さくそう言ってギルドから出ようとしたその矢先。
向こう側から扉が勢い良く開かれる。
「地図書きちゃんただいま戻りましたー! おやおや? その地図は私が書いた地図ですね?」
出てきたのはメガネをかけた桃色髪で天然パーマが酷くかかっている少女だった。
真っ先に俺が持っている地図に目を向けると、両手を取り上下に思い切り揺らす。
「有難うございます! いや~こういう機会が少なくて。失礼でしたか?」
「べ、別に……それでは……」
関わると面倒臭いタイプの人だ。此処は早めに離れよう。
「そんな連れないこと言わないでくださいよぉ。そこの屋敷、私もちょーっとだけ気になったから入ってみたんですけどね? なんと居たんですよ」
幽霊が居ることはもう分かって居るが……一応聞こうか。
「幽霊の可愛い女の子が! いやービックリしましたね。どうやら地縛霊のようでして、もし出来たら助けてあげて欲しいな~と」
「分かりました。お任せ下さい」
「えへへ。頼みましたよ~?」
そう託されて、俺らはその屋敷へと歩みを進めた。