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ムザサとテュリオス

ムザサメインの三人称視点回です。


次回決着に持ち込めたらなぁ、とおもいます!

 

「マジかよ……」


 ムザサは驚嘆していた。目の前を暴れ回るボスモンスター、月影の使徒・ジュヴィスとサシでやり合うソウキの姿に。


 ……ソウキ。またの名を銀水晶。

 今や『カラミティグランド』のプレイヤーで、この名を知らぬ者は居ないのではないだろうかと思える程の存在(プレイヤー)


 ムザサ自身、ソウキとボスが一対一で戦う姿を見るのはこれで二度目だ。

 一度目は、突如現れたエクストリームボス、血塗られし人造神機・アトラフィとの一戦。


 あの一戦で、銀水晶(ソウキ)の知名度は一気にあの場に居たプレイヤーへと爆散した。

 そしてそのプレイヤー達から、他プレイヤーへと伝え渡り、更に知名度を加速させる。


 名実共に『カラミティグランド』のトッププレイヤーだった、『硯音(すずりね)』のエルド。


 そんな大物があの一戦だけ、存在が霞んで見えた程の次元の違う動き。

 それを銀水晶は周囲の視線の中、颯爽と披露して見せた。


 そして今回だ。

 自身のパーティの火力の要であるオウミ。その火力を凌ぐ、ソウキの手にする武器も気になるが……。


 ――普通じゃない。

 これが、ムザサのソウキに対して下した、純粋な評価。


「テュリオス、と言ったか」


「……なんだ?」


 自分のすぐ隣に居る、銀水晶のパーティメンバーであるこの剣士職の男。

 ……この男は、彼について何か知っているだろうか。


「あの男……。銀水晶は一体……」


 何者なんだ、と聞くのは何か変だ。

 そう思ったムザサは、言葉の途中で口をつむぐ他なかった。


「一体、何者であるか。と?」


「……」


 ムザサは静かに首を縦に振った。


「お前はどう思うんだ?」


「……銀水晶か?」


「そうだ」


「なんていうか、言葉にしづらい。

 状況判断や反応速度、プレイングの思考回路。およそ一般プレイヤーとは程遠く感じる面は多い。

 ……だが、そんな事は些細なひとつひとつの要素の組み合わさりに過ぎない。

 俺が銀水晶に対して抱く奇妙さというか、喉のつっかえるようなこの気持ち悪さは、あの動きだ。

 どう言い当てはめれば良いかわからないが、普通じゃない」


 ムザサは、ジュヴィスとソウキの戦闘を眺めながら、自身の内に湧いた言葉をテュリオスへと向けた。


「そうだな。アイツの動きは普通じゃない。だがそれがどうしたと言うんだ?」


「……」


 ムザサはそれ以上、何も言うことが出来なかった。

 それは今テュリオスの言った、言葉の通りであるからだ。


 普通じゃない。だから何なのだ。

 あれがソウキ、あれが銀水晶。ただそれだけの事。


 ソウキという常軌を逸したプレイヤーが居て、ボスモンスターを狩り殺さんと、自身の持ちうる全てをそのボスモンスターへとぶつけている。


 ――ただ、それだけの事。


「――何してんのさっ! 二人とも!」


 オウミがムザサとテュリオスへと向けてそう叫びながら、ソウキの元へと駆けていった。


 オウミの声を聞いてムザサははっとした。そう、今はボス戦の最中。

 のんびりと語り合ってある場合ではないのだ。


「行くぞ、ソウキが待ってる」


「あぁ。そうだな!」


 納得が出来た訳でもない。胸の内にある何かが取れた訳でもない。

 ……だがそんな事、今はどうでいい。


 パーティは違えど、あの銀水晶と共にボスモンスターと戦っているのだ。これほどに光栄な事は無い。


 ムザサはそんなひとつの幸福感にも似た何かを感じつつ、テュリオスと共にソウキとオウミに加勢すべく、月影の使徒・ジュヴィスの元へと走って行く。


 ――そして、そんなムザサの前を走るテュリオスの口元がひどく嬉しそうに緩んでいたのを、この場に居る全員が目にする事は無かった。


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