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競争だぜ?

 

「ふぅ。そんなに強い訳じゃあないんだな」


 二体の木型モンスターは、ハイディング・ツリーマンという名前だった。


 四本の太い根を器用に動かして、奇妙に移動してくる敵ではあったが、体の構造上小回りが利かないせいか、強さ的にはあまりパッとしなかった。


「今回はムザサに囮になってもらったお陰で楽に倒せたが、ここに居るモンスターは全て今のような感じでどこかに隠れていたり、何かに擬態していたりと、油断は出来ない」


 ルーアがこのフィールドで出会ったモンスターについての、簡単な特徴を教えてくれた。


 まずはたった今倒した、ハイディング・ツリーマン。

 擬態しているただの木の状態では、攻撃しても反応もなく、ダメージが通っている感じも無い。


 そしてその木がハイディング・ツリーマンだった場合、顔の部分となる場所に背中を向けると擬態が解け、攻撃を仕掛けてくる。


 だからパッと見ではただの木なのか、ハイディング・ツリーマンなのかの見分けをつける事は不可能らしい。


 次にハイディング・シェイド。

 コイツは説明を聞く限りでは、相当に厄介そうなモンスターだ。


 出現する時は、必ず誰かの背後から出現する、影のようなモンスター。

 物理耐性でもあるのか、オウミの連撃を受けても簡単には倒れなかったらしい。


 最後にグライディ・スパイダー。

 ハイディング・ツリーマンの枝葉の中に潜んでタッグを組み、空から糸玉を噴いて遠距離攻撃を仕掛けてくるようだ。


 この三体、どれもなかなかにクセがあるな。

 そして聞く限りでは、なかなかに登場の仕方がイヤらしい。


「なるほどな。この暗さもある。一気にフィールドの難易度が上がった感があるな」


「そうなんだよ! アトラリア砂道が優しく感じちゃうよね! もう!」


 オウミの言う事には賛同だが、この人数ならばそこまで苦戦する事は無いんじゃないかな。

 コットが居れば尚安定。といった所か。


「まぁ、攻略のし甲斐があっていいんじゃない? 誰かさんは」


「何だ椿? それは誰の事言ってんだ? 誰の」


「さぁ。誰の事でしょうね」


 輝虫の放つ淡い青の光が、俺に向けられた椿のニヤけ顔を照らしている。許せん。


 ……それからしばらく、ムザサとルーアに危険度の高い地点を教えて貰い、突然に襲い掛かるモンスター達に驚きながらも、俺達はプルトガリオ渓谷を奥へと進んでいた。


 俺はというと、合間合間で輝虫を回収していた。

 仮にコイツで何かアクセサリが作れるなら、後から皆で回収しに来よう。


「……結構奥まで来たな」


「ここで行き止まりだぁ」


 ……モンスターと戦いながら歩く事、三十分位か。

 プルトガリオ渓谷のミニマップは、とりあえず西側の最奥(さいおう)までマッピングする事が出来た。

 つまりはここが、ひとまず端っこって事だ。


 オウミが「ひと休みひと休みぃ~」と、はしゃいでいる。

 それは休んでいる事になるのか……?


 まぁただ、ここに来るまでに嬉しい発見もあった。

 ハイディング・シェイドからは、闇属性の錬成石(オークラント)がドロップした。


 低級の物ではあったものの、初の属性付き錬成石(オークラント)の直接ドロップには、思わずテンションが上がるというもの。


 そのうち俺は、この辺りのハイディング・シェイドを乱獲する事だろう。


「……どうする?」


 そして、マップの端に来たということは、絶対に「あるもの」と遭遇する。


 輝虫とはすこーし毛色の異なる青い光が、俺達の目の前に渦を巻くように輝いていた。

 それを俺は親指でチョンチョンと指差し、全員に尋ねた。


 青い光。そして「あるもの」の正体は、[転移の渦]だ。


「……行ってみよう。当たりならボスと戦えるし、ハズレならハズレで、一旦ここまでで探索を終われる」


「俺もムザサに同意見だ。準備はいいか? 二人とも」


「私は問題ない」


「俺もだ」


 椿とテュリオスは短い返事を俺へと返した。


 向こうも全員、準備は出来てるみてぇだ。

 パーティのリーダーである俺とムザサは、互いに頷き合い、共に[転移の渦]の前に立つ。


「おし、行くか。当たりだったら、競争だぜ?」


「銀水晶に勝てる気はしないけど、望むところだっ!」


 ムザサからは、気合い充分といった返答が返ってきた。ゲームたるや、こうでなくちゃな。


「っへへ。その意気だ。せーので行こうや。合図していいぜ?」


「オーケー。せーのっ!」


 そして、[転移の渦]へとアクセスした俺達の視界は、光に包まれるようにしてホワイトアウトした。


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