久し振りね
「久し振りね」
無愛想目な声が俺の方へと向けられた。だがこれがコイツにとっての″普通″なんだろうな。
この声を聞くのも、実にひと月振りというもの。
「一ヶ月振りだな。椿」
そう。今俺の目の前に居るのはあの椿だ。
チュートリアル期間で出会った、歌姫というユニーク職業に就き、エルフ耳を持ったアバターの椿だ。
「その人は?」
椿はテュリオスへと人差し指を向けている。
「コイツはテュリオス。俺のフレンドだ」
「そう。宜しくね、テュリオスさん」
「呼び捨てにしてもらって構わない。俺も椿君と呼ばせて貰う」
「私、一応女なんだけど……」
「コイツはそういう奴だ。気にするな。
しっかし驚いたぜ椿。まさか平日の昼間にログインしてるなんてよ」
チュートリアル期間の時、椿は土日しか時間が取れないと言っていた。
だが一昨日昨日と椿はログインしていなかった。
全く。アトラフィやらエリミネート・スパイダーやらオルグファスやら、楽しい敵と遊んでいたってのによ。
俺がログインしたら、椿のフレンドステータスがオンラインになってたもんだから、びっくりしてメッセージ送っちまったぜ。
「今は結構、仕事が落ち着いてるの。それで? 今日は何と戦いに行くの?」
「お前もお前で、俺の事を戦闘狂だと思っていたな。そういえば」
「違うの?」
「違ぇよ!」
……そして俺は、今日の予定を椿にざっと教えてやった。
「……ふぅん。新フィールドね」
椿は対人戦には興味を示さなかった。意外だな。
「スキルツリーはサクッとでいいから、目を通しておけよ」
「わかったわ」
テュリオスと椿にパーティ申請を送る。それが受諾され、とりあえず俺達は三人パーティとなった。
「コットはー……、居ないか。椿、とりあえずお前の色々をすっ飛ばして、新フィールドにチラ見しにいくからな」
椿が装備出来るのは長剣と短刃剣だったか。
そうなると、武器的にはアトラリア砂道は微妙かもしれないな。
まぁ椿には歌もある事だ。しばらくはブルーウルフサーベルで頑張ってもらうとしよう。
「それは良いんだけど……。大丈夫なの? レベル差とか、装備の能力とか。
私、今日がアップデート後の初プレイよ」
「まぁなんとかなるだろ。それを測る為のチラ見でもあるけどな。
一通り暴れたら、レベル上げに付き合ってやるよ」
「それはどうも。ところで、この三人で行くの?」
「とりあえずは、な。残りのメンバーは、今のところメッセージ待ちだ」
俺はコットとアスティへと、ログインしたら知らせるようにとメッセージを送っておいた。
「スキルツリーには目を通したから、私はもう行けるけど」
「おし! そんじゃ行こうぜ。新たなボスが俺達を待ってる」
「……また言ってる。そういえば、ま~だガラス製武器使ってるの?」
「うるせぇ。ガラス製じゃねぇ」
「……ソウキが会話で先手を取られているのは、初めて見るかもしれないな」
おいこら、愉快な眼差しでこっちを見てんじゃねぇぞテュリオス。コイツの相手は大変なんだ。
「とにかく行くぞ。アトラリア砂道とは出る門が違うみてぇだ」
バリトンの全体マップを開いてみると、新たに開通した門らしき場所に赤い線が引かれていた。
アトラリア砂道へと続く門と同じ表示形式だ。
他のプレイヤーもちらほらと、この門の方へと向かって行ってるな。
俺達はそれに続くように、バリトンの町を出ていった。
【結晶士】ソウキ:レベル13
所持スキルポイント:17
武器:チュートリアルリッパー+9
頭:無し
胴:赤竜鱗の胸当て
腕:赤竜鱗の籠手
脚:赤竜鱗のグリーヴ
アウター:アトラリアの法衣
インナー:無し
パンツ:無し
マント:無し
首:機械神使の首飾り
右手首:英雄のバングル
左手首:無し
リング:マニュアリング
所持スキル:
【錬成の心得:Ⅰ】
錬成した武器の耐久力を上げる。
錬成武器を装備している間、僅かに攻撃力が上昇する。
【錬成の心得:技】
錬成した武器の耐久力が僅かに上昇する。
一度の錬成でカウントされる錬成回数が2に増える。
【強化錬成術:Ⅰ】
複数の錬成石を使用して錬成した武器の攻撃力を大幅に上昇させる錬成が可能になる。
この効果によって錬成された武器の耐久力は大幅に減少する。
【拳闘武器錬成】
拳闘が錬成可能になる。
【マルチウェポン】
錬成武器専用の特殊ショートカットが使用可能になる。
【デュアル・エッジ】
同じ錬成石を2つ消費する事で、同一の片手用武器種を同時に両手へと錬成する事が可能となる。
装備限定スキル:
【女神の息吹】
装備している者のHPを、10秒毎に5%回復する。
【機械神使の鼓動】
2秒間に1度、装備者の最大HPの1.4%を回復する。
【力の源】
与ダメージが3%上昇する。
【闘竜の怒り】
被ダメージを15%軽減する。
竜族、竜人族に対する与ダメージを15%増加、被ダメージを20%軽減する。
 




