コットの手記―1
今日からわたしは手記をつける事にしました。
内容は、ゲームカラミティグランドのプレイ記録です。
どうしてこんなものも綴ろうと思ったのか。
それをいつか、わたしは忘れてしまう日が来るのでしょうか。
今、わたしの中にある、カラミティグランドへの情熱のようなもの。
それすらも忘れてしまった時、これを読み進めれば全てを追うことの出来るよう、覚えている範囲でその日のカラミティグランドでの出来事を、この手記に記していこうと思います。
まずは、今日より約ひと月前のこと。
インターネットに、ひとつのゲーム広告をよく目にするようになりました。
「ゲーム史上、最も戦闘に特化されたVRアクションゲーム」
何の変哲もない、バナー広告でした。
もちろん、たったこれだけの情報ではゲームの内容を知ることは出来ません。
わたしはその広告を開き、カラミティグランドの存在を知りました。
広告の先にあったのは、カラミティグランドの公式ページ。
UPCという大型ゲーム機を使ってプレイするVRゲームは既に幾つもリリースされていて、カラミティグランド自体にも、この時にはそこまでの興味もありませんでした。
何となく、こういったゲームにも触れてみたいな。最初はそんな感覚でした。
他のゲームのようにソフトがある訳でも無く、無料でプレイ出来るカラミティグランドをやってみようと。
ただ、それだけの事でした。
……そこでわたしは出会ってしまった。ソウキさんに。
チュートリアルの間、ソウキさんとリザードサイスというボスを倒し、椿さんというプレイヤーともフレンドになりました。
正式サービスへとアップデートされるまでこの一ヶ月間、自分でも病気だと感じた程には、毎日公式ページを覗いていた気がします。
それだけ長く感じていたという事の表れでしょうね。
そうしてやっと迎えたアップデート初日。
わたしはアスティさんとワタルさんという二人のプレイヤーさんからパーティーへの勧誘を受けていました。
またしても、わたしはここで助けられるようにソウキさんに出会います。
結局この時、わたしの身ひとつの行く末の為に、ソウキさんとアスティさんが対決をする事になってしまいました。
それから、エルドさんをパーティに迎えてのエクストリームボス、アトラフィとの一戦。
四大ギルドのひとつ、ピクティスに入ってのダンジョン攻略。
更には別の四大ギルドのひとつ、硯音に加入してのフィールド攻略、ボス討伐。
ソウキさんは、縦横無尽にカラミティグランドの世界を暴れ回っています。
そして今日、わたしはテュリオスさんから少し気になるワードを耳にしました。
リオストのエース。
気になったので少し調べてみたのですが、in worldというARゲームの、リオストというチームに所属していた、プロ選手さんの名前が二つヒットしました。
柏木惣選手。
ディラン・マルティネス選手。
わたし、どうかしてますね。
柏「木惣」→ソウキ。
こんな風に見えてしまいました。
公式ルールを二度も変更させるほどの小ズルい戦い方をするだの、勝つために卑怯な手を使う事や小細工を仕込む事など、全く悪いと思ってないだの、選手の紹介文を読んでいてソウキさんとこの柏木惣選手には、若干の接点が見える部分があります。
もう少し時間を置いて柏木惣選手とディラン・マルティネス選手についての情報を集めた上で、二人だけになった時にでも聞いてみようと思います。
ソウキさんは、ゲームのプロ選手だったのですか? と。
それを知ったところで、一体何なんだって話なんですけどね(笑)
でも、知りたい。
ソウキさんが何者なのかを。
そして、ソウキさんがカラミティグランドでどうなっていくのかを見たい。
それがカラミティグランドでの、わたしのやりたいことだから。




