『古文書クエスト』とクロム
「まずは、ファーストキルの達成に協力してくれた事、感謝する」
ギルド『硯音』のギルドエリアへとやって来た俺達は、そのままギルドマスターの部屋へと直行した。
ギルドエリアへと入った瞬間の、プレイヤーからの視線がやっぱりちょっとこう……、妙な気持ちにさせられるものがあった。
そんなこんなで刀導禅と対面した瞬間、視線をバッチリと数秒合わせた後、感謝を込めて頭を下げられた。
「よせよせ。俺は俺で錬成石を沢山貰ってるからな。礼なら後ろの二人に言ってやんな」
「そちらの二人も、よくやってくれた。……ところで、君たち二人もどこかのギルドに所属する気は無いのか?」
「えっと……。わたしは今のところは無いです」
「俺も無い」
「そうか。……それで銀水晶。聞きたい事と言うのは?」
「それは、俺から話をさせて貰います」
エルドが俺の横に立ち並び、こう刀導禅に告げた。
「マスター。『古文書クエスト』についてを、ソウキ達に教えてやってくれませんか?」
「ひょっとして破片を手に入れた、と?」
「そうです」
「……そうか。では教えよう」
……刀導禅からの話によると、アイテム『古文書の破片』を三つ集めて鑑定人の所へ持っていくと、『古文書クエスト』という特殊なモンスター討伐系のクエストが受けられるようになる。
この『古文書の破片』はシリーズで存在し、現在『硯音』で存在を確認できたのは1と3。
今回、コットは『古文書の破片:2』を手に入れた訳なのだが、後二つ『古文書の破片:2』を集めなければこの『古文書クエスト』は受けられないそうだ。
そして、やっと集めて解放した『古文書クエスト』も、クエストを受けられるのは一度きり。
同時にクエストの難易度がとてつもなく高く、『硯音』の攻略メンバーでもクリア出来なかったらしい。
「そんなに難しいクエストなのか」
「現状では、誰にもクリアは出来ないだろうな」
「アイテムの文面から察するに、そのクエストをクリアすると、何かとてもレアなアイテムでも貰えるのでしょうか?」
「それも、今のところは不明だ」
それもそうか。クリア出来てない訳だしな。
「なるほどね。とりあえずしばらくは、破片を集めておく位しかないみたいだな」
「『古文書クエスト』に関して新たな情報が掴めたら、その都度私かエルドから伝える事としよう」
「良いのか?」
「ギルドメンバーからの聞き伝えでしか無いが、難易度が難易度だからな。
こちらとしてもこのクエストの先に、何があるのかを知りたい」
あぁ。つまりは俺達の方からも、『古文書クエスト』についての進行に関する情報が欲しいって訳か。
「まずは数が揃わないと何とも言えねぇな。とりあえず何かわかったら、こっちからも伝えるよ。
どーせクエストを攻略する時は、エルドに手伝って貰うだろうしな」
「そうして貰えると助かる」
「それじゃあな、刀導禅」
「また近い内に会うことになるだろう」
「へっ! そん時ゃあまた錬成石寄越してくれよ!
エルドはー……、その内またパーティ組むだろ」
「そうだな、何かあればメッセージを送るよ」
二人に別れを告げた俺達は一度パーティを解散し、マスターの部屋を出た。
「んなっ!! てめぇはっ!!」
「お、アスティ。よう」
マスターの部屋を出た直後、聞き覚えのある声がしたと思えば、目の前にはアスティとワタルの姿が。
そうか、そういえばコイツらは『硯音』のギルドメンバーだったな。
「なーんでてめぇがウチのギルドに!」
「そりゃあお前……。なんでだっけ?」
「おちょくってんのか!?」
「まぁそう言うなって。ほれ、フレンドになろうぜ」
俺はアスティとワタルにフレンド申請を送った。
「何で俺が銀髪野郎とフレンドに……」
(お前もド派手な赤髪野郎じゃねぇか……)
とか言いつつ、俺のフレンド申請をちゃっかり承認してるアスティ。全く、素直じゃないんだから。
「ワタルも、よろしくな」
「はっ、はい! 是非によろしくお願いしますっ!」
その場のノリで、俺はアスティとワタルの二人とフレンドになった。
「そんじゃあな二人共。近い内にパーティ組んで遊ぼうぜ」
アスティからの「けっ! いつかな!」という可愛げのある返事を背に、俺達は『硯音』のギルドエリアを抜けた。
そのすぐ後に、三人とも『硯音』を脱退し、バリトンの町をお喋りしながらブラブラと歩く。
あっ、エルドに聞いとく事あったんだった。
まぁいっか。その内会えるだろうし、そん時にでも。
「しっかし、『古文書クエスト』ね。なんか面白そうだよな」
「ソウキさんの面白そうは、強い敵と戦えそうだから面白そうなんですよね?」
「なんて事を言うんだコット。流石の俺も悲しいぞ」
「だが、事実だろう?」
くっそ! コイツら、まるで俺が戦闘狂みてぇな言い方しやがってぇ!
「そんな事はねぇよ。俺だってレアアイテム欲しいし?
その為には、強い敵とだって戦わなきゃいけないだろ?」
「なんだかソウキさんの場合は、レアアイテムをダシにして、ボスとの戦闘に臨んでいる気がします」
「ひっでぇ!」
「日頃の行いが悪いせいだ。少しは反省しろ」
うひぃ~。俺が悪者みたいになってるぞチクショウ!
「お楽しみの所すみません。ちょ~っといいですか?」
「んあ? 誰だキミは」
目の前には、黒髪の剣士が立っていた。小柄な少年アバターだ。
剣と盾は目立つような物では無いが、黒髪少年が着ている暗い青色をしたコートを、俺はよく知っている。
テュリオスが装備している、ブリーズコートと全く同じ見た目の物だからな。
「初めまして、ですね! ボクはクロム。
『Zephy;Lost』ってギルドの、マスターをやっています!」
ん? 『Zephy;Lost』って、四大の一つか!
「こりゃご丁寧にどうも。俺はソウキ」
「コ、コットです」
「テュリオスだ」
「皆さんの名前だけは、レコードでお見かけしていますので知っていました。
立ち話も疲れると言うもの。どこかでゆっくりとお話をしませんか?」
ギルド勧誘の匂いがする。
だけどまぁ、これで『アルマゲスト』以外の四大には、ギルドに加入する気は無いって言っておける。
コットとテュリオスには付き合わせちまう事にはなるが、この二人を二人っきりにするのもなんかアレだな。
「あぁ。良いぜ、場所を変えよう。悪いけど二人共、付いて来てもらっていいか?」
「わかりました」
「問題ない」
「よぉぅし! それじゃあボクに付いてきて!」
意気揚々とバリトンの町を歩み進むクロムの後を、俺達は付いていく。




