『古文書の破片』というアイテム
10万PV、ありがとうございます!
とても嬉しいので、今日はもう一話更新しちゃいます!笑
書き上げられれば、さらに一話更新しますね(゜ロ゜)
『支配ボスのファーストキルまで……! 銀水晶は硯音に加入したのか!?』
再び刀導禅の元にはメッセージが届いていた。
メッセージの相手は四大ギルドの最後の一つ、『Zephy;Lost』のギルドマスター、クロムだった。
『いや、クリアタイムのついでに挑んでみて貰っただけだ。まさか撃破してしまうとは……。』
刀導禅は『硯音』に所属する、エルドを除いた主力メンバーを集めて幾つかのパーティを組ませ、支配ボス、牙獣オルグファスへと保険で挑ませていた。
結果は全滅。
一番多く支配ボスのHPを削れたパーティも、一割と少しの所までダメージを与えるのが限界だったとの報告も、刀導禅の耳には入っていた。
流石のエルド達でも、それほどの相手は今の所では倒せないだろうと思い、刀導禅はひとまずエルドの帰還を待っていた。
その筈だったのに、大きな番狂わせが巻き起こった。
チャットログに流れたのは、
[ギルド《硯音》がレコードを更新しました。]
というテキスト。
新たなエリアボスでも倒せたか! と、ボスを撃破したギルドメンバーを褒め称える想いでレコードメニューを開いた。
そこには、牙獣オルグファスのファーストキルを『硯音』が取っている事を知らせる一文が載せられていた。
刀導禅はぎょっとした。オルグファスを撃破したメンバーを確認すると、やはりそこに載っていたのはエルドと、あの銀水晶の名前だった。
「た、たった四人で……」
驚愕、などという一言で済ませて良いものだろうか。
パーティは基本、六人が最大の人数となっている。
その六人でパーティの枠が全て埋まる事をフルパーティと呼び、基本的に攻略はフルパーティで行われる。
パーティの人数が減れば減るほど、火力や人数的な役割が不足し、攻略の難易度が高くなる。
だがソウキ達が打ち立てたこのレコードは、人数の少なさなどものともしない、とでも言いたげな、いや言っているようなもの。
『ボクは銀水晶を勧誘してみる』
『無駄だと思うぞ』
『どうしてそう思う?』
『勧誘してみれば分かる』
刀導禅はクロムとのメッセージを淡々と切り上げ、今度はソウキへとメッセージを送る。
「おっ、中級のスキル書が二つ。デカいな!」
俺達は、オルグファスと戦ったフィールドでドロップアイテムを確認していた。
俺の手にドロップしたのは中級のスキル書が二つと、青レア武器のビークブレイド。それとオルグファスの素材アイテムがちらほら。
ビークブレイドはリザルト画面では青色のテキストだったが、例に漏れず装備できない俺のアイテムパック上では、灰色のテキストへと変わっていた。
「ビークブレイドか。装備できそうだ」
お、テュリオスも手に入れたのか。どんな見た目か気になるところだ。
「やったなテュリオス。ちょっと装備してみてくれよ!」
「あぁ。……なるほど。オルグファスが持っていた剣だな」
テュリオスの腰元に提げられていたのは、先程オルグファスが振り回していた、鉈のような刀身の小型化された剣だった。
剣には野性味のある装飾が施されている。
小振りになり、それと同時に細身になって全体的なバランスが整えられたビークブレイドではあるものの、テュリオスが握るには少し野蛮な見た目に感じるな。
「うーん……。ちょっとイロイロが不釣り合いじゃねぇか?」
「俺もそう思う。やはりここは、セットボーナスの事も考えてエッジオブヴォイドだな」
そう言うとテュリオスは、メニューを開いて装備する武器を元のエッジオブヴォイドに戻した。
白金色な細身の両刃剣が、ビークブレイドの代わりにテュリオスの腰元に提げられる。
「うん。そっちのが似合ってるぜ。後は何をドロップしたんだ?」
「他はー……。アクセサリだ。青レアの力の腕輪。攻撃力を2%上げてくれる。
後は中級のスキル書が一つと素材か。なかなかではないかな」
確かに。アクセサリがドロップしたのはデカい。
「アクセサリについては、後で少しプレイングマニュアルを開いてみるといい」
アクセサリは強化して世代が進むと、ギミックが追加されていくからな。
大事に育てていって欲しいモンだぜ。
「わかった」
「テュリオスはこれで終わりか。エルドはどうだった?」
「俺も、力の腕輪とスキル書と素材だな」
「テュリオスとほぼ同じか。まぁスキル書が当たりだと考えるんだな。最後、コットはどうだった?」
「わたしは中級のスキル書が二つと素材、後は『古文書の破片:2』というアイテムでした」
何やら、特殊そうなアイテムがドロップしたもんだな。
「『古文書の破片:2』? アイテムの説明には何て書いてあるんだ?」
「えーっとですね……。ちょっと長いです。
……太古に扱われていた技術と、その技術の欠片の在処が記された古文書の破片。
この破片を3つ集めて鑑定人に渡すと、特殊なクエストが受けられるようになる。
……ふぅ。と、書いてありますね」
鑑定人か。あのグルグル眼鏡をした怪しい見てくれのヤツだ。
「その『古文書の破片』の事なんだけど、マスターが少し情報を持っているんだ。
今から皆で、その辺りの事を聞きに行ってみないか?」
エルドは、刀導禅がこれについて何か情報を握っていると口にした。
「俺は気になるから聞いてみてぇな。二人はどうだ?」
「わたしも気になります。せっかく手に入れた物ですし……」
「俺も聞いてみたいものだな」
『またしても見事と言わざるを得ないな。銀水晶。』
お、刀導禅からのメッセージだ。ちょうどいい。
『そりゃどーも。一つ聞きたいことがある。エルドと一緒にあんたのトコに行くぜ。』
『承知した。マスターの部屋で待っているよ。』
「……おし、決まりだな。そんじゃ早速バリトンへ戻ろう」
こうして、全員分のドロップアイテムの確認を終え、ついでにタイミング良くメッセージを送ってきた刀導禅とのアポを取り付けた俺達は、レコードの報告と『古文書』についての情報を知る為、ひとまずは『硯音』のギルドエリアを目指す事になった。