レコードの先にあるもの
レコードの先にあるもの……。
要はドロップアイテムの事ですね。
次回はアイテム確認回と、バリトンにもどってこちょこちょ……って感じです。
「さて。こっからどう出るか……」
オルグファスと地道に殴り合う事十五分から二十分くらい。
ようやくオルグファスのHPはイエローゾーンへと辿り着いた。
今回のイエローゾーンの設定は、残HP四割ほどの部分だ。
「やるなソウキ。たった一人であれだけのHPを削るなんて」
「バカ言ってんじゃねぇエルド。こっから奴の攻撃は激しくなるんだぞ」
グリーンゾーンは、はっきり言えば前哨戦。敵からすればウォームアップみたいなものだ。
「まぁそうなんだけどさ。でも、ポジティブに考えれば、ボスのHPは後四割。行けそうだろ?」
「ギィエェッ!! ギィッ!!」
甲高い、蝉のような鳴き声の後、オルグファスは背中のバカデカい剣を手に取った。
「まぁ予想はしていたが……。流石に飾りじゃあねぇよな、アレは」
「だね。持ってるって事は使うって事でしょ」
「だがここまで来た以上、負ける訳にもいかんだろう?」
「そうだな。エルド、テュリオス。こっから全力アタックだ」
「気合い入るね」
「準備は出来ている」
コイツらはやる気満々だな。俺も気合い入るってモンだ。
「コット! 回復はエルド優先で慎重にな!」
「り、了解しました!」
コットもコットで、流石にいつもとは格の違うモンスターだって肌で感じてるっぽいな。
返事に緊張感が走ってたぜ。
「ギィァァァァアッ!」
雄叫びを上げながら、オルグファスは接近し始めて来た。
剣を持っているせいもあるが、その歩みは二足でのものとなっている。移動速度も先程よりはゆっくりなものだ。
「エルド、二人で正面から行くぞっ! 剣の攻撃パターンを覚えてソッコーで削る!」
「了解ぃっ!」
「テュリオス! 側面から攻撃しろ! 剣の攻撃範囲には注意しろよ!」
「了解だ! 俺だって火力の足しにはなってみせるさっ!」
期待してるぜテュリオス。
俺達三人は、一斉にオルグファスへと突撃を開始した。
「エルド! 剣先より右側から攻撃してくれっ!」
短刃剣を錬成した俺を剣で迎え撃とうと、オルグファスは突きの構えを取っている。
オルグファスは剣を右手に持っているから、突き攻撃からの派生は、オルグファス自身の体の右方向への薙ぎ払い。
最小の動作でとなると、恐らく派生の攻撃これだけに絞られるだろう。
「っしゃ、予測通りだ。喰らえやぁっ!」
スルスルとスライディングで、突き攻撃を潜り抜けるようにオルグファスの懐へと潜り込む。
やはりここでは払い攻撃しか派生技は無いらしいな。
横薙ぎ払い攻撃をしている動作中に、俺はガラ空きの隙だらけなオルグファスの太腿へと、先程と同じように短刃剣を突き刺しては離脱する。
「……ん? 結構ダメージが通るな」
俺がこの一撃を与える間に、テュリオスとエルドは各々で全力攻撃を加えていた。
そのせいもあるとは思うが、オルグファスのHPの減りが異様に早い。
もうそろそろ三割という所になろうとしていた。
「防御力が下がった、しかあり得ないか。
イエローに入って弱体化してんじゃねぇのこれ」
「っ!? 次の狙いは俺かっ!」
オルグファスの敵視は、俺の横で猛攻を加えていたエルドへと移ったらしい。
「そうはさせねぇんだよなぁっ!」
ショートカットから強化短刃剣を錬成し、再度オルグファスへと突き立てた。
チュートリアルリッパーによる一撃のオマケ付きだ。
これでオルグファスのHPは二割。
だけど奴のHPの色は未だにイエローだ。ちょっと嫌な予感がするぞ。
強化短刃剣での大ダメージによって、再度オルグファスの敵視は俺へと戻って来た。
俺は予め【強化錬成術・Ⅰ】のスキルによって強化された短刃剣を錬成しておき、次にエルドへと敵視が回った時の為に攻撃はせず、オルグファスの攻撃をひたすらに避け続ける事にした。
テュリオスの火力も相当なものだ。
エルド程では無いが、それでも今の状態のオルグファスなら、かなりのダメージがテュリオスの攻撃で通っている。
そうこうしている内に、またもオルグファスの敵視はエルドへと向き、俺の強化短刃剣によって、残り少ないHPを大きく消し飛ばされていく。
「ギィエェァァァァアッ!」
「バカかお前。雄叫び上げて隙なんて見せてんじゃねぇよ」
とうとうHPがレッドゾーンに入ったオルグファスは、愚かにもその場でモーション付きの雄叫びを上げていた。
それを無視して強化短刃剣を錬成し、オルグファスの腰へと突き刺す。
まだほんの僅かにオルグファスのHPは色を残しているが、最早虫の息というもの。
残りのHPをエルドとテュリオスに任せ、俺はチュートリアルリッパーで、ちまちまとオルグファスの足元を斬り刻んだ。
オルグファスはグリーンの間が一番強かったという、少し変わったボスモンスターだったな。
「ギギィ……」
力のない悲鳴を上げた後、HPを失ったオルグファスは地に伏せ、紫色の煙を立ち昇らせながら消えていった。
「よっしゃ……。終わった……!」
『クリアレコード更新のお知らせです。
・支配ボス:牙獣オルグファスのファーストキル【硯音】
以上のレコードを更新しました。おめでとうございます。』
「倒せましたね! 皆さん凄かったです!」
今回、コットの出番は序盤だけだったな。
それでも回復役が後ろに控えているというのは、それだけでとても安心感に繋がる。
「前半はかなり焦ったが、ソウキのお陰でなんとかなったな」
「そうでもねぇよ。コットをよく守り切ってくれたよ。サンキューなテュリオス」
オルグファス戦での一番の功労者はテュリオスかもしれないな。
本当に、よく自分もコットも守り切ったな。
「ありがとう、三人共。マスターに良い報告が出来そうだ」
「けっ。錬成石をいっぱい使っちまったぜ。後払いして貰わねぇとな!」
「頼んでみるよ」
エルドは笑いながらそう言った。
冗談のつもりだったけど、錬成石を貰えるってんなら、ありがたく貰っておこう。
俺はレコード通知画面に視線を流す。案の定、ファーストキルのレコードは『硯音』のものとなっていた。
スッゲー強敵だった……。
ボスを撃破した事により、このエリアに脱出用の[転移の渦]が出現した。普通の青色のヤツだった。
「さて。みんなでドロップアイテムを見てみようぜ」
せっかくだし、ここでドロップアイテムを広げちまうか。




