レベルキャップだ
と、まぁそんな電話をする前に、まずはゲームの続きでも楽しまなきゃな。
エヴリデイに遭遇してから、まだ三十分程しか経っていない。
『待たせたな。今ログインした。』
と、テュリオスからのメッセージが来た。
なかなかにグッドなタイミングだ。
『ほいよ。噴水広場の所で待っててくれ、すぐ行く。』
と返信をしておいた。
「テュリオスがインしたみたいだ。そういえばあいつ転職したばっかで、レベルがまだ1なんだよな」
「えっ、もう転職したのか?」
エルドが驚きの声を上げた。
「うん」
「転職に必要な雫は、どうやって溜めたんだ?」
「ん?『雫を流す者』ってクエストの報酬。出てなかったか?」
「『雫を流す者』は、トリットとの戦闘しかない、あの時点では空イベントのはずだが……」
「俺達はトリットとは戦わなかったぞ? 話聞くだけでクエストは終わった。
クエストの完了と同時に、接続クエストってのが解放されたんだ。
33レベとかふざけた適正レベルだったけど」
「なるほど。分岐ルートが設けられたクエストだったのか」
「さすがにそこまではわからん。とりあえずテュリオスに合流しよう。お前も行くだろ?」
「あー、うん。行くかな」
……ん?なんか今、エルドの歯切れが微妙に悪かった気がするのは、ただの気のせいか?
「噴水広場で待たせてる。行こうぜ」
ひとまず、俺達はテュリオスと合流する事とした。
「よう、テュリオス」
宿を出て歩くこと五分くらい。エルドと共に広場への辿り着いた俺は、噴水の前で待っていたテュリオスに声を掛ける。
「なんだ? エルドも一緒だったのか」
「おう。まずはお前のレベルを少し上げよう。その後、適当にクエストでも埋めようぜ」
テュリオスをパーティへと迎えた俺達は、アトラリア砂道へと向かった。
「そういえば、なんだか見ない内に格好が変わっているな。お前達」
安全エリアを出る間際、唐突にテュリオスが声を上げた。
「エクストリームボスって奴のドロップ報酬だぜ」
俺とエルドは、テュリオスへと簡単にエクストリームボスについてを語った。
「ほぅ。それは参加できなくて残念だな。次回は参加するとしよう」
「それがいい。なかなか報酬も美味いしな」
……それから俺達三人はアトラリア砂道をふらつき、しばしの間狩りを楽しんでいた。
テュリオスは一つ先の上級職の剣士ではあったものの、流石に低レベル。瞬く間に4レベルまで上がっていった。
「ん? 俺、もうレベル上がらないくさいんだけど」
テキストログには、『レベルキャップ上限のため、これ以上経験値は獲得できません。』と出ていた。
っと、同時にプレイングマニュアルが更新された事も、テキストログは伝えてくれた。
『第一段階のレベル上限の到達、おめでとうございます。
これ以上の経験値の獲得及びレベルアップに関しては、クエストメニューに解放された新たなクエスト[レベルキャップ解放クエスト]をクリアする必要があります。
この[レベルキャップ解放クエスト]をクリアし、更なるレベルの高みを目指しましょう。』
だそうだ。なるほど、一旦レベルの上限に達したよって事か。
「あぁ、俺も出てた。適正レベルも受注範囲内。やってみるか?」
エルドもどうやら10レベルらしいな。流石に攻略ギルドのプレイヤー。レベルの進行も早い。
「適正レベルは5だ。……下回ってても受けられるのか?」
「うん。『硯音』のメンバーで少し受注の実験をしてみたんだ。
適正レベルよりもマイナス3レベル以内なら、現レベルよりも高い適正レベルのクエストを受注出来るんだ」
なるほど。ならこのままテュリオスをパーティに連れて、レベルキャップ解放のクエストに挑む事は出来るな。
「すまんテュリオス。このキャップ解放のクエストに、ちょっと付き合ってもらってもいいか?」
「俺は問題ない。だが難易度が難易度なら、俺がレベル10になったら手伝って欲しい」
「おう、それは手伝ってやる。今回はその下見がてら、このクエストに行ってみようぜ」
俺とエルドはクエスト、『レベルキャップ解放クエスト』をクエストメニューから受注した。
どうでもいいけど、クエストの名前がまんまだな。
「とりあえず、クエストトリガーはマップに表示されたな。まぁまぁ遠いけど」
アトラリア砂道の全体マップを開いてみると、マップの左上に赤点が打たれていた。
あ、クエスト説明を見忘れた。
まぁ今回は、現地に行くまでの楽しみにしておくとするか。




