市場と刺客
5章の1話目です!
たぶん5章は短いと思われますが、お付き合い頂ければと思います(゜ロ゜)
あと、今回の更新で20万字行きました!
今後とも「クリスタル・ブレイド」を宜しくお願い致します!
翌日。
割と早朝にアパートを出た俺は、だいだい宅にお邪魔させてもらっていた。
彼女も居ない、そんな寂しい奴が日曜にやることなんて特にないしな。泣きてぇ。
だいだいは少しだけ仕事を片付けてからやって来るという事なので、俺は一足先に『カラミティグランド』にログインする事とした。
『廃坑道がプレイヤーの手によって解放されました。
これにより、市場システムが解禁となります。
市場システムにはランクが搭載されていて、アイテムの売買やクエストの消化率など、プレイヤーひとりひとりの行動によって市場ランクは上がっていきます。
都市の市場ランクを上げて行く事で、冒険の手助けとなるより良質なアイテム、より上位の装備品がNPCショップから購入出来るようになります。
積極的に市場ランクを上げ、冒険を豊かなものとしていきましょう。』
と、こんなテキストアナウンスがログインした俺を出迎えてくれた。
視界の右上、つまりミニマップの部分だ。
マップアイコンの下には、
[中立都市バリトン]
[市場ランク:D]
[市場ゴールド:5,042,736]
と表示されている。
「五百万ゴールドって……。多すぎじゃね?」
『市場ゴールドは、その都市が所有している純粋なゴールドとなっています。
市場ランクによって都市の所有する初期ゴールド額は変動し、下限は0、上限は10億ゴールドとなっており、これを下回ったり上回ったりすることはありません。
1日に3度、市場ゴールドの残額によって全プレイヤーの各プレイステータスに応じた所持ゴールドの0%~50%を税金として徴収し、市場ゴールドのバランスを取ります。
(ギルドゴールドからは0%~60%)
プレイヤーの皆さんで上手く舵取りをし、市場ランクを上げていきましょう。
市場ランクがSランクになると……??』
プレイングマニュアルの、[市場ランクと市場ゴールド]の項目にはこんな事が記されていた。
「なるほど? 特定のプレイヤーないしギルドが、市場ゴールドを独占しないようなシステムには一応、なってるのな」
また、仮に意図的に市場ゴールドを独占された場合でも、一日に三回もゴールド徴収の機会があるなら、即座に復帰出来るようなシステムだ。
まぁ、微々たるものではあるけどモンスターからもゴールドは落ちるし、プレイヤーにとっては必須な回復アイテムの類いもある。
そうそう簡単に市場ゴールドが枯渇するなんて、そんな心配は要らないだろう。
最後の市場ランクがSランクになると、って一文も気になる。
といっても、市場ランクはまだDランク。Sランクなんて相当先の話になりそうだけどな。
「さて、どーすっかな。コットからはメッセージは来てないし、だい……テュリオスもまだだし。エルドの奴はどうだろう?」
『ログインしてたらメッセくれ。適当に狩りでもしようぜ』
と送っておいた。一分と待たずに返信が返って来た。
『もう居るぜ! ギルドの奴らとヴォイドエッジアーミー連戦してた! 今はフィールドを一人でフラついてるから来いよ、安全エリアの方に向かってくからさー!』
だとさ。あのヴォイドエッジアーミーと連戦とかマジか。元気だなアイツ。
レコードを覗いてみると、アトラリア砂道のクリアタイムは26分46秒となっていた。
……なんか更にタイム縮めてねぇか?
「……まぁいっか。んじゃ、行くかな」
エルドを探しに、俺はアトラリア砂道を目指した。
「アスティ……。ではないな。盾無し剣士は珍しいな」
安全エリアを一歩出た辺りに立つ、一人のプレイヤーが俺の目に入った。
俺と同じ銀髪ではあるが、俺と違うのはそいつがロン毛な事だ。
……剣を抜いて突っ立ってると怖ぇんすけど。
鋸刃の、刀のようなしなやかで長く、曲線を描くような刀身を持った得物を握っているが、これは刀ではない。
鋸刃で長い刀身を持ったカトラス、ってのが一番しっくりくるか。
「誰か待ってんのかな。まぁ、とりあえずエルドを探すか」
安全エリアから一歩出て、その男の横を通り抜けようとした瞬間――。
「――お前は銀水晶か?」
と、低い声で銀髪ロン毛の男は尋ねてきた。
「んあ? そう呼ばれた事はあるな」
「そうか、なら――」
「うおぉあっ!!」
突然、そのロン毛野郎は斬り掛かってきた。
なんとか避けられはしたが、不意打ちは頂けねぇなぁ!
「おい、危ないじゃないか!」
「俺はエヴリデイ。……剣を抜け。銀水晶、ソウキ」
なんだよ。コイツ俺を待ってたのかよ。
「対人戦か? 乗ってやるぜ」
とりあえずは様子見か。ったく、対人戦は探りから入らなきゃいけないから、結構めんどくせぇんだぜ?
チュートリアルリッパー左手に逆手で持ち、そのまま直剣を右手に錬成して構えた。
こういう場合、左手をどう使うかでコイツの強さが変わる訳なんだが……。
「行くぞ、銀水晶ぉッ!」
「上等だっ!」
襲ってきた理由もわからぬ内に、俺は『カラミティグランド』で二度目の対人戦をエヴリデイとやり合う事になった。