宿る魂、抱く炎の双撃
今回でエリミネート・スパイダーの決着回としたかったですが、次回に持ち越します。
次回はエイジかコット視点での、端から見えるソウキの戦闘を描写してみたいと思います!
あと、今回ソウキの装備とスキルも載せたので、その辺りも少し読んでみてくれると嬉しいです!
「かなりダメージを稼げたな」
再度エイジと並び立ち、転倒から起き上がるエリミネート・スパイダーの次の挙動に備える。
ここからはエリミネート・スパイダーのHPは三割。つまりはレッドゾーンだ。
攻撃のパターンは変化するし、厄介な特殊攻撃が追加されたり、パラメータが異常に上昇したりと、ここからが戦闘の開始と言っても過言では無い。
「レッドゾーン……。ボス戦はここからがつらいんですよね」
隣に居るエイジが呟く。
「そうだな。ボスを倒した事は?」
「いえ、まだ一度も……」
「なるほど、ちっと気は早ぇけどおめでとう。ついでにレコードも」
「もう勝った気でいるなんて、かなり強気ですね。ソウキさん」
「四対一で、ボスのHPはあんだけしか残ってねぇんだ。全員で掛かりゃゴリ押しでだって勝てるだろ」
「それはまぁ……。一気に攻めますか?」
「いや。毒糸の攻撃が奴にはある。これを処理して貰う事を考えると、コットには回復に回させるよりは毒の解除にMPを回して貰いたい」
「そろそろエリミネート・スパイダーが動き出します! どう攻めますか?」
「エイジは右脚を狙え。そろそろ右脚側で転倒させられるはずだ」
「了解しました!」
位置をクロスさせながら、エイジはエリミネート・スパイダーの右脚側へと駆けて行った。
「来いよ、蜘蛛野郎」
耐久力の少なくなってきただろう火属性の直剣を、そのまま上書き錬成する。これで二つ目。
「ち……。っぜぇっ!」
エリミネート・スパイダーの真正面へと突っ込んだ俺に対し、毒糸を噴いてきた。
それに構うことなく、エリミネート・スパイダーの懐まで踏み込み、火属性の斬撃を加えていく。
「ソウキさんっ!」
すかさずコットはスキルによって、俺のかかっていた毒状態は解除された。
アレイダとスミレも地味ではあるが、いい仕事をしてくれている。
後ろ脚の方は残念ながら転倒判定はないみたいだが、二人は少しずつ、確実にダメージを稼いでいく。
「……発狂か。面倒だな」
アトラフィの時と同じ、こっちが与えられるダメージの量が半分以下となっている。防御力が上がったという事が目に見えてわかるな。
「やったっ! 転倒です!」
「でかしたエイジ! ここで決めるぞ!」
抜群にナイスなタイミングで、エイジはエリミネート・スパイダーに対して転倒を決め起こさせた。
エリミネート・スパイダーの残りHPは二割といったところか。
「これは余裕に貰ったな」
――と、思ったのだが。
「――コイツっ! まじか!」
HPが残り一割を切った瞬間、エリミネート・スパイダーへのダメージが全くと言っていい程に通らなくなった。
スミレと、俺の攻撃で僅かにHPが削れている程度か。
「つまりは、全く効いてないって訳じゃあないって事」
仕方ねぇ。いつかは取るつもりだったスキルだ。
「エイジ! 少しの間ガードを任せるっ!」
「は、はいっ!」
エリミネート・スパイダーから少し距離を取って、メニューをからスキルツリーを開き【デュアル・エッジ】のスキルを取得する。
これを取る為に失ったスキルポイントは10ptだ。うひぃ~高ぇ~。
「……こんな贅沢な使い方するんだ。スキル書がドロップしたら、きっちり頂けるだけ頂いてやるからな!」
新たに迎え入れた【デュアル・エッジ】のスキルにより、俺は錬成武器を「同時に」両手へと錬成出来るようになった。
「『in world』の公式レギュレーションを書き替えた反則の技、見せてやるぜ」
両手に伸びる、真紅の剣。ったく。これで火の錬成石も四つ目だぜ?
「待たせたなエイジ! そのままガードは頼むぜ!」
「任せて、下さいっ!」
対モンスター戦に限り、弱点属性での連続攻撃を与えていくと、その属性に対応した状態異常を付与出来る。
火なら燃焼、氷なら凍結、雷なら帯電といった感じだな。
燃焼による秒間ダメージ。これを狙いつつ、地道に残りの一割を削り取る作戦だ。
「うらぁっ! さっさとくたばれぇっ!」
毒糸による状態異常はコットが、前脚による攻撃はエイジが全て処理してくれる。
なら俺は、全ての意識を火力を叩き出す事のみに向けて集中するだけだ。
左右の手に握った錬成直剣をメチャクチャに振り回し、火属性ダメージを与える。与え続ける。
「っし! 燃焼だ」
右の袈裟斬りから手首を返し、横薙ぎに剣を払うと同時にエリミネート・スパイダーの前脚から繰り出されるストンプを避けていく。
避けるついでに左の剣を前脚へと掠めさせ、転身して突き攻撃を加えた後、後ろへと飛び退いた。
(こんな事もいつかやったな。懐かしい)
『in world』の公式戦。そこで俺はディランとある作戦を組み立てた。
ビームセーバーとハンドガンのコントローラー、これを片手ずつで持って本来ならば戦う。
が、俺は両手ともビームセーバー。
ディランの方は両手ともハンドガンのコントローラーという風に持ち替えた編成で「たった一度だけ」、公式戦に臨んだ事があった。
「案外、やれるもんだな。あの時よりずっと動ける」
二手を上手く扱う為の訓練もした。
回避技術を上げる厳しい訓練も、チームメンバー全員を一度に相手して何度もやったっけ。
それだけの事をやった上でも、たった一回の使用でレギュレーションは変更となり、コントローラーの持ち替えは禁止されて使えなくなっちまったけどな。
それが、こんな形でまた使う事になるとはな。
なんだか不思議な感覚だぜ。
「まだだ。こんなもんが限界なんて思うんじゃねぇぞ……」
失った筈の亡霊は魂となり、再びこの身に宿っていく。
【結晶士】ソウキ:レベル9
所持スキルポイント:17
武器:チュートリアルリッパー
頭:無し
胴:赤竜鱗の胸当て
腕:赤竜鱗の籠手
脚:赤竜鱗のグリーヴ
アウター:アトラリアの法衣
インナー:無し
パンツ:無し
マント:無し
首:機械神使の首飾り
右手首:英雄のバングル
左手首:無し
リング:マニュアリング
所持スキル:
【錬成の心得:Ⅰ】
錬成した武器の耐久力を上げる。
錬成武器を装備している間、僅かに攻撃力が上昇する。
【錬成の心得:技】
錬成した武器の耐久力が僅かに上昇する。
一度の錬成でカウントされる錬成回数が2に増える。
【拳闘武器錬成】
拳闘が錬成可能になる。
【マルチウェポン】
錬成武器専用の特殊ショートカットが使用可能になる。
【デュアル・エッジ】
同じ錬成石を2つ消費する事で、同一の片手用武器種を同時に両手へと錬成する事が可能となる。
装備限定スキル:
【女神の息吹】
装備している者のHPを、10秒毎に5%回復する。
【機械神使の鼓動】
2秒間に1度、装備者の最大HPの1.4%を回復する。
【力の源】
与ダメージが3%上昇する。
【闘竜の怒り】
被ダメージを15%軽減する。
竜族、竜人族に対する与ダメージを15%増加、被ダメージを20%軽減する。
 




