結晶士の戦闘スタイル―2
更新さぼっててすいません(サボっていた訳ではないです)。
あと、タイトルの副題が変わりました!
「クリスタル・ブレイド~武器が装備できないけど文句ある??~」
から
「クリスタル・ブレイド~「元」スタープレイヤーが火力と経験を頼りに、巨大ギルドを結成するまで~」
というタイトルになりました!
今後とも宜しくお願い致します!
ザコモンスターとの戦闘なんてのは、そんなに重要なものではないと思っていた。
経験値とアイテムを目当てに、ただひたすらに効率よく蹴散らしていく。
プレイヤーは皆、こんな風に思いながら作業的にザコモンスターを狩っていく事だろう。
かくいう俺だって、可動制御反応を知るまではそんな感覚だったしな。
だが、どうやらそれは少し違うみたいだ。
ザコモンスターとの戦闘にこそ、戦闘の基礎が全てが詰まっているなと感じながら、スケルトンの剣を錬成した槍の刃先で弾く。
(やっぱし、槍はちと難しいな)
攻撃の届くレンジやリーチ、ダメージをより多く通す為の判定位置。
槍なんかはこれを考えながら攻撃していくのが特に難しい。
多分だけど、長い柄に対して刃先が小さすぎると感じるせいだろうな。
そんな余計な事を考えながら、俺は可動制御反応による、システム的のけぞりをスケルトンへと与えていく。
スケルトンから繰り出される攻撃パターンにだって幾つかの種類がある。
袈裟斬り、横斬り、突き、盾によるバッシュ攻撃。
このひとつひとつの攻撃だって、攻撃角度や狙いの位置がズレるなんて事はない、とても正確なもの。
寸分違わぬ攻撃を、何度も何度もやってくれるというのは、戦闘における基礎基盤を構築していくにはもってこいという訳だ。
これを更に感覚的に磨き上げてくれるのが、アサルトスパイダーやチュートリアルでのブルーウルフなんかの、動物的な攻撃動作を行うモンスターの存在だろう。
コイツらと相手をするには、そのモンスターそれぞれが取る攻撃の前兆動作や予備動作、フェイク、特殊攻撃といったある程度のパターンを覚える必要がある。
そして覚えた動作パターンを予測、または読む力が要るからだ。
んま、一番多方面での力を同時に処理出来ないといけないのは、やっぱり対人戦だな。
モンスターには弱点は設定されているが、苦手や意識なんてものは組み込まれていない。
だが、プレイヤーはモロにこの手だ。
攻撃の角度や、武器の振るうスピード、フェイントだってやり放題。
その中にも攻撃動作の得意不得意や、手癖だってある。
似通う事はあっても、全く同じ攻撃を行うプレイヤーなんて意図でもしてやんなきゃ、二人として居ないだろうからな。
自分の知り得る全ての力を引っ提げ、現実世界での自分の身体能力の限界値を超えたライン、そんな高いパフォーマンスで動く事が出来る者が殆どだろう。実際、俺もそのクチだ。
何年も激しく動くような事なんてしてないから、時折思考と身体の可動とが噛み合わないなんて事はザラにある。
それに、現実での俺はすーぐスタミナが切れちまう。
そういった意味では、VRが俺にもたらしている恩恵というのは、結構大きなものとなってるな。
「そろそろ槍がぶっ壊れる頃だな。次は無難に剣でいいか。こいっ、直剣っ!」
なーんて呼んでみても、実際にはショートカットのアイコンをタップするだけ。
錬成の感動が薄いばかりでなく、虚しささえ感じてしまった。これはボツだ。
ともあれ直剣を錬成した俺は、可動制御反応を絡めながら、スケルトンへとダメージを与え始める事とした。
スケルトンの持つ朽ちたバックラーは、防御面においてはただの飾りらしいな。全く防御をしてこない。
「っと。まずは一体。剣だとこんなもんか。案外拳闘とのダメージに差が出るもんだな」
胴体に二発で倒せる拳闘に対して、胴体部を狙っての攻撃は直剣だと四発は入れないとスケルトンは倒せなかった。
現状ではエイジとどれくらい攻撃力に差があるのかはわからないが、エイジの戦闘を見た限りではまだ俺の錬成武器の方が攻撃力が高いだろう。
それでも倒すのに四発必要だから、攻撃属性の相性ってのは大事だと改めて感じたな。
「そろそろ折れるな。んじゃ、ラストはコイツだ」
左手に短刃剣を錬成し、チュートリアルリッパーを抜いた。両方とも逆手に柄を握っている。
短刃剣だけは右手にも左手にも錬成出来るように設定してあるから、なかなか使い勝手が良い。
スケルトンから繰り出される剣攻撃へと強引にチュートリアルをブチ当て、可動制御反応を誘発させる。
のけぞったスケルトンの頭に加えられるだけの斬撃を叩き込み、残っていたHPを削り切った。
「一対一なら、負けはねぇ」
二体目を倒した時と同様、可動制御反応を発動させながら、錬成短刃剣で最後のスケルトンを攻撃していく。
その中で錬成短刃剣が折れてしまったが、ついでだからチュートリアルリッパーだけの戦闘も見せておこう。
って言っても、左手の攻撃手段が錬成短刃剣から素手に変わっただけで、やることは全く変わらない。
時間は少しかかったが、最後のスケルトンのHPも難なく削り切り、戦闘が終了した。
因みにだが、ダンジョン内では戦闘を終了させてもリザルト画面は出ない。
ボスを倒し、ダンジョンをクリアした後で経験値とゴールドを均等に分配する。
その後でパーティ全員が獲得したアイテムが一括表示され、ここの中から全員でひとつひとつ選び、それぞれの手に収めていく仕組みだ。
「ふぃー。とまぁこんな感じに、色んな武器を持ち替えるようにして戦えるのが結晶士だ」
「かなり、戦闘時の自由度が高い職業なんですね」
そう言うエイジは、結晶士という職業に興味津々といった様子だ。
「そうだな。基本的には短刃剣か拳闘しか使わないけど」
「様々な武器種を取っ替え引っ替えに持ち替えながら戦う……。
僕は相手にしたくはない、恐ろしい戦闘スタイルです」
戦闘スタイル、ね。そんな崇高なモンでは無いけどな。
その場その場で感覚的に武器を振るってるだけだから、そう大した事はしてないし。
……そこから少し、結晶士についてを簡単にエイジ達に教えてやった。
武器として装備出来るのは、初期装備であるチュートリアルリッパーのみという事。
錬成武器を振るうのに、錬成石を使う事。
錬成武器の耐久度やら、スキルについてなんかの少し細々とした部分も教えはしたが、ざっくりで言えばこの二点か。
「なるほど、それで錬成石という訳ですね……」
説明を終えた俺に、アレイダはこう口にした。
そうなんですよ。錬成石が沢山要るんですよ。
『ダンジョンボス:エリミネート・スパイダーのダンジョンへの接近を確認しました。
警戒をしつつ、残りのモンスターを撃破して下さい。』
というテキストアナウンスが、いきなり視界の上部に現れた。
アトラフィ戦の前に流れたアナウンスに似たヤツだ。
「お、そろそろボスが出てくるか」
ここまで、多少道が分岐することはあったが、ほぼ一本道で来ることが出来た。
もっと複雑な構造になっていると踏んでいたけど、案外とそうでもないんだな。
「そのようですね」
俺の言葉にエイジが頷く。
「く、蜘蛛ですか……」
と、コットは早くも弱気になっていた。
アレイダもどこか目が遠くに行っている。
スミレは……、ギリギリ戦えそうだ。ギリギリ。
おい、戦意喪失が早すぎるぞ女子達よ。
「エイジ。これは俺達、多少無理して戦わないといけないかもしれないぞ」
エイジと視線を交わし、肩をすくめてみせる。
「ここまできたら、レコードはもう目前。意地でもレコードに名前を残したいので、協力よろしくお願いします。ソウキさん」
なんだよ。超やる気じゃねぇかエイジ君。
そんな頼まれ方をされちゃあ、やるしかないね。
「あいよ。やれる事はやってやるよ」
「感謝します」
「やーめろってそういう堅っ苦しいのは。
恐らくは大丈夫だろうが、倒せなかった時はすまん」
「その時は、僕達の力不足だったという事で。
さぁ、残りのモンスターを倒してしまいましょう!」
ちょっと頼りなさげな部分はあるけど、なんだかんだでエイジも結構リーダー気質な感じがするな。
俺としちゃあ、こういう奴がパーティを引っ張ってくれるなら気楽でいい。
そんなエイジと共に俺は前衛を張り、女子三人を後ろに連れて残りのザコモンスターを処理する為、廃坑道の奥へと進んでいく。