可動制御反応
戦闘システムについての説明回です。
PvP回りの戦闘システムについてもその内説明回を設けられたらなと思います。
「なるほどなるほど。これはタメになる」
プレイングマニュアル[戦闘]の項目を眺めながら、俺は二体のスケルトンの攻撃から逃げている。
やっぱり、モンスターには弱点部位ってのはあるらしい。
たった今、俺は二体のスケルトンを錬成した拳闘で倒した訳なのだが。
一体目は頭一撃。二体目は胴体二撃で倒せたという結果だった。
弱点の無いモンスターも居るらしいが、大抵の敵は頭に攻撃入れときゃあ追加ダメージが入るよって感じだな。
弱点についてもなかなかいい情報だと思ったが、俺が特に有益だと思ったのは「可動制御反応」という戦闘面でのシステムについての解説だった。
対人戦では全く異なる処理をされるらしいから関係は無いが、対モンスター戦に限った話では、可動制御反応というちっと特殊な挙動処理が設定されている。
例えば今戦闘を行っているスケルトン。
コイツの持っている剣と、チュートリアルリッパーで打ち合うとしよう。
この時スケルトンの剣がの攻撃力が10、俺のチュートリアルリッパーの攻撃力が8とした場合、打ち合った瞬間に俺にダメージが入り、俺とスケルトンは鍔迫り合いになる。
そして俺とスケルトンの攻撃力が逆転した場合も、ダメージ判定がスケルトンに移るだけで、鍔迫り合いという結果はそのままだ。
だがこの時、プレイヤーの方が上でモンスターの攻撃力の方が下、という関係でダメージ算出をする際、プレイヤーとモンスターとの攻撃力の差が1.5倍以上開いている時に限り、攻撃を打ち合った瞬間にモンスターの攻撃を弾いた上で、「のけぞり」効果を与える事が出来る。
これが、可動制御反応というものらしい。
プレイングマニュアルを読み進めていくと、更に面白い事がわかった。
プレイヤーの攻撃力が、モンスターの攻撃力と同数値以上の時に限り、武器を振るう力加減よっては、可動制御反応に必要な1.5倍の差をアシストをしてくれるという事だ。
雑に説明するなら、ザコモンスターの武器目掛けて全力で武器振っときゃ、とりあえずのけぞりを取れるかもよってこったな。
攻撃力の高いボスに対してはあまり使えるものではないが、ザコ戦ならば一人で複数体を相手にしなきゃいけない時なんかはかなり使える。
可動制御反応か。これは戦闘時に意識しておく事としよう。
「さて、あまりノロノロとやり合っていてもアイツらが可哀想というもの。
サクッと処理して向かってやるとするか」
手前のスケルトンの頭を殴って吹き飛ばし、最後の一体が振ってきた剣に拳闘で思いっきり殴ってみた。
せっかくだから、可動制御反応とやらをしっかりと体感して掴んでおかないとな。
「なるほどね。理解した。サンキュースケルトン」
のけぞり、無防備な姿勢を見せた最後のスケルトンを難なく倒した俺は、正解のルートへと進む為、今さっき来た道を引き返す。
「悪ぃな遅くなって。アレイダとエイジはまだか」
「あっ、ソウキさん。お二人はまだ来てませんね」
スケルトンの知覚範囲外に待機しているスミレとコットへと声を掛けた。
俺の声に反応したのはコットだ。
三つの内、左の道を選んだ俺が次に選ぶのは当然真ん中の道だ。どうやらここが正解らしい。
スケルトンの群れの向こうの壁に、先へと続く道らしき大きな亀裂が入っている。
「ここで二人が来るまで、もう少し待ちましょう」
「ん、俺は先に行く。二人が来たら参戦してくれりゃあいいぜ」
スミレの提案を蹴り、戦闘準備を整える。
やっぱ拳闘だな。ここは。
ショートカットを操作して拳闘を錬成すると同時に、俺はスケルトンの群れへと突っ込んでいく。
「何体いっかな……。十は居るか?」
さすがにこの量の敵に囲まれでもしたら、いくらHPが満タンとはいえ、瞬殺されちまうだろう。
「んま、それでも突撃するのが、俺」
頭に一撃当てれば倒せるのはわかってるから、後はスケルトンからダメージを貰わないように立ち回れば余裕だ。
スケルトンの武装は全て剣と盾だ。まぁ何とかなるだろ。
群れのすぐそばまでやって来て、目の前に居る二体のスケルトンの頭をブン殴ってやった。
「ほい、まずはこれで二体と」
知覚範囲へと入った俺へと一斉に向きを変えてくるスケルトン達。モテ期到来か、嬉しかねぇけど。
「弾いて、三。手首を蹴りーの四」
覚えたての可動制御反応も駆使しながら、次々とスケルトンを潰していく。
「痛ってぇ五、六。壊れた……うらっ!」
六体目を倒した瞬間に拳闘が壊れた。位置も悪かったせいかダメージももらっちまった。
チュートリアルリッパーを抜き、七体目のスケルトンの攻撃を可動制御反応を用いて弾いていく。
「そいそいっ。錬成、これで七」
八体目と九体目の攻撃を、これも可動制御反応で弾いてのけぞらせ、即座に拳闘を錬成。七体目を倒す。
「八、九。弾いてラースト。っと」
のけぞりから回復しそうだった二体のスケルトンもパーンしてあげて、残った一体はちっとばかし遊んでやった。
ちょっきし十体。軽傷で殲滅だ。
出来ることならノーダメージで終わらせたかったけどな。
「お見事です。まさかあんな一瞬で全滅させてしまうなんて……。まさに圧巻の一言でした」
二人の元へと戻ると、スミレからこんな風に称賛の言葉を浴びせられてしまった。
「スミレの方がもっと上手く、軽やかに立ち回れるんじゃないか?」
武器のリーチ的にも、一対多数という戦い方も出来そうな気がするが。
「ソウキさん凄かったです。 どんどん強くなってますね」
コットからもこんな言葉を掛けられた。
確かにな。どんなスキルが仕込まれているか今はまだわからない部分が多すぎるが、それを少しずつ解放していく事によって、どこまでも強くなっていけるような気は大いにある。
……実際はそんな事もなく、本当に気だけかもしれないけどな。そうではないと信じたい。
んま、今回の戦闘に関しては単純に、錬成拳闘の火力が高いだけなんだけどな。
ここからもう少し上げられるんだぜ。とは言わないよ。
「お、来たな。スケルトンに手こずったか?」
エイジとアレイダの二人も、ちょうどよく合流してきた。
「お待たせしてしまってすみません。蜘蛛型モンスターに少し手間取ってしまいました」
そう言っているエイジの方はHPが少し減っていた。アレイダはというと、HPは満タンで、少し俯いていた。
これアレだろ。アレイダは蜘蛛が苦手でエイジに戦わせせてたヤツだろ。
「蜘蛛ですか、わたし怖いです」
「私もどちらかというと苦手です……」
コットとスミレが二人してそんな事を言っている。
「んま、俺とエイジで蜘蛛は何とかしてやるよ。先に進もうぜ」
スケルトンを全滅させ、亀裂の先へと進めるようになった俺達は奥へと進んで行く。
俺とエイジを先頭にして。




