「廃坑道」攻略の準備
今回も盾についてをくどくど書きすぎました。反省はしてません。笑
ただ、これだけではちょっと味気ないので、書き上げられれば夜にまた更新したいと思います!
「へぇ。ギルドに入るとこんな特典があるんだな」
「はい。そうなんです」
ギルドエリアへとやって来た俺達は、アレイダに案内されるままマスターの部屋まで来ることとなった。
そこでギルドボックスにある分だけの無属性の錬成石を全て貰った。
これで錬成石の数は462。ギルド様々だな!
だが全て使い切っても、この分での錬成回数は924。しんど。
しんどいと言えば、ここに来るまでにすれ違った『ピクティス』のメンバー達の視線が痛かったしな。恨むぞアレイダ。
……通常ならば他のプレイヤーからアイテムのやり取りをする場合、ショップ端末で売買をするしかない。
ところが、これがギルドに所属しているプレイヤーだと少しだけ状況が変わる。
ギルドマスターからアイテムを「分配」して貰うことが出来るのだ。
ただ同じレアリティでも、内部的にはレアリティのレベルが異なるようで、無の低級錬成石は貰えたが、火の低級錬成石はシステム的に貰うことが出来ない。といった感じだった。
これはアイテムやゴールドをギルドへと納め、「寄付ランク」なるものを上げていくと、この分配システムでギルドマスターがそのプレイヤーへと渡す事の出来るアイテムのレアリティを、少しずつ引き上げる事が可能となるらしい。
寄付ランクを上げまくれば、最終的に赤レアの武器とかをメンバーに渡せたりするようになったりしないかね。
それがあるなら、ギルドはいつか所属してみたい。
「さて、これで準備は整ったな。ダンジョンの攻略は三人で行くのか?」
「いえ。先程一緒に居た二人を合わせた、五人編成でダンジョンに臨みます」
あ、そうだったのか。今度はあの二人を置いてけぼりにしちまって悪いな。
「ダンジョンにはもう挑んだのか?」
「いえ、今回が初めてとなります」
「なら、エイジにカイトシールドを持たせてやれ。
盾に慣れてない奴がバックラーを担ぐもんじゃない。あれなら無い方がマシだ」
バックラーは円形シールドの一種で、円形シールドよりも少しだけ小型の盾だ。
銃の普及と共に、徐々に失われていった西洋剣術というものが現存していた頃の話。
レイピアという、突き攻撃による殺傷性を高めた武器が存在していた。
元々は両刃で打たれた細い剣で、これは先端部や両刃の部分で斬る事も出来る。
時代が進むにつれ、形状の美しさや競技性を高めるフォルムが追及され、フェンシング等で見られるエペや細剣といった、両刃の無い突き専用の形状へと変化していった。
東洋剣術では刀の切れ味が重視されたが、逆に剣の丈夫さの方が求められた西洋剣術では、ブロードソードやロングソードといった幅広の刃を持った剣を握る兵士が多く居た。
それとは別に派生した、戦闘における動作の軽快さに特化されたのがこのレイピアである。
レイピア最大の特徴はヒルトと呼ばれる柄の部分にあり、柄を握った手を守る為の、「曲線状の鍔を持つ柄」という意味のスウェプト・ヒルトという、特殊な形状の鍔が付け施されている物がレイピアの殆どだ。
レイピアはパリーイングダガー、またはマインゴーシュと呼ばれる、敵の攻撃を受け流す為のダガーを左手に持って戦う、東洋剣術で言うところの二刀流スタイルが主流だった。
東洋剣術の二刀流の方が、武器を扱う技術的なものは難しいとされているが。
そんなレイピアの中にはフックがついた物もあり、ガードした際にこのフックを剣の刃に絡ませ、そのまま相手の剣を折ってしまったり、レイピアのヒルトの形状を活かした受け主体の戦闘とする事で、ダガーにしか可動を許されぬ超近距離の間合いに持ち込めるなど、流麗な見た目に反した攻撃的な戦闘スタイルと二つのリーチを持っている。
このレイピアを扱う上流騎士や兵士がダガーの変わりに好んで扱った盾が、バックラーという小型軽量盾なのだ。
バックラーはダガーで受け流すというよりも、その質量を以て相手の剣を強引に押し返すという使い方をする。
口では簡単に説明出来るが技術的にはダガーより難しいし、エイジはレイピアを担いでいる訳でもない。
バックラーとは、攻撃を防御する為の物では無く、相手の攻撃を無力化し攻撃へと転化する為の物なのだ。
ましてや、相手は人でなくモンスター。
間合いや扱いの難易度、防御性能の事を考えれば、素人が扱うならばカイトシールドの方が遥かに良いだろう。
だからこその、無い方がマシという発言だ。
ダメージを受けた際に回復してくれるコットも居る。
防御なんて捨てて攻撃に全ての意識を回した方が、パーティの総合力が上がるという意味。
「わかりました。エイジさんにはカイトシールドを支給します」
……それから待つこと二分くらい。
アレイダに呼ばれたエイジとスミレは、マスターの部屋までやって来た。
二人をパーティへと迎え入れ、エイジの左手にはアレイダから分配によって支給されたカイトシールドが握られる。
流石はギルドの主力メンバーだな。
この位の装備なら分配で手に入れられるって位には、寄付ランクが高いって訳だ。
しっかし、やっぱカイトシールドは良いモンだな。盾として完成されてるよ。
「さて、行くか。廃坑道だっけか。そこへはどうやって行くんだ?」
「ダンジョン自体は、アトラリア砂道へと出て、挑戦権をリーダーが使用すればどこからでもパーティごと侵入できます」
俺の質問にアレイダが答える。
なるほどね。後はもうダンジョンに入るまではアレイダに任せちゃっていいって事だな。
「うし、じゃあ早速アトラリア砂道へ行こうぜ」
こうして俺とコットは、アレイダ、エイジ、スミレの三人を合わせた計五人でダンジョン、廃坑道へと挑むこととなった。
 




