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『未来を視る剣、明日を見る盾』―3

【MST】様の執筆作品


Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─


とのコラボクエスト回、最後の話です!


 

 次に返された視界では、俺達はいつの間にか魔王サマの居る魔王城の、謁見の間へと送られて跪いていた。


 ネモとチェントも隣に居る。どうやら本陣への奇襲は成功したみたいだな。


 謁見の間で話を聞いていた限りでは、ベスフル軍との戦いは最終局面を迎えようとしているとの事。


 後は、ヴィレントの存在。

 コイツを倒すことが出来れば、魔王軍の勝利はほぼ確実といってもいい。


 だが、一つ気になる事があった。チェントとヴィレントの関係性だ。


 俺達は二人の間に何があったのかは当然だが知らない。

 だが、だからこそ。このままヴィレントを倒しちまう事が、チェントに取ってのトゥルーエンドとなり得るのか。


 まぁ、そんな事を深く考えていたって仕方無いんだけどな。


「ガイアスよ」


「はっ」


 玉座に座る魔王の隣に立っていた大男、ガイアス。

 チェントの話によると、魔王よりも体躯の大きなガイアスは魔軍総長という地位にあるらしい。


 魔王城に配置された四つの主だった部隊の指揮を執ると同時に、魔王サマが居ない状態で魔王軍を動かす際、全軍の指揮を任された男だとのこと。


「チェント達四人をお前の部隊に入れてやることは出来るか?」


「はい、問題ありません」


 ガイアスの自信に満ちた返答に、魔王サマは満足気に頷く。


「我々は全総力を以て迎え撃ち、ベスフルを叩く。今度こそベスフル軍は完全に終わりだ!」


 魔王は拳を強く握り、声を上げた。

 それに応えるように、謁見の間に控える総ての兵士が、将が歓声を上げる。


 魔王軍の士気は、これ以上高まる事が無いと思える程、最高潮なものとなっていた。


 歓声が静まる頃、魔王サマはチェントへと視線を向けた。


「チェントよ。そしてネモよ。横の者達と共に、貴様の兄ヴィレントを見つけ出し、討ち取るのだ」


「はっ。兄を討ち、魔王軍を勝利へと導いて見せます」


 チェントの言葉を最後に、もう何度目になるかわからないローディング画面が視界を奪う。


 そして視界が切り替わると、俺達は平原に立たされていた。


 遥か前方にはベスフル軍の大軍。

 恐らくはヴィレントの存在が、ベスフル軍をここまで駆り立てているのだろう。


「作戦通りに頼むぞ。準備は出来ているか?」


 チェントとネモに向けて、ガイアスは声を掛けた。

 その言葉にチェントは声を発する事なく頷きで返す。


 ガイアスは青黒い鱗を持った飛竜に跨がっている。

 竜を乗りこなすその姿は、魔王軍の将として相応しいと言わざるを得ない、実に堂々たるもの。


 今更だがヴィレントの側に付いていたら、ガイアスとも戦えたのかね?

 まぁ、今はこのクエストの、魔王軍サイドの結末を楽しむ事としようじゃないか。


「では、始めるとしよう」


 ガイアスは手にしていたバカデカい弓に矢をつがえ、放つ。

 冗談かと思えるような轟音を立てながら、矢は真っ直ぐベスフル軍の元へと吸い込まれていく。


 風の抵抗を受けながらも尚、とてつもない力でぶっ飛んで行った矢は、直撃した騎兵の周囲にまで極小規模の被害を撒き散らした。


「なんつう威力だ……」


 ガイアスのデモンストレーションに、魔王軍は更に士気を高めていく。

 興奮冷め止まぬ内に、ガイアスの弓の一射が開戦の合図となったらしい。


 ベスフル軍の騎兵は一斉に、こっちに向かって突撃を開始する。

 ガイアスは更に矢はつがえ、放つ。威力もさることながら、弓の腕も見事なものだ。


(うへぇ~……。敵じゃなくて良かった~)


 次にベスフル軍を襲ったのは、チェントの範囲魔法。

 赤い竜巻が騎兵を呑み込んでいき、開幕早々、ベスフル軍は壊滅してしまうんじゃないかと思った程の甚大な被害を受けている。


「ふぅ……。うまくいったよ。ネモ」


「よくやった。チェント」


 息を整え、汗を拭うチェントにネモは労いの言葉を掛けている。

 この二人は二人で、良いコンビだな。


「ネモの言う通りだ。見事だチェント」


 ガイアスはチェントの横に並び立ち、称賛の言葉を静かに掛けた。


「――敵に追撃をかけるぞ! 俺に続けぃ!」


 後ろに控える大軍へとガイアスは号令を掛け、いよいよ以て最後の戦いが始まる。


 ――そして来る、いや来るべくして来た強襲(ヴィレント)


「エルドっ!」


「わかってる!」


 チェントを目掛けて放たれた横薙ぎの一閃。

 俺よりも気付くのが早かったエルドが、どうやって急接近してきたのかもわからないヴィレントの剣を抑えてくれている。


「来たね。兄さん」


 ネモは三つの浮遊する魔力盾を体の周囲にふよふよと浮かばせ、チェントは赤い魔力の剣を右手に纏わせ、既に戦闘態勢は整っていた。


 俺達四人と、ヴィレントとの最終決戦が始まる。



「なんでだよ、チェント。どうしてお前は……どんどん母さんに似てくる。

 母さんと同じ目で、同じ顔で、俺を責めるんだ!!」


 ……四人がかりでの戦いは、呆気ないほど簡単にヴィレントのHPを削り切る事が出来た。

 HPは既にゼロだが、ヴィレントはまだ生きている。恐らくここからはイベントだろう。


 俺とエルドは武器を納めて、兄弟の最期を静観する事にした。


「もういいよ、兄さん。私もいつかそこに逝くから。

 ……その時は、一緒に母さんに謝りに行こう」


 チェントの一撃は、ヴィレントの手にしていた剣を弾き飛ばした。

 ヴィレントは、それを目で追うことしか出来ないでいた。


 剣を振り上げ、(チェント)(ヴィレント)へ向け、最後の一撃を振り下ろした。


「チェント……」


 ヴィレントは、懐に忍ばせていた短剣をチェントの胸元へと突き立てようとしていた。

 ――が、ネモの浮遊盾がそれを防いで拒絶する。


「――すまなかっ……、た」


 チェントの魔力剣の刃が、ヴィレントの首筋を掠める。

 最後の力を振り絞ってチェントへ「すまなかった」と一言だけ残し、その場に崩れるようにしてヴィレントは死んだ。


 ヴィレントの返り血を浴び、チェントは兄弟の戦いに、魔王軍とベスフル軍の戦いに終止符を打った。


「……終わったな」


「あぁ」


 俺はネモへと声を掛けてやり、エルドとネモと視線を交わし合い、頷き合った。

 最後にネモへと視線を移し、死んだヴィレントを抱きかかえるチェントへと向けて「行ってやれ」と顎で合図する。


 ネモは頷きを一つ返すと、チェントの元へと小走りで向かっていった。


「さて、ここで二人とはお別れみたいだな」


「そうみたいだね」


 俺達の背後には[転移の渦]が現れていた。


「俺達は退場するとしよう。こんな辛気くさい世界、俺はそろそろ限界だ」


「ソウキ、不謹慎だぞ?」


 うるせぇ。言ってろ。

 チェントとネモに別れの言葉を告げることなく[転移の渦]へとアクセスし、俺達はバリトンへと戻ることとした。


 ローディング画面には、こんな文が添えられていて、あの後どうなったかを簡単に説明して締め括られていた。


『そして間もなくベスフル軍は壊滅し、魔王軍の圧勝とも言うべき形でこの戦争は終わった。


 魔族の支配する、新たな世界。


 チェントとネモは、新たな時代、新たな平和を守る為、そして、魔族の未来の為に剣を振るうのだった』


 と。これにて『未来を視る剣、明日を見る盾』のクエストはクリアだ。


「歯ごたえは今ひとつだったけど、なかなかボリュームのあるクエストだったな」


 バリトンへと戻って来た俺とエルドは、今回のクエストの感想を言い合っていた。


「そうだね。凄く良いクエストだった」


「だろ? やっぱお前の選ぶクエがダメなんだって」


「……反省はしてる」


 ほんとかよ。まぁいいや。


[ネモの浮遊盾]

『ヴィレントの最後の攻撃からチェントを守った、ネモの浮遊盾。


 はめ込まれた浮遊石は破壊され、今はもうただの盾と化している。』


 と。


[ヴィレントの剣]

『英雄ヴィレント・クローティスの愛剣。

 無骨で、これと言った特徴のない大振りの剣だ。


 チェントの猛攻によって、剣の刃は折れている。』


 の二つのアイテムが報酬だった。


 残念ながら二つともクエストアイテム扱いだ。使ったり、装備したりする事は出来ない。

 んま、クエストの思い出の品みたいなもんか。


 また気が向いたら、ヴィレント側に付いてやってみるとすっなか。気が向いたら。


 新たなクエストを受けるべく、俺とエルドはクエストメニューを開いた。



「――ねぇ。ネモ」


「どうした? チェント」


「あの二人、また会えるかな? ちゃんとお礼が言いたかったな。

 ネモを守ってくれた、救ってくれたお礼」


「あぁ、そうだな。あの二人が来てくれていなければ今頃は……。

 俺は君の兄の一撃を受け、ここには居なかったかもしれない」


「……」


「冗談だ。そんな顔をするなチェント。また会えるさ。

 その時は、また魔王軍に協力してもらおう」


「そう、だね。その時には、もっと良い世界になってるといいな」


「なっているといい、じゃない。していくんだ。皆の手で、な」


 ネモの視線の先に居る少女は、ただ守られていただけの英雄の妹でも、裏切り者の娘と呼ばれた者でも、今はもうない。


 魔王軍に所属する、可憐で立派な戦士の姿だった。


「行こう、チェント。魔族が世界を治める、新しい時代がこれから始まる」


「うんっ」


 ネモはチェントへと手を差し伸べ、チェントもそれに応える。

 繋がれた手の温もりを互いに感じながら、二人は指を絡めた。


 星々の煌めきが二人を祝福するように、魔王城へと続く道を照らしている。


 チェントとネモは希望を胸に、未来へと進むようゆっくり、静かに魔王城へと消えていった。






『未来を視る剣、明日を見る盾』:Fin.





如何だったでしょうか?


今回が初の試みということで、ちゃんと書けているか不安な面もありますが、


Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─


を何回も読み返して、自分なりの精一杯を書いてみたつもりではいます!


Twitterでも募集しておりますが、こんな作品ともやってみてほしいという作品が御座いましたら、是非ともリクエストして欲しく思います!


作者様に頼み込んでみます!ww



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