アトラフィの待つ英雄
活動報告で予告していた、三人称視点でのアトラフィ周りの説明回(?)です。
わかりやすく書けているといいですが……。
次回からアトラフィ戦となりますので宜しくお願います(゜ロ゜)!
ソウキを含む、計五名のプレイヤーへと向けてアトラフィから放たれたビーム攻撃、『アトラフィス・パルサー』。
戦闘開始時、ランダムに五つのパーティが選出され、その中から五つのパーティそれぞれの「最も攻撃力の高いプレイヤー」が内部算出され、そのプレイヤーへと開幕攻撃を仕掛ける超長遠距離射撃攻撃。
攻撃時の予備動作の無い『アトラフィス・パルサー』は、アトラフィのHPゲージがレッドゾーンまで削られると、攻撃の動作が追加され『アトラフィス・ファランクス』という技に変化する。
ダメージこそ小さく分散されるものの、フィールドに居るプレイヤー全員へとビーム攻撃が及ぶようになるのだ。
そんなアトラフィだが、その他の武装は自身の右腕に取り付けられたブレードしか無い。
しかし、そのブレードから繰り出される剣技は、さる英雄から学んだもの。
アトラフィの真の恐ろしさは『アトラフィス・パルサー』による遠距離攻撃などでは無く、己の身によって機械化された英雄の一閃。つまりは近距離にある。
血塗られし人造神機・アトラフィ。
『名工エレドア』の手によって、人々を守護する目的で人造人間としての生を受けたアトラフィ。
機械の体を持ったそれは、人の手によって生まれ、人と共に平和を目指し、人と共に戦った。
かつてアトラフィと共に平和の為に戦い、名前の無かった命に「アトラフィ」の名を与えた者が居る。
――今から語るその者のこれからが、アトラリア砂道の始まりだ。
……いや、始まりだったと言うべきか。
その者の名を『大英雄アトラリア』という。
この時のアトラリアは、王国に兵士として仕えるため、己の剣技を高めるべく放浪の旅に出ていた只のアトラリアだった。
風の噂で、そこに住まうとされる賢者に会いに森林へと来ていたアトラリア。
アトラリアはそこで、たまたま目にした『マーテルの大樹』とその周囲が映し出す、まるでそこだけ切り取られ時でも止まってしまったかのような、息を呑む程な静の空間を目にした瞬間から、この地を大層気に入った。
後の大戦で大きな功績をあげ、『大英雄アトラリア』となったアトラリアは、その褒賞としてこの地に名を付ける事を当時の国王へと懇願し、それを許された。
渇いた砂の道がどこまでも広がる、枯れきったこの地の本来の名は、「アトラリア森林」という。
恵みの雫を流す『マーテルの大樹』。これによってアトラリア森林は豊かな緑と青に包まれていた。
……しかし、トリットの存在が全てを失わせていた。
アトラリア森林を守る。それが今は亡き『大英雄アトラリア』とアトラフィが最後に交わした約束だった。だったのだが……。
幾百年という時の流れた後、トリットによってアトラリア森林に異変がもたらされていると同時期、アトラフィの身にも異常が起きていた。
誰も知らなかったのだ。『名工エレドア』も、『大英雄アトラリア』も、そしてアトラフィ自身でさえも。
与えられただけの思考回路が傷付き、劣化していくという事など、誰も。
ただただ過ぎていく時間が、少しずつアトラフィの自律回路を蝕んでいった。
いつしかアトラリア森林から豊かな自然が消え去り、この地はアトラリア砂道と呼ばれるように。
そしてアトラフィの中でアトラリア森林を守るという事が、アトラリア森林に近寄る人間を抹殺する事これ即ち、アトラリア森林を守る事になる。
という間違った認識に置き換わってしまったのだ。
存在自体を危険視されたアトラフィへと討伐隊を差し向けるも、結果は全滅。
討伐隊の返り血を全身に受け、その身を紅に染めていったアトラフィ。
英雄の技を使う、人間よりも強固な肉体を持った存在に勝算無しと判断した人類は、アトラフィへと明け渡すように、アトラリア砂道を放棄することとした。
アトラフィは今も幻視している。
草木が消え、湖も枯れたこの地に今も尚、遥か過去にあったその豊かな光景を。
アトラフィは待ち望んでいる。
己の鼓動を止めてくれる、新たな英雄となり得る存在が現れる事を。
 




