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マーテルの杯:騎士編―4

昨日深夜にあげるよていが寝てしまいました……。


そんなギルティな僕ですが読んで頂けると嬉しいです。


次の話で二章は終了でございます(゜ロ゜)

 

「……ん?」


 ローディング画面から、俺の視界はアトラリア砂道へと戻ってきていた。


 何かが変だ。その何かを説明することは出来ないんだが……。

 とりあえず、巨木の奥にはボスモンスターなのか、落ち葉色をしたカミキリムシのような見た目のヤバそうな蟲型モンスターがこっちに背を向けて鎮座している。


「どうした? ソウキ」


「いや、気のせいか。とりあえず、アイツがクエストに関係ある何かだろ。接触してみようぜ」


 蟲型モンスターは今のところただのオブジェクトとなっていて、[話しかける]のアイコンを動かすまでは動かない仕様となってるっぽい。


 目の前のアイコンをタップし、蟲型モンスターへとアクセスした。


「……悲シイ。悲シイ。私……ハ……」


 何という驚き。背後を見せている蟲型のモンスターが喋ったのだ。

 とりあえず、俺達は武器を納めて蟲型モンスターへと話し掛けてみる。


「どうしたんだ?」


「……!? 貴方達ハ……?」


 蟲型モンスターは振り返り、口を開いた。

 少しノイズがかったような、こもった声ではあるものの、聞き取れないという事はない。


 何だか、こうやってAIと会話するっていうのは不思議な気分だ。


「俺はソウキ。こっちはテュリオス。お前は?」


 人の名前を尋ねる時は……。なーんて言うつもりはない。

 俺は蟲型モンスターへと名前を教えてやる。


「申シ遅レマシタ。私ノ名ハ、トリット。モンスターヘト姿ヲ変エラレタ、元人間デス」


「なるほど。トリット、俺達はこの巨木が流す涙とやらを取り戻しに来たんだ。俺の言うことに何か心当たりはあるか?」


「アリマス。実ハ……」


 それから、トリットはすすり泣くような声で自分の身に起きた事を語ってくれた。


 トリット曰く、この巨木の名は『マーテルの大樹』というらしい。

 かつてはマーテルの大樹の流す恵みの雫が、この大樹を中心に大きな湖を作り出し、ここら一体は緑と青に包まれた美しい森林だったという。


 ……まるでチュートリアル期間の隔離区域(レギオン)のことを言っているみたいだな。


 マーテルの大樹と湖を愛していたトリットは、美しい景色を守る為の活動をしている最中(さなか)、ある魔法使いに会ったという。


「この大地を永遠に守る為のまじないをかけてやろう」


 そしてその一言の後、魔法使いからまじないを受けたトリットの身体は、瞬く間に今の蟲型モンスターの姿となってしまったらしい。


 悲しいことに、マーテルの大樹のあるエリアから出ることが出来ず、モンスターとなってしまったトリットがここに居ることによって、湖が枯れ、緑は消え、やがて大樹は雫を流さなくなった。


 トリットの存在が、この周囲一帯を(けが)し、蝕んでしまっていたのだ。


「なるほどな。で、俺達はどうすればいいんだ? 話を聞いた以上、お前を殺す訳にもいかんしな……」


 敵意を向けて来ない以上、倒してしまうのは心苦しいというもの。

 何か他にクエストのクリア条件が設けられてるなら、トリットを生かす道を選びたい。


「私ニマジナイヲ掛ケタ魔法使イヲ、此処に連レテ来テ欲シイノデス。

 マジナイヲ掛ケタ者デアレバ、私ヲ元ニ戻セル筈デス」


「わかった。そいつの名前とかわからないのか?」


「ノールディ、ト名乗ッテオリマシタ。奇妙ナ格好ヲシテイルノデ、スグニ判別ツクト思ワレマス」


 現実(リアル)であれば、これだけのヒントだけで人探しなんて不可能に近いけど、ゲームの中ならこれだけの情報があれば充分だろう。


「わかった。ノールディって奴を探してこればいいんだな」


「宜シクオ願イ致シマス。……ソレト、コチラヲオ受ケ取リ下サイ」


 トリットは手のひらに、光輝く何かを手にしている。

 蟲なのに人の手のように五本の指があることに少し驚きつつ、俺はトリットの手元の光にアクセスした。


 何も起きないし、何かを手に入れた感じでもない。

 が、トリットから何かを受け取った瞬間にローディング画面へと視界が切り替わり、今度はトリットの居なくなったフィールドへと戻ってきた。


[クエスト『雫を流す者』をクリアしました]

[接続クエスト『呪術師のまじない』が解放されました]


 とウィンドウが出て、クエストの完了を知らせるテキストがそこには記されていた。


「モンスターは居たが、戦闘無しでクリア出来たな」


 トリットとのやり取りの間、後ろでひと言も発することのなかったテュリオスが口を開く。


「……だな。とりあえずバリトンに戻って報酬を受け取るか」


 俺達は元来た道を辿って戻り、バリトンへと帰還した。

 メニューからクエストを開き、[クリアしたクエストを完了し報酬を受け取る]という項目をタップする。


 残念ながら接続クエストである『呪術師のまじない』は適正レベルが33となっていて、適正レベルに到達していない今、受注すら出来ない。

 というかいきなり33とか難易度上がりすぎだろ!?


 ……ともあれ、これで俺達は難なく報酬であるマーテルの杯と、騎士の雫を5個手に入れた。


 雫はどうやら、複数種あるらしい。

 剣士系なら騎士の雫が要るし、他にどんな雫があるか知らんが、それぞれの職業(クラス)に対応した雫を一定数消費して、上級職を解放していく感じらしい。


 そしてマーテルの杯は、初期では5個ずつしか持てない雫の最大所持数である99まで引き上げるアイテムのようだ。

 アイテムパックには破棄、売却不可アイテムの所に仕舞われている。


「この先を知るにはレベル33にならないと無理らしいな。先が長ぇ」


 フィールドボスであるヴォイドエッジアーミーを倒した訳なんだが、それでも俺達のレベルは6までしか上がっていない。

 33なんていつの話だよって感じなんだが……。


「そう言うな。クエストはまだまだある。少しずつ埋めながらレベルを上げて行くぞ」


「へいへーい。あ、そういえばテュリオス。俺達はフィールドボスを倒したんだよな?」


 俺はふと、あることが気になった。


「あぁ、レコードにもそう書いてあるだろう?」


「いや、次の区域(レギオン)、というよりはフィールドか。は解放されたのか?」


「アルマトは配下のモンスターと言っていた。まだどこかに隠れているかもしれないぞ?」


「……探してみっか」


 その言葉を聞いた瞬間、テュリオスは肩を大きく落としてため息を吐いた。


「貪欲だな、お前は」


 立ち直ったテュリオスはそう口にする。

 貪欲か? 普通だろ、こんなの。


「レアアイテムが俺達を待っている。それよりテュリオス、転職(クラスチェンジ)はまだ出来ないのか?」


 せっかく騎士の雫を手に入れたんだし、ここは上がれるなら上級職に上がっておきたい所だろう。


「あぁ、後で見てみる。……少し、ログアウトして休憩しないか?」


「そうだな。そうするか」


俺達は休憩がてら、腹を満たす為に一度ログアウトする事とした。


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