マーテルの杯:騎士編―2
Twitterの方では既に載せておりますが、ソウキのキャラ絵を描いて頂きました!
Twitterも作者名でやっておりますので探して頂けたら具現化されたソウキを見ることが出来ます!笑
絵を描いて頂いたお相手は塔野さん(@tounosyoubai)という方です!
しばらくは(永遠にかもしれませんが)更新の度に絵も同時に上げてツイートしようと思ってますので宜しくお願い致します(゜ロ゜)
「遠いな。めちゃくちゃ端っこなんだけど」
バリトンの門からアトラリア砂道へと出ててきた俺達は、全体マップを開いてクエスト『雫を流す者』の開始場所を確認していた。
先程ヴォイドエッジアーミーの居たボスエリアに転移するための光の渦まではほぼ一本道で来た為、アトラリア砂道のマッピングが全然進んでいない。
マップの右下の端っこに赤い点がポツリと打たれているものの、そこへと至る道順が今の所はわからないのだ。
「仕方ない。あんなすぐの所にボスエリアへと続く場所があったんだからな」
まぁ、明らかに何かある雰囲気の光の渦だったしな。
半分はボスの所までって言った俺のせいもあるかもしれないけど。
「んん? テュリオス。武器はどうした」
今気付いたのだが、テュリオスの腰には差してあったはずのブルーウルフサーベルが無い。
「ヴォイドエッジアーミーからドロップした剣と盾を装備すると、ここに仕舞われるようだな」
そう言ってテュリオスは抜剣した。
ただ、剣を抜いたは腰からではなく、盾からだった。
ヴォイドエッジアーミーが戦闘開始時からレッドゾーンに入るまで握っていた金色の剣が、武器の説明にあったように小型化されてテュリオスの手に今握られている。
金色というよりは、白金色と言った方がいいのか。わざとらしい豪華さではない。
「ほえぇ……。そういうギミックまで設定されてるのね。面白いな!」
エッジオブヴォイドとシールドオブヴォイドを同時に装備すると、シールドオブヴォイドの裏側にエッジオブヴォイドが鞘ごと仕込まれるようになるらしい。
試しにテュリオスに装備していたシールドオブヴォイドを外して貰うと、エッジオブヴォイドは腰元へとその位置を変えていた。
セット装備やシリーズ装備のボーナスやギミックには、こんな遊び要素が全部に仕込まれているとしたら、収集欲もかき立てられるというもの。
自分で装備出来ないのが残念でならない。
いいもん。俺には錬成武器があるもん。
「ただ、少し重いな。扱いに慣れるまで少し時間がかかるかもしれない」
テュリオスは再度シールドオブヴォイドを装備し、抜き払ったエッジオブヴォイドを振っている。
「戦闘に苦労はしないだろうから、クエストの場所に着くまでには慣れておけよ。さて、じゃあフィールドのマッピングからやっていきますかね」
アトラリア砂道自体は単純なマップ構成になっているのか、迷うことなくクエストの開始地点までもうあと僅かという所までやって来た。
ここまで来るのに、戦闘は七割配分でテュリオスに任せてエッジオブヴォイドの使用感に慣れさせる。
驚いた事に、シールドオブヴォイドによる盾攻撃ならば、オートボットは一撃。
ゴーレムに対しても二撃という、とんでもない高火力だった。
テュリオスは今『カラミティグランド』内でトップの攻撃力を持ってるんじゃないかと思わせる程だ。
というのも、エッジオブヴォイドとシールドオブヴォイドを同時に装備すると、セットボーナスで攻撃力が加算され、更にその両方に雷撃属性が付与される。
弱点である打撃属性プラス弱点である雷撃属性。テュリオスの今の打点の高さにも納得がいく。
しばらくの間、戦闘のメインはテュリオスに担ってもらおうかね。
「どうだ? だいぶ慣れてきたか?」
「あぁ。だいぶエッジオブヴォイドの重さにも慣れてきた」
ブルーウルフサーベルは長剣だったが、エッジオブヴォイドは直剣だ。
似たような武器種でも、重さや長さ、幅は微妙に違うからな。
神経質な奴は手に馴染む武器を手に取れるかどうかで、動きにはっきりとした違いなんかも出るだろう。
「まぁ、慣れてきたんなら戦闘はこんなもんでいいだろう。クエストを始めちまおうぜ」
「了解だ」
さっきまでは全くプレイヤーの居なかったこのアトラリア砂道にも、アルマトのお喋りが終わったのかちらほらと見掛けるようになった。
ソロで狩りをしている者が居たり、パーティで狩りをしていたりと各々で『カラミティグランド』の世界を楽しんでいる様子だ。
自分の体を使って遊べるし、現実では出来ないような動きもこっちでは肉体的な制約無しに可能な分、面白いんだろうな。
それが友達同士ならば尚更か。俺も楽しんでるしな。
「……あれか」
最後に戦闘を行った場所から、敵を無視しながらもう少し目的地へと向かって進んでいくとそれっぽい木が見えてきた。
もう全体マップをいちいち開かなくても、ミニマップの端に赤い点が表示される位には、目的の場所へと近付いている。
「そのようだな」
クエストの開始トリガーらしき木はもう目と鼻の先とまで言える近いが、そこへと続く手前の道にゴーレムが三体、道を塞ぐように生成されていた。
「ちょっとアレは俺一人に倒させてくれ。……準備運動だ」
俺はチュートリアルリッパーを引き抜いた。
……今思ったんだけど、チュートリアルリッパーの位置、変えようかな。
ヴォイドエッジアーミーへと放った最後のパンチ。
あれは打撃による攻撃の方が与えられるダメージが大きいし、チュートリアルリッパーの攻撃力をほんの少しでも上乗せする為にあぁした訳なんだけど、問題はその最後のパンチが左手によるものだったということ。
いくら仮想現実の中で肉体的な制約がないからって言ったって、感覚的な動きやその正確性ってのは、自分の意識や感性に依存したものになる。
あの最後のパンチの最適解は、左手でチュートリアルリッパーを抜き、右手でパンチをするべきだった。
結局はあのパンチを顔面にブチ当てることが出来たから勝てた。
勝てたから良かったものの、当てられてなければもうワンセット、ヴォイドエッジアーミーからの攻撃を待つ必要が出来てしまう。
瀕死状態だったアイツをあの場面で仕留めていなかったら、もしかしたら次のセットでとんでもない攻撃を仕掛けて来る可能性だって考えられたワケだ。今となってはな。
「構わないが……。それで戦うのか?」
テュリオスは右手に握ったチュートリアルリッパーを指差しながら、そんな事を口にする。
まぁ、抜いたからにはコイツで戦うつもりだったんだけど……。
「なんだ? 何か問題あるか?」
「いや……。いつまでそれを握るつもりなのかと思ってな。
さっき武器屋も見てきたんだが、各種チュートリアル武器よりもひとつ上のランクの装備が売っていたぞ?」
うん、まぁそれはそうなんだろうけどな。
「仕方ねぇだろ? ブルーウルフサーベルもエッジオブヴォイドも装備出来なかったんだ。
俺の頭ン中では、俺はチュートリアルリッパーと錬成武器しか装備出来ねぇと思ってんだよ」
「ソウキが生み出す錬成武器の持つ火力は、既に何度も見ているからよく知っている。
スキルで強化も出来るだろうし錬成武器に関しては特に心配はしていない。
だが……。問題はそれだ。この先サブウェポンとして使うには、チュートリアルリッパーは完全に火力不足だと思うんだが……」
と、言われてもな……。現状、錬成石は多く持ってはいるが、数にはやっぱり限りがある。
もっと供給力が高まって来ないと、そうおいそれと毎戦闘毎戦闘のように使うことは出来ないんだよね。
「……お前の言うことはもっともだ、テュリオス。だけどもっと簡単に錬成石が手に入る手段が無ければ、しばらくはコイツも使っていくしかない」
「何か手段があれば良いのだが……」
それは俺も同意件だ。何か手は考えないとな。
もういっそ、その辺のプレイヤーから錬成石を買い占めるか?
「無いモン言ってもしゃあねぇよ。とりあえずアイツら片付けてくっから待ってろ」
「了解だ」
チュートリアルリッパーを握りしめ、俺は三体居るゴーレムの元へと突っ込んで行く。
 




