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解放の鍵

あとがきにちょろちょろと。

 

「んじゃ、まずは役割の分担からだ。セイはトレイアと敵との距離感を見ながら、奴の攻撃のブロックと奴への攻撃を、俺と二人でやる」


「ん。オーケー」


「次は位置取り(ポジション)な。

 トレイアはフリー、セイは常に敵の体ぶん位の間隔を空けて、トレイアの右側をキープな」


「わかりました」


「やけに細かいね、今回」


「そうでもねぇよ。敵の動きを見てりゃあ、セイならやる事はすぐに理解出来んだろ」


「ふーん」


「しっかり頼むぜ。次はトレイアだな」


 俺は何故トレイアを選んだのか。

 どういう動きをして欲しいのかを、簡単にトレイアへと説明してやった。


 何故ってのは言うまでも無く、赤レア武器を持ってる事だ。


 ではどういう動きをして欲しいかってのが、赤レア武器と繋がっている大事な所なんだな。


「可動制御反応、ですか」


 そう。この編成で攻めるようと思ったヒントは、この間のギミックボス、ユーティス戦での事だ。


 ここをこの三人で抜けられるならば、あの時の違和感は確証に変わり、ついでに目の前に居る敵をタコ殴りに出来るってな訳だ。


「あぁ。まだ推測の域を出ないから、その可能性が高いってだけで、違ってたら悪い」


「もし違っていたら、死んじゃいますかね」


「かもしれねぇな。そんときは……すまん」


「その時は、『ムヒョルト』のレコードを一つお願いしますよ」


 そう言ってトレイアはにっこりと笑って見せた。

 コイツ、なかなかしたたかじゃないか。


「へっ。しょうがねぇな! ……ん、気付いたな」


 広いフロアを進んでいき、モンスターと俺達との距離が二十メートル程まで近付い所で、静止していたモンスターが動き出した。


 意外とデカい図体を持つモンスターの名は、セブンレイズソードマン。


 セブンレイズソードマンは俺達に向かって真っ直ぐと進んでは来るが、意外にも他のモンスターが現れたりする事は無く、このだだっ広いフロアに三対一で戦う事になりそうだ。


「二人とも、気を付けろよ!」


 ともかく俺は二人へと声を掛け、セブンレイズソードマンとの戦闘に備えた。


「じゃ、僕からいくね~」


 強敵と戦いたくて仕方の無いセイが、セブンレイズソードマンへと最初に斬り込む。


 今回の作戦は、三人の内の二人でセブンレイズソードマンのサーベル攻撃をブロック。


 ここでの二人は、可動制御反応をきっちりと駆使してダメージをカットする事を意識。


 残った一人がセブンレイズソードマンへとダメージを与えていき、敵視(ヘイト)をコントロールする。


 俺に敵視(ヘイト)が回っている時はセイと俺でサーベルをブロック。

 セイの時はセイとトレイア。

 トレイアの時はトレイアとセイ、といった具合で回していく予定となっている。


 が、セブンレイズソードマンがそこまでの敵であると判断すれば、三人で押し切っちまおうともなっているが。


「最初の内はカットしてやるよセイ!」


「さんく~す」


 んま、最下層(した)のフロアで鬱憤が溜まってそうだったし、ここはセイに思う存分暴れさせてやるとしよう。


 と思い初手をセイに任せてみたのだが、セブンレイズソードマンがセイにめちゃくちゃボコボコにされている。可哀想なほどに。


「……うわ、裏サインだ。超本気モードじゃねぇか」


 セイの左手をよく見てみると、これまたレアなサインを出していた。

 どんだけ最下層(した)でイライラしてたんだセイ。


 セイは『in world』からのクセで、戦闘中に指を立ててハンドサインを常に出している。


 親指、人差し指、中指を立て変えながら戦うのだが、これを理解する事でセイの今の本気(ガチ)度がひと目でわかる。


 親指が押し切り、人差し指がフェイク絡め、中指が速攻という振り分けだ。


 中指と人差し指で出す、一本指の二パターン。

 因みに親指は一本で出すことは絶対に無い。


 次に親指と人差し指、人差し指と中指の二本指の二パターン。

 ここまで来るとセイは相当手強い。並み選手ならここで沈む。


 基本的にはこの三パターンでセイの動きが変わっていくのだが、ほとんど見せる事は無い三本の指を全て立てる本気モードというのもある。


 セイ曰く、ここまで来るまでにはだいたいの戦いで決着がついているそうだ。

 因みにユーティス戦のラスト、セイは三本指だった。


 そして最後に親指と中指という、超攻撃型の裏サインが存在する。


 セイが言うには、「すごくムカついてる時」と、「これじゃなきゃ勝てない相手」でしか使わないらしい。


 で、この裏サインを出している最中のセイの恐ろしい所は、"端から見ているだけでは、普段通りのセイにしか見えない"という所だ。


("神童"の実力、未だ衰えずか。怖ぇ~っ)


 セブンレイズソードマンの攻撃を俺とトレイアでブロックしている間、セイの猛攻が止まる事は無く、あっという間にセブンレイズソードマンのHPを七割の所まで削ってみせた。こわ。


 すっかり忘れていたが、やはり可動制御反応の効果は持っている武器のレアリティの高さで変動するっぽいな。


 紫レアの宝雷剣・バルサの俺でノーダメージなら、赤レアを握るトレイアならもっと大丈夫だろう。


 そしてもう一つ、俺は忘れてはいけなかった事をすっかりと忘れていた。


「ワギ」


 突如、セブンレイズソードマンへの攻撃の手を止めたセイが俺のすぐ横にやって来た。

 それよりワギって呼ぶな……。


「ん?」


「ま~だ、本気出さないの?」


 いつからだかはわからないが、セイの口調がいつもより緩やかなものになっている。

 ……この時のセイは、本当にヤバい。


「いや、だいぶ本気だろ」


「ワギならわかるでしょ~。左手(これ)の意味」


 セイの左手の指は、相変わらず裏サインのままだった。

 裏サインを出している時のセイは、まるで人格が変わったかのように自身での歯止めが全く利かなくなる。


「わかるが……」


「僕、ワギの本気見たいなぁ。見られないなら、今ここでワギをキルしちゃおうかなぁ」


 ……ヤバい。セイは冗談抜きでこれを言っている。

 そして、現役時代のままの腕のセイならば、今の俺を瞬殺する事は容易い。


「セイさんっ! 攻撃を!」


「うるさい。消すなら、お前からか」


「ま、待てっ! 本気と言っても、どのくらいの本気が見たいんだ?」


「そりゃあ……。"魔人"と呼ばれてた時のでしょ」


「"魔人"……??」


 冗談はキツいぞ、セイ。

 と思ったが、今のセイは冗談を言うモードじゃかった。


「忘れちゃったか~。残念だよ、ワギ。ここでサヨナラだっ!」


 トレイアはこれで助かったものの、セブンレイズソードマンの攻撃を止めている無防備な俺へと、容赦なく斬り掛かって来ようとするセイ。


 やり過ぎな程のスローモーションのかかった視界。


 ゆっくりと迫るセイを見つめながら、記憶の中に固く閉じ込めた筈の黒い、ドス黒い(きおく)が、すっと俺の身体に重なった気がした。


「おい。アバターとは言え、これは俺の身体なんだろ?

 一回くれぇ、俺の思うがままに動いて見せろや。なぁ?」


 ――へぇ。一度は棄てようとした俺に、また頼ろうってのか?


 そんな声が、どこからか聞こえた気がした。

 とうの昔に忘れ去り、記憶の隅に追いやった黒い、ドス黒い(きおく)が、すっとこの(アバター)に重なる。


[プレイヤーの思考が情報体(アバター)の限界点に到達しました。]


 こんな文言が目の前に浮かんだと思えば、次の瞬間、更に長々とした文章が現れた。


『リミットの到達を確認。

 情報体(アバター)をアップデートしますか?


 [はい]  [いいえ]


 ※アップデートを行う事により、情報体(アバター)の限界値を大幅に引き上げます。

 これによって、情報体(アバター)の運動量が現実世界のプレイヤーの肉体の限界値を超えた場合、その超過分の負担がプレイヤーの脳にかかる事になります。』


 刹那的とも言える瞬間。

 俺は下半分の文章を読む事無く、錬魔剣クリスティアペインを握る右手で[はい]の部分をタップしていた。


長らく間を空けてさーせんでした。


本来はここでアバターのアップデートを行う予定はありませんでしたが、何故かやってみる気になりました。


次回、1000字くらい(ガバ)のテュリオス(だいだい)視点をサッと更新しまして、

その次は三人称視点でのソウキ&トレイア×セイ×セブンレイズソードマンの、三つ巴バトルをやってみたいと思います。


宜しくお願い致します(゜o゜)


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