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レア武器の三人


 一瞬とも言える程の僅かなローディングを挟み、俺の視界は先ほどの最下層から、一階層上がった下層フロアのものとなっていた。


「来たか銀髪」


 俺に気付いたアスティが声を掛けてくる。


「待たせたな。……敵はアレ一体だけか?」


 先へと進む扉まで汚れ一つ、障害物一つ無い真っ白なフロアに立つ敵は一体のみ。


 遠目から見える敵の見てくれは……前時代的RPGに出てきた、サーベルを両手に握る機械系モンスターに似てるな。


 ただ、この距離からでもはっきりと見える特徴は、そのモンスターの体を貫くようにして背後から伸びる、ひと振りの極大剣。


 飾りかもしれないが、あれを使った攻撃がある事も想定しておかないとな。


「みてぇだな。お前らを待ってたから、まーだ誰も手ぇ出してねぇぜ?」


「そうか。全員で飛び出して行くのも悪くは無いが……」


 その場合、フロアに居る一体と戦うパーティだけを残し、他のパーティはフロアの先にある扉に向かっていってもらった方がいいかもしれない。


 どーすっかな……。


「……この中で紫レア以上の武器を持ってんのは、セイとトレイアだけか?」


 声を上げる者は居なかった。

 つまりは、トレイアとセイ、俺以外のこの場の全員が持っている武器は、青レアが最高位って訳だ。


「よし。ならまずは、俺とセイとトレイアの三人で突っ込むぞ。

 トレイア、何故お前を選んだかとかの細かい事は後で教える」


「わかりました」


「僕はどうすればいいの?」


「それもアイツと打ち合うまでに説明する。

 やる事自体は簡単だから安心しろ」


「ん」


 正直、トレイアがどれだけの動きで戦えるかってのは未知数だが、頑張ってもらうしかないな。


 さて。そろそろコットにも出番を回してあげたい所だ。


「コット」


「はっ、はい!」


「暇してたか?」


「いえ。いつ指示が回ってきても、大丈夫なようにはしてありましたので!」


「頼もしくなったな。俺とセイのHPの動き、きっちり見といてくれよ。

 トレイアはHPが少なくなってきたら、コットにお願いして回復してもらってくれ」


 トレイアだけは別パーティで、コットにはトレイアのHPの変動は見えない。

 ここのやり取りだけは、マニュアルでやってもらうしかないな。


「わかりました。コットさん、宜しくお願いしますね」


「はいっ! わかりました!」


 これで準備が整った、という所で。


「……俺も行こう」


 と、エルドが名乗りを上げた。


「いや、お前はここで待機しててくれ」


「何故だか聞いてもいいか?」


 もちろん、エルドに来てもらえるならそれが一番良いのは当然だ。


 何度かパーティを組んで一緒に戦った事もあって、エルドの職業(クラス)としての戦闘力、プレイヤーとしてのセンスの高さはよく知っているからな。


「敵が一体しか居ないから、だな」


「……?よく言ってる意味が」


「一つ聞くが、お前の武器(それ)は初期装備か?」


「あぁ。そうだけど」


 エルドを連れて行くのは悪い事では無い。

 ただガラハディンは初期装備だから、多分レア武器じゃあ無い。


 それがエルドを連れて行かない理由の一つ。

 まぁ理由はもう一つあるんだけど。


「俺はこのフロアも全員生存で突破したい。

 その為には、レアリティの高い武器を持った奴が必要なんだ」


「奴がボスだった場合は?」


「そん時は、迷わず来てくれればいい。ただ……」


「ただ?」


「わからないか? こんな広いフロアに敵が一体。

 アイツがボスだとしても不釣り合いな広さだ。

 勘と言ってはアレだが、俺にはどうも罠に思える」


「確かに」


「後は、この三人での戦闘のイメージが見えたから」


「それは、理由としては何か変じゃないか?」


「まぁそう言うなって。イメージ馬鹿にすんなよ?」


 俺は笑いながらエルドにこう言った。


 俺のこのゲームにおける経験が弾き出した、頭の中にある戦闘のイメージは、今からの戦いはレア武器の存在がキモになってくるものってのは、たった今エルドに説明した所だ。


 説明に接続性は無かったが、今そんな時間は無い。


 何事にも、想像や想定ってのは大事だ。

 感覚に頼る事ってのは、時としてこういった理論や想像というような、みみっちい計算値以上の結果をもたらす事が大いにある。


 だがイレギュラー。

 つまりはその想像や想定に及ばなかった事情の発生、またはその連続によって事の流れが外れた時、自分がどうしたらいいのか、どうするべきなのかってのをどんなレベルでも良いから組み立てておくのは最低でもやっておくべきだ。


 感覚に頼るのはそれからでも遅くは無い。

 まぁ、そんな状況まで陥ってからの感覚なんてのは、どんな動き方であれ博打になるってのが俺の経験則なんだけどな。


「エルド。俺はどうしても、要所要所でお前をアテにしてる節があるっぽい」


「言ってる事と、頼んでる事が噛み合って無い気がするけど……」


「まぁ最後まで聞けよ。敵のあの配置が罠だった場合、真っ先に俺達の所に来る事ができ且つ、俺達がヤバそうだった時に一番なんとか出来そうなのは、お前だと思っててな」


「はぁ。そこまで買ってくれてるのは嬉しいけど」


「だからこそ、いつでも飛び出せる状態でここで待ってて欲しいんだ」


「……わかった。そういう事なら、ここで待機していよう」


 エルドはガラハディンを抜くだけ抜き、こう言ってくれた。


「っへへ。頼りにしてるぜ。っしゃ、行くぞセイ、トレイア!」


「早く斬りたい、アイツを」


 物騒が過ぎるぞ、セイ。


「準備は出来てます!」


 トレイアの言葉通り、クリムゾン・ブレイバーは既に戦闘形態だった。


 俺も武器を抜き、三人でゆっくりと機械系モンスターの元へと歩いて向かう。


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