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下層へ

 

「『硯音(すずりね)』はエルド達を援護しろ!」


「『ピクティス』の皆さんも、エイジ君達をお願いします!」


 上の階層へと上がる為の階段へと一直線に向かう中、刀導禅(とうどうぜん)とアレイダがギルドメンバーへと指示を出す声が聞こえた。


 さて。ここからエルドが一体どうするかだ。


 俺達の先頭には当然エルドが居る。

 そしてエルドと横に並んで先頭を走るのは、エルドから直接指名を受けたフィルだった。


 フィルはこの中で一番、範囲攻撃に特化した存在でもあるからだろう。


「【久遠へと至る剣の軌跡エヴァー・フレイズソード】」


 コボルト・ナイトの塊へと辿り着いたエルドがガラハディンを天へと突き上げ、スキル名をコールした瞬間――。


「――なっ!? マジかアレ!」


 ガラハディンの光の刀身が、とんでもない長さまで伸びた。軽く十メートル位あるんじゃねぇか。


「はぁぁぁああっ!!」


 それをそのまま振り下ろし、一直線にコボルト・ナイトの壁を大きく抉り取る。すっげぇ。


「……なるほど。アレで一点突破しようって訳ね」


 ただ、流石に一撃では向こうも通してはくれない。


 そしてエルドの方はというと、たった一回の攻撃でとんでもない長さのあった刀身を失ってしまった。


「さっき六体のコボルト・ナイトを一掃出来たのは、あのスキルがあったからか」


 大方、刀身の耐久力をそのまま長さに変えるみたいなスキルだろう。


「まだだっ! 【久遠へと至る剣の軌跡エヴァー・フレイズソード】っ!!」


 エルドはすぐさまガラハディンの刀身を生み出し、再度スキルを使用する。


 俺達はエルドが階段下のコボルト・ナイトを削っていくのを見ながら、背後に瞬間移動してくるコボルト・ナイトを倒す事だけに集中した。


「――俺がスキルを連続で使えるのは四回まで。

 それを確認したら、全員で一気に階段下の雑魚を処理してくれ」


 エルドは作戦を説明する中でこんな事も言っていた。

 そしてそれは、階段下を攻める俺達全員が知っている事でもある。


 何故エルドが【久遠へと至る剣の軌跡エヴァー・フレイズソード】は四回までしか使えないと言ったのかは、ガラハディンを見ていてなんとなくわかった。


 奴が【久遠へと至る剣の軌跡エヴァー・フレイズソード】を使う度、ガラハディンの刀身の属性が違うからだ。


 火、水、雷、光、闇。

 さっき駆けつけて来てくれた時に使った一回分と合わせれば、属性の数とスキルの使用回数が噛み合うからな。


 今ここに居る全員が、エルドの動きを見ながら各々がすべき事、出来る事をしている。


 そして――。


「っしゃあ! 行くぜお前らぁっ!」


「俺達も続くぜ!」


「お先に」


 エルドが四回目のスキルを発動した瞬間、キヨムラとムザサパーティ、そしてセイが先行して突撃して行った。


 この四度の超範囲攻撃で、階段下を阻むコボルト・ナイトの数は激減していた。


「この為のフィルって訳か」


 エルドの【久遠へと至る剣の軌跡エヴァー・フレイズソード】には遠く及ばないものの、フィルの範囲攻撃は止まらない。


 スキルの使えなくなったエルドが、そのままフィルの支援に回る事が出来る。


 雑魚処理でも対ボス戦でも活躍出来るこのコンビは、控えめに言っても強い。


「よし! 食いついたっ! フィルはそのまま進んでくれ!」


 そうこうしている内に、エルドとフィルが階段の一段目を踏んだらしい。


 エルドはそのまま階段の手すり側で、コボルト・ナイトが流れてくるのを防いでいて、その横を次々とパーティが抜けていくのが見える。


「流石に一人じゃキツいだろ。俺も手伝うぜ」


 俺もようやく階段へと辿り着き、エルドの援護に入った。


「助かる!」


 程なくしてようやく最後のパーティが、俺達の間を抜けてく。

 その最後のパーティはトレイア達だった。


「よっしゃ。行くぜエ――」


「――ソウキ! 気を付けろ!」


 最後の足掻きとでも言わんばかりに、コボルト・ナイトは俺とエルドの周囲を取り囲むように瞬間移動してきた。


「っは! 俺達だけでもぶっ殺すってか!」


「言ってる場合か!」


「やれるか? エルド」


 瞬間移動してきたコボルト・ナイトの数はさっきよりも多いが、距離や間隔が開いていることもあり、一体一体処理していく余裕はある。


 俺はコボルト・ナイトに応戦しながら、エルドの様子を伺う。

 まぁ、エルドも大丈夫そうだけどな。


「俺の方は問題ない!」


「あっそ。んじゃ俺も問題ね――」


「――大丈夫?」


 いつの間にか先へと登った筈の椿が降りて、俺達の戦闘に参加しているではないか。


「おい、何やってんだ椿」


「何って、助けに来たのよ」


「いや俺らは大丈夫だっての!」


 確かに、コボルト・ナイトの数だけ見ればこの状況はヤバくも見えるかもしれない。

 が、今の俺はエルドと一緒に居る。


 この程度の状況なら、椿が来てくれなくたってどうにかなるものなのに。


「先に行って。エルドも」


「椿……。何を考えてる?」


 エルドは少しばかり冷ややかな口調で椿にこう問い掛けた。


「私はもう少しここに残る。大丈夫よ、必ず追い付くから」


「って言われたって……」


「行って!」


「……絶対、上がって来いよ?」


「ソウキ!」


 エルドが今言いたい事は、わからんでもないんだけどな。


 フィルの事だってある。

 椿が上に行くか下に残るかってのは、俺達の都合で考えれば上に行くべきなのだろう。


 ただ、このフロアに残るプレイヤー達側の事を考えれば、支援(バフ)を全員に掛けられる存在である椿の言ってる事は、正しいとも言える。


(絶対ぇ今、アルマトの奴ニヤついてやがるな)


「えぇ。約束」


「エルドと二体ずつ潰してってやる。行くぞエルドっ!」


「……わかった」


 宣言通り、俺とエルドは二体のコボルト・ナイトを倒し、椿をその場に残して階段をかけ上っていった。


「エルドの読みが当たったみてぇだな」


「みたいだな。無駄にならなくて良かったよ」


 階段を上りきった先には扉があり、近くまで行くと[アクセスする]のアイコンが現れた。


 扉の前にはセイとコットだけが居て、他の連中は上の層へと進んだらしい。

 その証拠に制限時間も伸びている。


「早く行こう」


 とセイが俺を急かす。


「扉の向こうで皆さん待ってくれているそうです。……あれ? 椿さんは……」


「椿は下に残るってよ。だから俺達が最後だ」


「そう、ですか……」


 コットは残念そうにしていたが、こればっかりはどうしようもない。


「心配すんなよ。必ず追い付くって言ってたからな。先へ進むぞ?」


 互いにパーティリーダーである俺とエルドは目配せをし、頷き合ってアイコンをタップした。


 これで、階段へと攻め込んだ椿以外のメンバーが無事、下層へと辿り着いた事になるな。


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