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テイクツーだ!

誤字報告してくださった方、ありがとうございます。


オートボットのやりとりでは、ソウキは他者にわかりやすく伝える為に"ロボット"と言っている事を想定して書いた為、一応は誤字では無いです。


細かく読んで下さりありがとうございました!


 

「エルド!」


 声の聞こえた方を振り返れば、そこにはガラハディンを構えたエルドが立っていた。


 ガラハディンの刀身には(もや)(かす)みがかかり、今にも刀身ごと消えてしまいそうだった。ていうか消えた。


「どうせ死んでもまた復活出来る、なんて考えてたろ。今」


 そんなエルドは、俺にこんな言葉を掛けてきた。


「馬っ鹿言ってんじゃねぇ。死ぬまでに何体倒せるかを考えてたんだよ。

 ていうかお前、今俺ごと敵をぶった斬っただろ。許さん」


 俺のHPは四割程減っていた。


 コボルト・ナイトの攻撃を貰っているなら、俺は今この場には立ってはいないだろうし、【反理の痛み】のスキル効果でもここまでHPは減っていなかった。


 つまりは、今六体のコボルト・ナイトを一気に倒すついでに、エルドは俺へもダメージを与えていたという事だ。


「う……。それは謝る、すまない。……待たせたな、ソウキ」


「けっ。遅ぇんだよエルド。……おぉマジか……。勢揃いじゃねぇか」


 エルドの背後に目を凝らせば、フロアへは『硯音(すずりね)』を始め、『ピクティス』、『Zephy;Lost(ゼフィロスト)』と、その他の知らないギルドらしき塊が、いくつも侵入してきていた。


「残り時間は二十五分か……。ここは一旦皆に任せて、最初に突入したメンバーを安全エリアへと戻せるか?」


 エルドがこんな質問をしてきた。


「まぁ出来るだろ。じゃ死ぬか?」


「頼む。向こうでマスターが待ってる」


「あいよ。トレイア、フィル、キヨムラ、ムザサ!メンバー連れて安全エリアに来いっ!」


 四人からはすぐに返事が返ってきた。


 一度フロアへと出てしまうと、安全エリアへは自力では戻れない。


 戻るには死ぬしかないっていうのがなんともお粗末だが、こういう時にコボルト・ナイトの攻撃力が使える。使えるってなんだよ。


「セイ、一旦戻るぞ」


 エルドと別れ、セイの元へと戻った俺は、セイへと一度安全エリアに戻る事を伝える。


「えっ。うん、わかった」


 動きを止めたセイはコボルト・ナイトの攻撃を受け、突っ立ったまま半実体の体となった。


 ……死ぬとあんな風になるんだな。


 そして、蘇生受付時間のゼロになったセイのアバターは消えていった。


 残された俺は短刃剣(ファースト)で錬成してすぐだったから、適当に暴れてからHPをゼロにして安全エリアへと戻った。


「……うし、戻ったな。よぅ刀導禅(とうどうぜん)。結構早くに来てくれてサンキューな」


 俺とセイが戻る頃には、それぞれのパーティリーダーが刀導禅とエルドを交え、集まっていた。


「あぁ。だがまだ上へは上がれそうにないな」


「残念ながら、な」


「……俺のスキルを使って階段付近をこじ開ける。

 そこに戦力を集中させて、突破出来るプレイヤーだけをひとまず、上の階層に押し上げるのはどうだろうか」


 これからどう攻めるべきかを考えている時、唐突にエルドがこう口にした。


「そんな事出来るのか?」


「多分、いけると思う。このやり方でそもそも上に行けるのかどうすらもわからないけど、時間も無くなって来ているから、試す価値くらいはあるだろう」


「僕も賛成かな。勝率は少しでも上げるなら、時間はいっぱいある方がいい」


「私もそれでいいと思う」


 セイとフィルは、エルドの提案した作戦に乗るつもりでいる。


「俺達はどんな無茶でも乗っかるしかねぇ」


「こっちもだ」


「こちらも同じくです」


 キヨムラ、ムザサ、トレイアも反対はしなかった。


「なら、エルドの作戦で行こう。各リーダーはメンバーに説明してやってくれ。

 階段へは、これだけの人数で突っ込むか?」


「各ギルドから、ひとパーティ出す事になっている。

 そこで待機している者達がそうだ」


 俺の問い掛けに答えたのは刀導禅だった。

 もしかしたら、この結果を予測して刀導禅は他のギルドに声を掛けてたのかもしれないな。


「アスティ、ワタル! お前らがついてきてくれるのか!」


 待機しているメンバーの中で、一際目を引く赤髪のプレイヤー。

 一瞬見ただけでアスティだとわかった。


「なーんで俺がてめぇのサポートに回らなきゃいけねぇんだ……。マスターの指示だから従うけどよぉ」


 ん? 刀導禅の奴、もしかして今回のレコードを譲ってくれる気でいるんじゃないだろうか。

 だとしたら、かなりありがてぇが。


「まぁそう言うなって。頼りにしてるぜ、アスティ」


「へっ! しょうがねぇな!」


 調子のいい奴だ。まぁただ、そっちの方が俺としては助かる。

 俺はシンプルが大好物だからな。


「ワタルもよろしくな」


「はい。よろしくお願いします!」


 次に目に入ったのは、エイジとスミレの姿だ。

 他のパーティメンバーは知らない顔だが、『ピクティス』からはコイツらが選ばれたみたいだな。


「エイジ、スミレ。こないだ振りだな。調子はどうだ?」


「この日の為に、装備をきっちり仕上げて来ましたよ!」


 見ればエイジの纏う装備は、前回のものよりもかなりしっかりとしたものになっていた。


 ブリーズコートに機械神使の首飾りまで……。

 恐らくは武器も限界まで強化してきているのだろう。


「私もエイジや他のギルドメンバーと相談しながら、アレイダさんから装備をもらったりして整えて来ました」


「気合い入れて来てんな。よろしく頼むよ」


 スミレは見慣れぬアウター装備に身を包んでいる。

 これは後で、どこのどいつからドロップするのか聞いておきたい所だ。


 他は全く交流の無かった者達だったが、『Zephy;Lost(ゼフィロスト)』、『アルマゲスト』、『ストレイン』、『紫電』から一パーティずつ。


 俺達と合わせて十一のパーティが、階段下を攻める為の戦力となった。


 因みに今回の攻略には『ムヒョルト』も参戦しているが、ギルドから出すパーティはどうやらトレイア達のパーティだったらしい。


 先行で出してくれたんだな。

 後で『ムヒョルト』のマスターには礼を言っておかないと。


「しっかし、こんな大勢で攻略すんのは初めてだな」


「アトラフィ戦以来だな」


 全員でフロアの方へと向かう中、俺の呟きにエルドがこう答える。


「あぁ、そういえばな。けどあん時より人数多くねぇか?」


「大規模攻略の旨味を、皆アトラフィ戦で理解しただろうからな」


「なるほどな。確かにあの一戦で、そーとー俺達の装備品は強化された」


「俺達の知名度もな」


 ……まぁ、あれはちっと反省はしてる。


「さて。いよいよだな。皆準備はいいか?」


 待ったの声は掛からなかった。


「あの……。こういう時、全員を代表して誰かが一言を言うものなんじゃないでしょうか?」


 唐突にコットがこんな事を言い出す。


「じゃあ、誰が言う?」


 と聞くと……。


「いやお前しかいねぇだろどう考えても!」


 と誰かに言われてしまった。

 そういうのは柄じゃねぇんだけどな……。


「んじゃ言うぞ? 心して聞けよ」


 十一というパーティの全員が、俺の言葉を静かに待ってるってのは、なんかすげぇヘンな気分だ。


「死ぬな。以上」


「――そんだけ!?」


 他にも「えぇー!?」や、「普通すぎ!」、「短っ!」、果ては「センス無っ!」という言葉まで飛んできた。泣きそう。


「んっだよチクショウ! テイクツーだ!」


 再びこの場に静寂が訪れた。


「……俺達は今から、フロアで戦っている連中を残して先に進もうとしている。

 敵を多く残したまま上に行けるのかどうかはまだわからないが、上の階層では更に強い敵が待ち構えている事だろう。

 下に残るプレイヤーの為、今回の攻略に参戦してくれた全てのプレイヤーの為に、俺は……、お前達が銀水晶と呼ぶこの俺は、全力を尽くして戦う事を約束しよう。

 勝って、皆でこの激戦の報酬を頂くとしようぜ」


 さっきとは全く違い、盛大な拍手と賛辞の言葉が俺を包んだ。

 皆が武器を手に取り、やってやるぞと息を巻いている。


「行こう。まずは全員で階段上まで抜けるぞっ!」


 エルドが声を上げてフロアへと飛び出し、俺を含めたここに居る全員が、一斉にそれ続いていく。


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