『秘密基地』
更新サボっていてさーせんでした。
今日から毎日更新に戻れると思います。
が、今回の更新は短めです。
「エルドにはここへと来るように伝えておいた。待っていればその内来るだろう。
では、明日。共に戦える時を楽しみにしているよ、銀水晶」
エルドへとメッセージを打ち終えた刀導禅は、こう告げながら席を立ち、俺に向けて右手を差し出す。
「色々と助かるよ。刀導禅」
俺も席を立って右手を差し出し、刀導禅と握手を交わした。
握手なんて現実でもやった事ねぇのにな。
「……やぁ。俺に話があるとかなんとか」
ド派手な赤いロングコートに身を包んだプレイヤーが、俺の目の前にひょっこりとやって来ては、こんな事を口にした。エルドだ。
刀導禅の言った通り、十分も待たずしてエルドは現れた。
「まぁな。とりあえず、場所を移そうぜ。落ち着けるような所で話がしてぇ」
「わかったよ」
俺とエルドは、人気の無い場所を探す為、フラフラとバリトンの町を歩く事に。
「……それで、話って?」
町の裏路へと外れに外れた先に、建物の屋上へと俺達は辿り着いた。
バリトンの町に流れるプレイヤー達を上から眺めるのは、なかなか壮観である。
にも関わらず、ここに居るのは俺とエルドの二人だけ。気に入った。
ここを俺の『秘密基地』としよう。
……全然秘密じゃないけど。
ひとまず、エルドへと頼み事をするとしますかね。
「明日の攻略の事は、刀導禅から聞いてるか?」
「うん。ちょっとだけね。後でそれについての詳しい話をマスターと打ち合わせる所だよ」
「そうか。……一つ、俺に貸しを作っておかないか?」
「というと?」
「次の塔ダンジョンのレコード」
バリトンの町をボーッと眺めていた視線をエルドへと向ける。
コイツもコイツで察しが良いのか、微妙な顔をしている。
「譲れ、と?」
「そうは言わんよ。最後の最後でレコードを争うのは仕方の無い事。ゲームだからな。
ただ、少しだけ手伝ってくれると助かる。……ってこんな頼み方じゃあ、レコードくれって言ってんのと変わんねぇな。忘れてくれ」
「……珍しく弱気だな。ソウキ」
「弱気にもなるさ」
「何かあったのか?」
「大ありだよ。まぁそこら辺、気にしなくていい。
明日のこの時間には、俺達のパーティは塔ダンジョンへ潜る。
俺達にレコード奪られたくなけりゃあさっさと来いよ。エルド」
それだけ言い残して、俺は一足先に退散させてもらった。
結局、頼みたい事は頼めず仕舞いだったな。
「んま、レコードはなんとかもぎ取るしかねぇな」
『待たせたな。こっちの用事は済んだ。まだ宿か?』
俺は待たせていた椿へとメッセージを送った。
『もちろん。早く来なさいよ。』
椿は俺にパーティ申請を飛ばしてくれた。
その申請を承認して椿とパーティを組む事の出来た俺は、椿の待つ宿へと急いだ。
 




