異なる結果
……以前戦ったエクストリームボス、血塗られし人造神機・アトラフィ。
俺はそのアトラフィ戦の後からずっと、頭の片隅で少しだけ気になっていた事があった。
それはアトラフィのメイン武器である、腕部に取り付けられたあのブレードと、そのブレードによる攻撃についてだ。
単にアトラフィの攻撃力自体が高かっただけ、と言われればこれは諦めるしか無いのだが、ボスの攻撃を受け止めながら、こっちの攻撃を当てていくというアトラフィ戦で多用した戦法は、恐らく今後も必要な場面が多くなる筈。
故に今回、試して知っておかなければならない事がある。
それは、「対ボス戦時における、可動制御反応のダメージ処理」についてだ。
今現在、対峙しているユーティス。
コイツはボスとしての格はアトラフィには遠く及ばないだろうが、アトラフィと似た条件を持っている。
ボス、人型、機械系モンスター。これに加えて、武器持ちである事。
あの超強敵だったアトラフィと比較する事自体、ちょっとアレだけど、そんな似通った部分の多いユーティスとアトラフィの目に見えて異なる部分で俺の着目したのは、両ボスの武器の所持形式の違いだ。
アトラフィのブレードは腕に取り付けられていて一体化しており、攻撃する際の姿見こそは武器による攻撃には見える。
が、その実で攻撃そのものを一つの塊として捉え、それを言い表すとすれば、あの攻撃は「腕や拳による攻撃」に近いものがあるんじゃないか。こう俺は考えている。
つまり、あのブレードによる攻撃は、
「肉体の一部による攻撃という内部判定でありながら、武器属性を持った攻撃判定でもある」
という推測だ。
更に細かく言えば、肉体の一部を使った攻撃であるからこそ、アトラフィの攻撃にはアトラフィ自体の持つ攻撃力がそのまま乗る。って事だ。
もちろん、アトラフィと戦ったのはあの一回きりだから、推測の域を出る事はないが。
そんな、武器と肉体とが一つになっていたアトラフィとは違い、今回のようにユーティスの体と、ユーティスの持つ武器とが境界を持つ場合、つまりは別個となっている場合はどうなるのか。
そういった検証をしてみたかった訳だ。
本来であれば、攻撃力が限りなくアトラフィに近い存在でこれを検証をしなければあまり意味が無いが、それでも攻略という攻略が出回っていない以上、試す価値くらいはあるだろう。
「……そう焦んなよ。お互い、HPには余裕あんだ。ゆっくり遊ぼうぜ?」
まずはユーティスから繰り出される短刃剣の初撃をかわし、宝雷剣・バルサで反撃を加えた。
宝雷剣・バルサをメインに、ユーティスの体へと攻撃を浴びせる度に、バチバチと音を立てながらユーティスの体には蒼電が走る。
さっきとは打って変わり、宝雷剣・バルサの攻撃ヒット時には、ユーティスのHPがクイッと減る。
「なるほど?脱ぎ捨てた服に、雷撃の耐性でも付与されていたか?」
そうだとしたら、セイを服ユーティスに任せて良かったな。
俺が服ユーティスとやり合っていたら、攻撃属性の相性的に、俺もセイも戦闘が長引くだけだからな。
まだ油断は出来ないが、ユーティスのHPがグリーンの間は戦闘の余裕が出来た訳だ。
早速、ユーティスの短刃剣と打ち合ってみるとしようじゃないか。
「……?」
二度試してみて、俺は少し考える為に一度、ユーティスから距離を取った。
差異があるかもしれないと思い、一応チュートリアルリッパーと、宝雷剣・バルサの二回で試してみた。
宝雷剣・バルサをユーティスの短刃剣と打ち合わせてみた所、特にダメージを受ける事なく鍔迫り合いとなった。
ユーティスへとダメージを与える事も無い、本当にただの鍔迫り合いだ。
ところが、今度はチュートリアルリッパーとで打ち合ってみると、俺にダメージが入り、HPが一割ほど減ってしまった。
雷撃属性の付与された宝雷剣・バルサと、強化した事によって、宝雷剣・バルサよりも攻撃力が倍はあるチュートリアルリッパー。
属性の相性も可動制御反応の判定に反映されていて、それによってダメージの発生なんかの結果が異なる程度の予想はしていた。
……が、受けたダメージの量から考えるに、この結果には少し納得がいかない。
「武器のレアリティも関係している……?」
チュートリアルリッパーは名前からもあるように、初期装備。レアリティは無い。
これに対して、宝雷剣・バルサは紫レアだ。
武器性能を無しとして考えた場合、チュートリアルリッパーと宝雷剣・バルサとでは武器としての格は三段階も離れている事になる。
「……わっかんねぇな」
疑問点の解明や、何かヒントが掴めればとでも思ったが、逆に更なる謎が残る結果となってしまった。
ひとまず、全力でユーティスと殴り合い、特に苦戦する事無くユーティスのHPを、十分そこそこでゼロにする事が出来た。
ユーティスはHPがレッドゾーンになっても、特に何か変わったアクションを起こす事無く、弱点である雷撃属性を持つ俺の宝雷剣・バルサの前に、呆気ない程簡単にHPを切らし、その場にバラバラと体を構成しているパーツを溢しながら、その身を地に落としていった。
「よっしゃ。後はピエロだけだな」
俺は未だ服ユーティスと戦っているセイへと加勢するため、武器を納める事無くセイの元へと駆けていく。
……そう言えば、ブルーウルフがいつの間にか湧かなくなってたな。




