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幻術機・ユーティス

 

 ローディングから返された俺の視界に映っているのは、黄色い衣装を纏ったピエロ……というよりは、サーカス衣装を着た何者か。

 としか言い様が無かった。


「あれがボスか?」


 ……視界に居るボスらしき奴の動きは、何だかカクついてるな。

 そんなカクカクモンスターの名は、幻術機・ユーティス。ボスだった。


 名前を見る限りでは機械系のボスモンスターらしいな。どうりで動きがカクついてる訳だ。


 ユーティスはまだ俺達を発覚していないようで、フィールドをただふらふらと歩いているだけだ。


「なんか、弱そう」


「いやいや。見た目だけで判断はしちゃあいけねぇぜセイ」


 確かにセイの言う通り、今まで戦ってきたボスと比べると、一見して弱そうには見えるが……。


「とりあえず、行く?」


「そうだな。行こうか」


 俺達はゆっくりとユーティスへと近付いて行く。


「っ!? なんだ?」


 ユーティスの歩いた場所から、いきなり草木が生え繁り出した。


「……気付いた、のかな」


「わからねぇ。少し様子を見てみっか」


 セイは頷きを返す。俺達はちょこっとだけ後ずさって、ユーティスの様子を伺う事にしたのだが……。


「……これ放っておくとヤバイ事になるかもしれねぇな。行くぞ、セイ!」


 ユーティスが通り、草木が生えた場所には、いつぞや振りの狼が出現した。


 仮に草木の領域が広がれば広がっただけ、狼を際限なく生み出せるとしたら、こうしてユーティスの様子を伺っていればいるだけ、俺達が不利になっていく。


 流石に数で押されれば、俺とセイの二人だけでは簡単にやられちまうだろう。


「うんっ……!」


 セイは即座に剣を抜き、ボスの元へと駆けて行った。俺もそれに続く。


「雑魚は頼む!」


「わかった!」


 俺達の接近に気付いた狼が、こっちに向かって突っ込んで来る。その数は五匹にまで増えていた。


「どけ……!」


 かわしきれない一体の狼へと、宝雷剣・バルサを抜いて刃を差し向け、斬撃を浴びせる。

 チュートリアルの時と性能は変わらずなのか、狼はたった二度斬りつけただけで倒す事が出来た。


 俺は狼が消える瞬間に目をくれる事無く、チュートリアルリッパーを左手に抜き、ユーティスの元へと再度走り出す。


「……ん?」


 俺を発覚したユーティスは、掌を力無く俺の方へと伸ばし、拳を握るような仕草を取る。


 その瞬間、無数の小さな炎の球が、まるでユーティスを守るバリアとでも言わんばかりに、ユーティスの体の周囲に出現した。


「……間違い無く撃ってくるな。あれは」


 こう直感した俺は足を止めた。

 そうしてユーティスの周囲を漂うそれを注視しながら待ち構えていると、案の定ユーティスは炎の球を一斉に放った。


 まだユーティスの元へと辿り着くには少し距離があり、炎の球もユーティスを中心にしてバラ撒かれるように放ってくれたおかげで、被弾はしなかったものの、あれを間近でやられると結構痛いかもな。


 ……そうこうしている内に、またユーティスによって緑に変えられた地面から狼が湧く。

 俺は急いで走り出し、ユーティスへと接近するついでに、現れた狼を処理しに行く。


「ボスに用があんだ! 邪魔すんな!」


「……」


 ユーティスは何か発する事も無く、音も立てずに、更に近付いていく俺へと右手の指先を向ける。


「げっ! んな攻撃もあんのか! クッソ速ぇっ!」


 今度ユーティスの腰辺りと真上に、氷柱が現れたと思ったら、その氷柱は俺へと目掛けてすっと飛んで来た。


「突っ込めば避けられる……か……!?」


 ユーティスの腰元にから飛んできた氷柱はスライディングでくぐり抜け、真上から斜めに降って来た方の氷柱は、素直に真っ直ぐ向かって来てくれたお陰で、両方ともかわす事が出来た。


 さっきの炎の球もそうだが、ユーティスの飛ばしてくる攻撃は、その速度が結構なものとなっている。


 距離が開いていれば、ユーティスの攻撃に当たる事は無さそうだが、雑魚モンスターが湧く為の、時間を稼ぐ事を目的とされた攻撃だとしたら、この上無く計算されためんどくせぇ攻撃だ。


「ワギ、大丈夫?」


 狼を全て処理したセイが、俺に追い付いてきた。


「何とかな。だが近付くのも一苦労だぜ」


「別方向から攻めるしかないね」


「だな、奴の攻撃は結構速さがある。近付けば近付く程、注意しないとだぜ」


「わかった。行こう、ワギ」


「あいよ」


 俺とセイは、二手に別れるようにして同時に駆け出した。


「雑魚と遊んでる暇はねぇ!」


 宝雷剣・バルサとチュートリアルリッパーを同時に振り当て、湧いてきた狼をソッコーで潰してやる。


 ユーティスがセイの方を向き、氷柱の魔法を放とうとしている隙に、俺は全力でユーティスの元へと近付き、宝雷剣・バルサをメインに、叩き込めるだけの攻撃をユーティスの胴体へと叩き込んでやる。


 機械系モンスターの弱点とする、雷撃属性のダメージをありったけ叩き込んだというのに、ユーティスのHPは八割も残っている。


 だが、これでやっとユーティスへと張り付く事と、ダメージを入れる事が出来たな。


「よう。味な真似をしてくれたじゃねぇか、ユーティス」


 ユーティスは、今のでガッツリと敵視(ヘイト)を稼いだ俺の方へと体を向いた。


 俺とセイと二人だけでの、対ギミックボス戦が始まった。……勝てんのか?


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