セイと二人―2
「……なるほど、ここまではわかった」
俺は一通り、ユニーク職業についての自分の記憶している限りをセイへと教えてやった。
たった七人しかユニーク職には就けない事。
ユニーク職にしか装備出来ないという、専用装備がある事。
そして、転職をする為の条件がかなり厳しい事。
コットのような軽めの条件もあったりするが、これは単に、治癒士見習いの持つ戦闘力が低いせいもあるだろう。
対して俺やエルドのような、単独でもそこそこ以上に戦闘の行える職業ほど、上級職へと上がる条件が重たいと予測している。
という事も付け加えておいた。
「オッケー。そんじゃ次はさっき使ってた武器についてだ」
次に、俺は結晶士についてをセイへと教える事に。
武器を錬成する為には、錬成石が必要になる事と、錬成する度に、ショートカットをいちいち操作しなければならない事。
「……なるほど? じゃあ、あの武器を使う度に錬成石ってアイテムを消費してる訳ね」
「そういう事だ」
「でも、さっき手に入れた武器があれば」
セイは俺の宝雷剣・バルサを指差している。
「そうだな、しばらくは錬成石を使わずに戦えるってこった」
実際、既にバルサザーク戦の後から40個近くも錬成石が増えている。
普通にチュートリアルリッパーを振るっても錬成石は手に入れられるが、ここまで早くは集められないだろう。
宝雷剣・バルサの力を痛感するばかりだぜ。
「なんか、ワギから聞く感じでは、ユニーク職業にそこまでの魅力を感じないのは僕だけ?」
「んー……。それも人によりけりだろ。
外から見える分でのユニーク職業ってのは、火力が高かったり得手不得手がはっきりしていたりと、案外と面白そうに見えたりはするだろう。
だけど、じゃあ実際に就いてみるってなると、結構キツい面が多々あるからな」
回復特化のコットや、支援職寄りの椿が敵との戦闘で不利となるのは仕方ないとして、俺やエルドみたいなのは職業による弱点が結構明確だ。
瞬間的な高火力や、敵の弱点を的確に突けるという点では、突破力として俺とエルドには確かな強みがある。
だが長期戦や連戦、対人戦を想定した場合、その度合いにもよるが、職業の弱みは顕著に現れ易い。
まぁ、そういったバランスの足し引きってのは大事だけどな。
「せっかく手に入れたレア装備が使えないっていうのも、減点ポイント」
「うっ。やめろ気にしている事を……」
「仕方ない。本当の事」
こうして人から言われちまうと、やっぱ悲しい気持ちになるぜ。
「まぁなんだ。コイツみたいな武器もあるってわかったし、多少は前向きにもなれるってモンよ」
宝雷剣・バルサの柄をちょんちょんと突つきながら、こう俺はセイへと言った。
「そう?」
いまいちセイは納得してないみたいだけど。
「そうだ。……ん?」
ふと、脇の小道に続く区画に目が行った。
……何かがおかしい。
「……セイ。強敵の匂いがしやがるぜ」
俺が異変を感じた区画に、薄っすらと見える[転移の渦]。その光の周囲。
そこだけが不自然に、すっごい不自然に緑が繁っていた。
これはあれだな。ギミックボスだな。
「匂いはしないけど、強敵。勝てるかな?」
「二人だけでも、俺とお前ならやれんだろ。根拠は無ぇけど」
「……じゃあ、行こう」
俺とセイは、不自然領域の中にある[転移の渦]のすぐ側までやって来た。
「ここだけ、変」
「この先に居るのがボスだった場合、確実に初めて出会う敵だと思う。
……事前情報は一切無いが、準備はいいか?」
「うん。おっけー」
「うし。じゃあ入るぜ」
パーティリーダーである俺は[転移の渦]へとアクセスし、視界は少しのローディング画面へ。




