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「Sei」誕生


『in world』には、選手の年齢によって区分されている、二つのリーグが存在していた。


 一つはO(オーバー)27リーグ。

 各クラブに所属する二十七歳以上の選手は、全員これに出場する。


『in world』のプロリーグが創設されて間もなくよりの、名だたるプロ選手が数多く存在している。

 リーグ全体の持つ雰囲気としては、ゲームというよりスポーツに近い。


 そしてもう一つはU(アンダー)23リーグ。

 二十四歳に満たない選手が出場可能となっているリーグだ。


 O(オーバー)27リーグとU(アンダー)23リーグの間にある、三年の余白。


 ここでU(アンダー)23リーグの出場資格を失った選手、つまりは二十四歳となった選手は、O(オーバー)27リーグへと上がる為の大幅な肉体強化に励むのだ。


 選手ひとりひとりの能力を伸ばすのに相性の良いトレーナーが付く事になり、選手ひとりひとりに合わせた訓練メニューを行うようになる。


 対戦相手の得意とする戦術。

 それに合わせた対策を組み上げるなど、身体面だけでなく思考力や精神力なども高めていく。


 トレーナーを交え、専門的且つ多角的な訓練を取り行い、ゲームからスポーツへと昇華されたO(オーバー)27リーグと、プロ選手になりたての、全ての訓練をチームメイト同士のみで行わなければならないU(アンダー)23リーグとでは、試合の運びや空気感が全く異なるのは当然の事だろう。


 またU(アンダー)23リーグで成績の芳しく無かった選手が、O(オーバー)27リーグで好成績を上げた例も少なくない。


 より競技性を増し、選手の成長をも楽しむ事の出来るO(オーバー)27リーグは、全盛期にはU(アンダー)23リーグよりも圧倒的な人気を誇っていた。


 ……そう。二人の″天才″がU(アンダー)23リーグの選手として現れるまでは。


 二人……、正確には三人のプレイヤーの登場によって、O(オーバー)27リーグの人気と、U(アンダー)23リーグの人気は逆転した。


 その中の二人は、今尚『in world』世代のゲーマーにとっては、永遠のレジェンドとして語り継がれるU(アンダー)23リーグの絶対王者、柏木惣とディラン・マルティネス。


 この二人を目当てに、クラブチーム『リオスト』のファンだったという者も少なくない。


 そしてもう一人、『in world』のU(アンダー)23リーグを語る上で忘れてはいけないあるプレイヤーが、柏木とディランより一年遅れてU(アンダー)23リーグに現れた。


 柏木とディランの二人の、『in world』時代の唯一無二のライバルであり、公式戦で″反則″という形ではあるものの、競り合いの果てに柏木に敗北を負わせる事の出来た選手、″亜久里誠司(あぐりせいじ)″。


 ――彼がプロに上がるのが一年早かったら、どれだけU(アンダー)23のリーグ争いは面白くなっていただろうか――。


『in world』関係者が、口を揃えてこう評価した亜久里誠司というプレイヤーが、プロを引退した数年後、舞台を『カラミティグランド』へと変え、柏木とディランと出会う事になるのは、偶然なのか必然なのか、神の悪戯によるものなのか。


 ――そんな事など、誰にもわからない。


「――『カラミティグランド』、起動」


「畏まりました。『カラミティグランド』、起動します」


 正式サービスへとアップデートしてから数日後、準備期間(チュートリアル)勢から少し遅れて『カラミティグランド』の世界に誕生したキャラクターID「Sei」。


 Seiがチュートリアルを終わらせたその足で、プルトガリオ渓谷へと単身で向かって行ったのは、テュリオスがログインする、ほんの数分前の事だった。


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